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王子転生! ~王子は王子でも琉球第三王子!~  作者: 高見結
~王子は大和へ左遷王子~
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第104話 敦盛

 そして夜は更けていき、細川京兆家 織田内府家、政略結婚とはいえ両家を固く結びつける華燭の典はいよいよ佳境を迎えようとしていた。


(お、織田信長 果たしてどんな奴、いやお方で、あるか。オラ、ワクワクすっぞ! んー 案1、やはり織田つながりなら氷上を泣きながら滑るお殿様みたいな?

やっぱ今時の定番は女体化だよねっ!案2は………〇奈とか軍服アーチャー系って可能性もあるのじゃし。

  いやいや、ここは思い切って旬な三郎君とか、シェフが付いているとかのパターンもありっちゃあり?)

 

  いよいよ天下人、超ブラック企業かもしれないか、この人にお近づきになるのが逆行転生攻略の秘訣ばかりに期待と不安が高まる真三郎の口許がにやける。

(ややっ、まてよ、確かもう信長は不惑、四十は越えてるはず……やっぱ女体化はちょっとキツイし、見たくはないなぁ)

  ブルブルっと首を振っては次々と妄想した信長像を全て振り払う。


  真三郎がそんな期待?を込めながら宴席の杯を重ね楽しんでいると大広間のあちこちに追加の燭台が運ばれ小姓達に次々と並べ立てられる。

下座には(つづみ)や、太鼓、笙、拍子木等を構えた直垂姿の楽人らがそっと整列していくのを目に止……………


「「「「「莞爾ー(かーんーじ)!!!」」」」」


  婚礼の二人よりもいよいよ真の主役(ラスボス)足りうる織田信長。その登場を今や遅しと期待を込める参列者達の背後にそっと足音も立てずに近づいた両家の女官、小姓が背後からまるで抱きしめるかのように両目をそっと塞いでいく。

  真三郎の背後に回った女官は押し付ける和装でも背中ごしのその柔らかさが分かる豊満な胸を故意にぐぐっと押し付けてくる。


「「なっ!!」」

「「おおっ」」

「「ウホッ!」」

  背後の動きに気付かなかった者からは嬌声や慌てる声、何か妙な声も混ざりつつ漏れる。

 

ボッ!ボッ!ボッ!

 

  参列者達の目を柔肌が塞いでいる僅かな間に運び込まれた燭台上の何十本もの蝋燭が次々と灯される。更にそれまでは主賓、上座である新郎新婦の背後にのみ立てられていた華やかな金屏風が真三郎ら左右に並ぶ者の背後に何双も運びこまれる。

  塞がれた手がそっと開けられると、とたんに暗闇に慣れた目に、眩しいまでに光を受けて大広間の中心に佇む人物を幽玄なまでに怪しく浮かばせる。


「いよーーっ!」

  

ポン!


パラーパーパラーァー!

   大広間の中央に片膝をついでしゃがんでいた男が金地に色鮮やかな朱で描かれた日輪の扇をバッと片手を振って開くと、くるりと軽やかに回りながら立ち上がり舞を一指し舞始める。

   大量の蝋燭と並べられた金屏風が反射する妖艶な光の下で美しく黒く光る濡羽(ぬれば)色と蘇芳で染めた海老茶色の直垂。片身変わりに傾いた衣装の背には金糸で縫い取られた織田木瓜の大紋。



「人間五十年♪  下天の内を伝えればいいのか


  夢幻の如く時は流-れて♪


一度あの時 あの場所で 


滅せぬ二人の、ままっ♪」



「いよーーっ!」   ポンッ!!


(って、織田じゃなくって、おだはおだでも小田の方じゃん!)

   源氏の荒武者と笛を愛する平家の御曹司、福原の都の渚で出会ってしまった許されざる二人の物語。

   甘く切ない透明感のある信長(おだ)高音(カウンターテナー)が大広間の参列者、そして開いた口が塞がらない真三郎を優しく包んでいく。




「内府様。いえ義兄上様。これからもご指導、ご鞭撻、よろしくお願いいたします」

   舞を終え席に戻った信長に花婿花嫁がそろって頭を下げて感謝を述べる。これだけで両家の力関係は押して知るべしである。

「うむ。犬も二度目ははいえ、歴史ある細川京兆家に嫁ぐのじゃ、心して励めよ」

   流石は音に聞こえし妹思い(シスコン)、政略結婚であり、夫を亡くし、二人の子と引き裂かれた妹に優しく声をかける。

「はい、兄上様」


「義兄上様。一つお願いの儀がございまする。某の名、昭元の昭は大樹さ、いや足利義昭殿の偏諱。この機に義兄上様より信の字を頂き、信元(のぶもと)と改めたく」

 

  室町幕府の世襲管領家の筆頭として絶大な影響を及ぼしてきた細川京兆家。偏諱を改めることではっきりと都を追放された足利義昭と決別し、信長、織田政権の傘下に入ると天下に宣言することになる。 

  これは今川家から独立した松平元康が今川義元の元の字を捨て、先祖の名乗りである家の字を採用、家康と名乗りを変えることよりもあからさまな仕儀である。


「……で、あるか。うむ、よかろう許す」

   事前に内諾済であった信長より即座に許可を受ける昭元改め、信元。 

「ははーっ」


(生 で、であるか キタ――(゜∀゜)――!!)

