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王子転生! ~王子は王子でも琉球第三王子!~  作者: 高見結
~王子は王子でも琉球第三王子~
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第46話 告白

鬱展開注意です。

 琉球国王尚元の急逝。大島親征の後の不例により薄々予見していた者もいたが、余りに早すぎる死であった。

 後嗣は中城(なかぐすく)王子(王太子)の阿応理屋恵(あおりやえ)が立太子していた。

 弱冠十三の若さであり王弟達を担ぐ動きも懸念されていたが、首里で政務を司る三司官を始めとする高官らの推挙により阿応理屋恵改め、尚永(しょうえい)王の登極が早々に定まり、首里城では先王の葬儀と即位の準備が粛々と進められていた。



 首里城二階御殿、側室梅嶺(ばいれい)(真三郎実母)の間

「母上様!父上の葬儀が無事に終わられましたら、是非我が采地の金武にお下りくださいませ。

 お城の御殿程とは行きませぬが新しく母上様の御殿を建てて御迎えいたしとうございまする」

 首里天加那志(すいてんがなし)の急逝により首里城中が喧騒の渦の最中、ひっそりとしている側室の間に未亡人となる母を迎えに来ていた。

(いやに殺風景だなぁ、まぁ無理もないか。国母となられるお妃様以外は城を出て、新しく王妃様選びが始まるもんなぁ)

 真三郎が口調とは別事を考えているとピシャリとした声がかかる。

「朝公殿。妾は金武なぞには下りません」


「えっ!し、しかし、確かに金武は田舎ですが、あっ、叔父上の所ですか?確かに祖父の菩提(ぼだいじ)………」

 虚をつかれた真三郎があわてふためく。

「妾は出家して天界(てんかい)寺にて尼になります。そなたの世話になぞなりたくもありません」

 まだまだ三十代前半、当時であれは年増かもしれないが王宮の奥に国王の妻の一人として生活していた梅嶺。

 南国琉球の照りつける太陽(てぁだ)の光によるシミや小シワの一つもなく、十二の子持ちに見えない白晢の美貌は未だ絶世の美少女と讃えられた面影が強く、真三郎からみてもまたまだイケる美魔女である。

「は、母上様?」


「ああっ!もーっ母上等と呼ぶでない!」

  手に持つ大和渡りの銀泥の扇子を真三郎目掛けて投げつけるが、開いた扇子は真っ直ぐには飛ばず畳一つ離れた場所に落ちる。

 狙いが外れたことで、梅嶺はますますワジワジ(いらいら)して声を荒げる。


「はぁぁー!御主(うしゅ)が亡くなられて城より出れるとなればやっと清々する。

 そなたが生まれた時より、そう、そうじゃ!乳母の乳を嫌らしい目付きで嬉々として吸うところや、子供らしゅうない手つきがゾットするほどおぞましゅうて、おぞましゅうて、妾の子かと嫌で嫌でたまらなかったわっ!!」


(ネ、ネグレクト?いや、な、なんか心当りが………まだ、生まれた、転生したばかりの時にやらかした意識があるような……………やっべぇ!やっちまったか俺!どうする?どうなる?俺!)

 胸に手を当てた真三郎は心当りや、見に覚えがありすぎて腋や背中から冷や汗がとまらない。


「御主も御主で妃が懐妊中にしか御渡りにならず、妃や、聞得大君からはお前は霊威(せじ)がない、霊威が低いと責められるわ、神女(ノロ)の修業と称して水を掛けられるわ、扇で打たれるわ、御内原(おうちばら)は見た目は華やかでもぅ生き地獄であったわっ!」


 天目台に乗せられて喫された茶碗が地団駄の衝撃でカタリとこぼれ落ちる。


「は、母上様?」


 母の激昂に扇子を拾ったり茶托を整えることすらできずに大和から運ばれた畳に茶の池が出来、ゆっくりと染み込んでいくのを見つめるしかない。


「そもそも父上(新城安基)が悪いのじゃ!御主を玉座につけたのは父なのにぃー訳もわからぬ霊威(セジ)が高いというだけのどこぞの馬の骨を聞得大君(あのババァ)が拾ってきて、それをしかも!妃なんぞにしおってからにぃ!妾は第二夫人?はっ!」

  投げつける物もなくなったのか、懐から袱紗(ふくさ)をとり出す。


「馬鹿にするのもキィッー!」

 ビリビリビリ!

 可愛らしいはずの犬歯を当てて(はく)を引き裂く耳障りな音が、室内に響く。


「嫌みったらしい大勢頭部(おおせどべ)(女官長)の意地悪に何度哭かされたことか、それもこれもそなたが一つ年下にもかかわらず阿応理屋恵(あおりやえ)と同じくらいに早く歩き出したり、達者に話しだしたからです!

