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王子転生! ~王子は王子でも琉球第三王子!~  作者: 高見結
~王子は王子でも琉球第三王子~
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第17話 大綱引き

ちょっとエロいかな?

 明くる十四日、一足も二足も早い琉球の梅雨明けを確定させる強く乾いた南南西の風、夏至南風(かーちーぺー)が吹く。格好の祭日(まつりび)よりであった。


「さぁ、皆の衆!昨日は、なんだかんだで若干赤字とあいなったが、売り上げ自体はよかった」

「今日は、昨日の五割増しの蕎麦三百食分の粉を仕込んだので、心して頑張るよーに!」


「「「はっ!」」」



 ◆


 今日のお品書きは、昨日のペペロンチーノもどき蕎麦(南蛮芥子そば)に、数量限定ではあるが鴨ならぬ山猪南蛮もどき蕎麦(ソーキそば)の超豪華二本立てである。

 首里屋敷から玉城と金城に(かまい)を急ぎあるだけ運ばせたのだ。


「おい、そこのにーにー!その南蛮芥子そばをひとつ!」

「俺は、汁そば、肉付きでな?」

「ソーキそばですね?」

「南蛮芥子そばを四つ!一つは肉付きで!急いでくれよ!」

「ウホッ!」


 接客担当には愛想の良い三良、経理と外商は当然樽金として、女性客目当てのパフォーマンスとしてねじり鉢巻で、力任せに麺を押し出す作業のを魅せる真牛。暑いだろうとちょっくら騙らかして上着を脱がせてみたら、別の客層に受け出している。


「どうだ?樽金。そばの売れ行きは?」


「はい、このままいけば昼前には売り切れです。

 それと幾つかの屋台の主人から作り方や、製麺機を売って欲しいと」


「製麺機もか?やったな!図南(となん)!」

 真三郎がすそを朝から握って離さない図南(となん)の頭をグワシグワシ撫でまくると、意味は解らなくても意は通じたのかニコッと微笑む。

 図南の胸元には樽金が回収したらしい黒い石が、林明さん手縫いの巾着(きんちゃく)に入れられてぶら下がっている。もう片手はそちらを常に触っている。

(なんだ?曰く付きかな?)


「製麺機は、さらに工房(ラボ)で改良してから売り出そう。

 真牛は使った感じで不具合とか改良点を考えてくれ!三良と玉城は、蕎麦に含まれるなんかの成分が、えーとムチムチンと身体に良いとかなんとか言って宣伝してくれっ!えーとそれから、そう、金城は急ぎ碗を洗ってくれ!汁用が足りなくなる。

 俺は香味油を仕上げる。さぁ!もー少しだ。皆の衆、頑張ってくれ!」


「「はっ!」」

「「おー!」」


 樽金の予想通り、昼前には完売した屋台に、本日完売の札が下げられることにになった。

 屋台による蕎麦の実践販売大成功であった。

 ◆


 ぶぅぅううぉぉおーーん!ぶぅぅううぉぉおーーん!

 派手な祭衣装にうっすら白塗りの化粧を施した少年が二人。馬鹿でかい法螺貝(ぶら)を吹いて、いよいよクライマックス!久米大綱引きの開始の合図である。


 ー今の那覇大綱引きなら全長200メール、国道をわざわざ封鎖して行われるこの綱引きの綱はギネス記録に載るほどの規模である。

 引き手だけで一万から一万五千人。見物客は二十八万をかぞえる。

 因みにこの大綱引きの為だけに全国で唯一国道の中央分離帯が、脱着式なのだそうだ!ー


 と、ともかく、この時代はまだ、久米唐営(くにんだからえい)のうち、東と西、若狭(わかさ)泉崎(いずみさき)の四村の町衆による商売繁盛を祈願する比較的小規模な祭であった。


 四村、四つの旗頭を先導に引き手が集まる。


 ぐわーぁん!ぐわーぁん!

 ケンケンケンケンケーン!ケンケンケンケンケーン!

 パン!パン!!パン!

 銅鑼(かに)鉦子(しょうぐ)が、会場であるシキバの雰囲気をもりあげ、火砲(ひゃー)の放つ、爆音に煙、硝煙の匂いが辺りに漂い、祭の熱狂がいやがおうにも血涌肉踊らせる。



 東の綱、男綱(をぅーんな)。西の綱、女綱(みーんな)それぞれ五十メートル、重さは今で言う十数屯はあろう稲藁で()われた大綱をそれぞれ二百人ばかりで担ぎ上げ、徐々に東西から近付き二本の綱が中心で衝突しそうになる。