「乱!」


「はっ!」

信長の声に背後から小姓が近寄り控えるが、同列に並ぶ真三郎からは様子が伺いしれない。

「上杉に北条、毛利、長宗我部、九州や奥州の大名らに管領の義兄となった旨の報せを送れ!」


「御意!」


「サルっ!サルは!」


「はっ、サルめはこれに」

連枝衆の多い織田家、重臣といえど若干離れた席から秀吉がジャンピング土下座で信長の前に平伏する。

披露宴の場より一瞬で信長の政策を実施する場となった会場に空気がピリリと豹変する。

「ふん!加賀から短い尻尾を巻いて逃げ帰ったかと思ったが、まぁこれだけの手配を短期間でようやった。

だが、先の不首尾の始末はこれからじゃ、信貴山の松永攻めで挽回してみよ!」


「ははぁー!ありがたき幸せ。このサル粉骨砕身の心意気で上様に尽くしまするぅ!」

衆人環視の中、まさに床に額をぐりぐりこすりつける秀吉、芝居かかった様子に一部の参列者からは苦笑が漏れる。

「ふん、手柄を立て大和が治まれば、望みであった播磨調略をまかせよう」

幸若を舞うの時から手にしていた金泥の扇子で秀吉の額をピシャリと叩いて笑う。


「ははっ!有り難き幸せ!なれど今一つお願いが!此度の手配については、あちらの琉球王子殿の手助けがあったればこそ、是非に安土にお招きを」


「ふむぅ、なかなか面白き趣向に南蛮人の菓子より遥かに美味な一品であったわ、琉球王子。よかろう。来月の十二日に安土で予定しておる茶会に招いてやろう」


事前に打合せ済みとはいえ、秀吉のご指名に慌てて後ろに進み出て頭を下げる。


「「ははぁ!」」




翌日


「ふうぅーーーーっ、どうやら儂の首は皮一枚で繋がったようじゃぁ。」


剽軽な笑顔を絶やさなかったが信長の機嫌次第ではどんな罰がと内心緊張していた秀吉。未だ日も明けきらぬ早朝のうちから安土へと戻る信長を見送り、槙島城の一間に帰り着いた途端、バタリと大の字に倒れこみ腹の底から息を吐く。


「ご出陣が許されたとは、先の離陣も?」


「働き次第じゃな。まぁ朝公殿、心・配・御・無・用じゃ。 入れ違いになったが先ほど我が知恵袋殿が播磨の国人小寺の重臣より質を取って長浜城に入れたそうじゃ。調略も上手く進んどるし、もう暫くは大丈夫じゃて」


「それは、おめでとうございます」


「朝公殿にも正式に安土の茶会にお招き、誠におめでたき次第、一つ肩の荷が降りましたわい」


「羽柴様のお陰にございます。これで、主上より託された勤めが無事果たされさえすれば……」


「今一つの朝廷の方は?」


「関白二条様を通して働きかけております。

大和へのご出陣でお忙しくなる羽柴様にこれ以上迷惑をかけるわけにも」


「なぁに、借財はそのままじゃし、借りは倍に恩は更に倍にして返すのが儂の信条じゃて」


  髭のない顎をそっとさすりながら考え込む秀吉


「ふむー安土での茶会か。朝公殿は堺では確か油屋殿、京では茶禅の大徳寺様に寄宿されておるとのことじゃったのぅ。

  上様の御茶湯御政道おちゃのゆごせいどうの主流はやはり茶禅ではのうで堺の茶。そして天下三宗匠といえば納屋宗久、天王寺屋宗及、魚屋宗易。この三人の茶頭じゃ。ここはやはり上様の大のお気に入り、筆頭大商人納屋宗久殿も招待を受けておられたはず。

実は某、浅井朝倉との決戦、姉川の戦いの際に上様の密命を受けて納屋殿より種子島の玉薬を調達して以来の付き合いでな。一筆書きますので、是非茶会に備え最新の茶を学ばれてみては?」


(納屋。今井宗久かぁ。くうっー残念。出来れば表裏で有名な千利休がよかったんだけどなぁ、まだ世に出ていないのかぁ)

 魚屋(ととや)宗易の正体が後の千利休とは知らない無知な真三郎であった。

 