 金武で麒麟児等と讃えられていい気になりおって、えー!さぞ満足だったことでしょう?そのせいでどれだけ妾が妃に、大勢頭部にいびられたことか?」


(ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!病んでる?い、医者なのか?母上様、ご乱心とでも?いや、落ち着け真三郎、いや母上を落ち着かせないと)

 母のハブ以上の毒吐きっぷりにどうしたらいいのか真三郎の手も足も震え出す。

「ふん。どうせそなたも王気(おうき)がない等と難癖つけられるでしょうが、妾ももう二度と会いたくはありません」


「母上様!それ……」


「えぇい!母等と呼ぶでないとゆーたろうに!妾は喪が明けしだい天界寺に参ります。今後も一切近寄らぬように」


 喪中故、わずかな赤をも使っていない質素にすらみえる黒を基調とした地味目な紅型(びんがた)の裾を華麗に翻して立ち上がった梅嶺は、手を伸ばす真三郎に一瞥すら与えず奥の間に消え去ったのだった。


 


 金武王子 首里屋敷


当時、琉球の豪族の屋敷では寺社等に使われる明からの輸入品ではない、琉球国産の特徴的な赤瓦が既に普及しだしており、真三郎、いや祖父新城安基(しんじょうあんき)が建てた屋敷も例外ではなかった。

重い赤瓦屋根を支える柱は多く、また大風による吹込や、夏の日射しを遮る為にも半屋外の廊下、雨端(あまはじ)が発達していた。

首里城から戻った真三郎は自己嫌悪とやるせない思いからか返事がないただの屍のように雨端にだらーっと寝転がっていた。

「で、真玉(まだん)橋の修復をお請けになったと」

金武から駆け付けた樽金が傍らに正座し、きつい口調で真三郎に問いかける。


「ああ」

 身動きもしないまま気の抜けた生返事の真三郎。

「真三郎様?」


「ああ」


「何か有りました?」


「ああ」


「我らの給金を倍にしてもよろしいですか?」

 怪訝な樽金が真牛と顔を見合わせた後、真三郎の反応を試してみる。

「ああ」


「ゴホン!あー三良ではないが、ここは一発気分転換に、辻の廓にでも御一緒に」

 真牛が珍しく樽金に便乗する。

「ああ」


「じ、重症だな?御主が亡くなられたのがやはり」


「しかしだな、真三郎様にはしっかりと気を取り戻していただかないと。いつまでもこのままでは」


「うむ、阿応理屋恵(あおりやえ)王子、いや、王もまだまだお若い、王弟として殿もお支えしなければならぬが。」


「そ、そうだ!真三郎様!保栄茂(びん)親雲上(ぺーちん)保毛(よしあつ)様が是非組み手でもと参っております!」

 真牛が耳元にフッと息を吹き付けながら恐ろしいことをそっと呟く。


「な、な、な、なっ!る、留守だと言え!はっ!」

 背筋を舐め、いや冷水でも掛けられたようにビックッとした真三郎が跳び跳ね周囲を怪訝な表情で見渡す。


「いやぁ、ほんと良かった。お気がつかれましたか。真三郎様」


「な、なんか今、とんでもない悪寒が、ほら、腕見てめっちゃ鳥肌(さぶいぼ)が!」

 腕をめくった真三郎の二の腕には羽を無理やり毟しり捕られた鳥のようにイボが無数に立っている。


「大丈夫ですか?真三郎様。先王陛下がお亡くなりにられまして気を落とされたからでしょう。

気が沈むのは致し方ありませんが、仮葬儀も終えましたし、次は中城王子(王太子)殿下の即位式に、明への冊封と国を上げての準備が必要な大変な時なのですよ」


母との、城内での出来事を話せなかった為、只、だらしなく父の死により(うつ)の症状をだして沈んでいたように見える真三郎に説教を始める樽金。

「そ、れ、な、の、にぃ、真玉橋の修復の作事を新たにお承けになられたとか」


「いや、ちょっ、まて、樽金。あの時は父上も健在で、まさかあのあと、二日後に急逝なさるとは」

 徐々に気を取り戻した真三郎が空気を読んだ言い訳を始める。

「そ、それは致し方ありませんが………」

 王の死の衝撃で沈んでいたと思っていた樽金も思わずいい淀む。


「だろっ?それに兄う、いや正式な即位は喪が明けた来年になるみたいだが、御主の為にも即位式までは色々あったけど俺だって首里に滞在してお支えしたいし」


「仕方ありませんね。とりあえず橋の修復については既に正式に書面による辞令を承けておれるようですし、前任の上間親方か橋の架かる古波蔵(こはぐら)親雲上の安昔(あんしゅく)様と具体的なことは相談するとして、金武の政務が溜まっておりますので決済を、こちらは私から財務関係になります」

ドサッと紙の束が座敷の文台に積み上がる。


「ああ、こちらは三良から、兄が持ち込んだ種子の多くが順調に育っております。成育が遅いのは蒔く時期が異なるかもしれませんので大風(うふかじ)の後で少し蒔くとのことです。報告書には図南(となん)の描いた成育や花の図も付いております」

紙束が納められた盆が二つ、そおっーと置かれる。


「山方は真牛が真三郎様についておりますので、安李(あんり)様に兼務をお願いしております」


「まぁ、藍と炭、後は………石灰ぐらいか。山に入れる冬、新年に即位式が終われば金武に戻れるだろう」


「しかし、橋の修復の手伝い普請となると新たに材木の切り出し等が必要になるかも知れませんが……」


「まぁ、今、切り出しても直ぐは使えまい。使えるとしたら既に通売普法(つうばいふおう)用に切り出してる材木だな」


「いや、そういえば真玉橋は石橋ではないのか?」

 真三郎の采地金武とは首里から見て逆方向で土地勘はない。

「まぁ、現場を見てからだな。ふぅぅこんなに決済案件があるのか?留守居はかんジィと安李に委せて安心してたんだがなぁ」


「ささっ!どうやら仕事をしている方が気を取り戻される様ですね。さぁブツブツ言わずに働いてください。」

樽金は首里屋敷在番の文子に指示して墨を擦らせる。

爽やかな墨の香りが心地よいが、大量に擦られる墨の量に溜まってる仕事量を思い浮かべてガッカリする真三郎であった。



史実から離す為に無理矢理過ぎる展開かな?

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