「なぁ?かんジィ、二本の綱でどうやって引き合うんだ?」

 真三郎のイメージする一列で引き合う運動会の綱引きとの違いに疑問が浮かぶ。


「朝公様、田舎の豊作祈願の綱引きとは比較になりませぬぞ!」

 生まれも育ちも久米の羽友が答を引き取る。

「見ていてくだされ、ほれ、股引半套(またひきはんてん)を着た役目が棒で陰陽和合(いんようわごう)、男綱と、女綱を繋ぎますぞぉ!」

 おっとり文官タイプのはずの羽友が興奮して、目が血走りはじめた。

「真三郎様!、どっちが男役で、どっちが女役かわかりますぅぐふぇ!」


「三良!いらんこと!」

 左右の指で、両端が輪になった綱をつなぐ卑猥なポーズをとる三良の頭を樽金が懐の算盤でガシャリと叩く。

「ぐっ!かっ、角は、角は死ねるぞ!樽金!」

 涙目で後頭頭を押さえ地べたをぐるぐる転がる三良を皆で無視してると、横向きに輪になり、輪の部分が一際大きい西の女綱の先端が数十本の棒に支えられ、まるで獲物を威嚇するハブの様に頭をあげる。


 次に縦に比較的小さな輪の部分がある男綱が、じっくりと慣らす様に、挿…………もとい、進入していく!

 何度かきつい入口を勢いをつけるように小刻みに出し入れされる。そして生唾を飲み込む様な一瞬の静寂の幕を打ち破り


 ぶぅぅううぉぉおーーん!

 ケンケンケンケンケーン!

 ぐわーぁん!ぐわーぁん!

 パン!パン!パン!

  一斉に銅鑼や太鼓が鳴らされ、指笛の囃し立てる音が南国の趣を添える。


「「「頭貫棒(かぬちぼう)!」」」


 今度は琉球松で出来た太さ三十センチ、長さ一メートルはある黒光りする丸太が、屈強な担ぎ手に支えられて、男綱と女綱をしっかりと結びつけ、二つの大縄が、漸く一本の大縄になった。


「いよいよだな?」


「ひょ、ひょ、まだまだですぞ、早いと嫌われますぞぉ」


「ぶぶっー」

(あかん、かんジィまで変なスイッチ入ってやがる。)

 大綱の搬入、接合と準備におよそ一刻、夏至の頃とはいえ、辺りは幾分薄暗くなり、数十本の竹が纏められたの特大の篝火(かがりび)に火がはいる。


「真三郎様!あれを!」

 女綱の上に渡された板舞台に白塗り、京劇風の武者姿の若者と二人の従者役が乗っている。

 どん、どん、どん、どん!どん!

「おっ!今年の西は項籍じゃな?」

「おーそうじゃ項羽じゃ、楚の覇王じゃな!」

 中華の影響の強いこの時分、顔の縁取や衣装で役名が区分される。

「おおっ!では、東は漢の高祖か、韓信か!」

「韓信じゃ!韓信じゃ!」

 東と西の仕度(したく)と呼ばれる役者主人公が大観衆の見守るなか、口上や、身ぶり手振りで、東西間の緊張を高めてゆく。



 すっかり、日も暮れ、篝火の照らす明かりが、鬼気迫る祭に迫力を与え、鉦子や銅鑼の音に混じって弾ける竹の火花が辺りを赤く照らす。


 すぅーと板舞台の仕度が姿を消すと、男綱、女綱それぞれから左右に伸びる手綱を取ろうとわらわらと辺りから引き手達が湧くように集まり出す。


 真三郎達も幼い図南をかんジィに任せ、羽友の所属先でもある西、女綱方の手綱を握る。



 けんけんけんけんけんけんけん………… きぃーん!

 鉦子(しょうぐ)太鼓がこれまでとは趣の異なる音をならし、最後に調子をとるように、一際高く澄んだ金属音を鳴らした瞬間!


「「はぁーいや!!!」」

一斉の掛け声

 東西の大綱から伸びる各手綱から一斉に左右に曳かれ、力のベクトルは、中心の頭貫棒(かぬちぼう)に収束し、ピキッと悲鳴を出させたものの、結果、引き締まった大縄に係る力は均衡し、東西どちらにも、寸土たりとも揺るがなかった。


「「はぁーーいやぁ!」」

 どん!どん!どん!


「ま、真三郎様!脇をしめて、もっと腰に力を!」

「「はぁーーいやぁ!」」

 ぶぅぅううぉぉおーーん!パン!パン!

「て、手がぁ」

「もう少し、気合いですぞぉ!」

「くぅー、fight!いっぱぁつ!」


「 「「はぁぁーーーいやぁぁぁ!!!」」」

 カン!カン!カン!カン!カン!カン!

西()ぃーし♪」


 一進一退の攻防は、四半刻も続き、死闘を繰り広げた今年度は真三郎達の属した西方が勝利したのだった。


綱引きの実際の画像は見れませんでした。西の勝ちに合わせましたが、

今は沖縄の歴史人物らしいのですが、当時だと町衆、中国系かと項羽と韓信をもってきました。


ちゅ○ちゅ○ランドの空想で許してください。

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