「ややっ、それは有り難い、明や、琉球風の茶の湯しか知らぬ故、大和でやんごとなき方々との交流するのに不安があり申した。新右衛門殿の礼法と共に一助となろうて」




安土に戻った信長を待ち受けていたのは、鉄壁を誇っていたはずの能登七尾城が上杉軍の乱取りを恐れた大量の農民が駆け込んだことによるし尿処理能力不足から疫病の大発生を引き起こし、九月十五日には既に落ちていたこと。

そして救援に向かった柴田勝家率いる織田北伐軍四万が九月二十三日、軍神上杉謙信率いる二万の軍勢に加賀手取川において手酷い大敗を喫したという正に信長の癇癪を大爆発させるに値する報せであった。


後退した勝家軍は御幸塚の砦で軍を立て直しを図る。

織田家、細川家の婚礼の報せが能登七尾城に一旦引き返した謙信に届いたのもこの頃だろう。

大義名分に拘る上杉勢がピタリと動きを止めたのを確認した十月三日、そろそろ秋の収穫の時期と見計らい、上杉軍は越後に、勝家率いる北伐軍は安土へと重い帰路についた。


報せを受けた信長の決断は早かった。

翌、四日には北陸への後詰めにと共に出陣予定で安土にあった嫡男信忠の美濃勢に離陣した秀吉に先発で安土に戻った米五郎左こと丹羽長秀らを付けた松永征伐軍二万五千を改めて編制、反信長包囲網の各個撃破を図る。


大坂の本願寺や西国の毛利に松永の謀叛や、上杉の勝利に連動する様な動きをはなく、筒井、明智ら先発軍と会わせ、総勢四万の大軍は大和と河内の国境、天守を備え広大な信貴山の山域にいくつもの城郭を連ねた信貴山城を完全に包囲していた。



その頃、1577年 天正5年 10月10日 

納屋 今井宗久 京屋敷


「これはこれは琉球王子殿下。京の拙宅までご足労いただき申訳ございません」

堺一ということは日ノ本一の大商人 納屋を屋号とする今井宗久57歳

鎧の材料となる皮革に堺内に多くの鉄砲鍛冶職人を抱える。鹿革等を輸入する為、古くから南蛮、ホイアンや、シャムやマラッカにまで数多く武装船団を仕立てており、今では鉛や錫、硝石すら扱うまさに死の商人。信長の知己を得てからは但馬は生野の銀山の経営に堺周辺の代官、様々な特権も得ている。

因みに奄美で真三郎が手にいれ、今は三良が預かっている装飾過多な種子島も納屋謹製である。


「なんの、堺の納屋殿といえば琉球でも知らぬものはおりません。ご承知の通り、安土の内府様に明後日の茶会に招かれておりまして。羽柴様よりご紹介で不躾ながら納屋様に茶の湯の基本についてご指導いただきたくまいりました」


「お任せください、王子殿下。いや卯屋さんには納屋として今後も末永くお付き合いを、何やら先日は油屋さんを通して南蛮の白砂糖も大量にお買い上げ頂きまして」


「あはは、これは納屋さんには何も隠せませんな。わびさび茶の湯の開祖武野紹鴎(たけのじょうおう)殿の一切を受け継ぎ、大蔵卿法印の位すら授かったお方と伺っております。なにとぞよろしくお願いいたします」


「まぁ、茶の湯、名物の一切を受け継いだんは確かやが、うちの本分は皮革や、鉄砲、玉薬に貸金、それに屋号ともなってる納屋の商いですわ。

ほんまなら茶の湯指南を本業にしだしておる魚屋(ととや)の宗易殿が教え上手やが、まぁ琉球との交易も益々盛んになりますよって教えたるわぁ」


ニカッと笑った宗久が真三郎を屋敷奥の庭に面した書院に案内する。


「そやなぁ。では、茶の湯の中で最も格式の高い秘奥義 台子(だいす)の手前 真台子(しんだいす)じゃな。招かれた客は堺や京の豪商に、公家。羽柴殿や、主だった重臣方は戦場で不在だが尾張以来の寵臣数名。

おそらく完成しておる御殿内、書院での茶となろう。

今から亭主の作法は無理じゃが、明日の茶会までに客、一通りの台子作法を教えて進ぜよう。」 


  真台子とは真塗り(黒漆)4本柱の台子で、最も格が高い。大きさは幅3尺奥行き1尺高さ2尺、水指・杓立・建水・蓋置の4つの道具を同一素材・同一意匠で揃えたものを合わせるのが流儀である。


  案内された書院の中央には台子が二つ、宗久の見本と真三郎の為に用意さられたらしい茶道具一式がポツン並べられいる。


「まずは袱紗(ふくさ)捌き、四方の角を清めて、台子の上に、中心をしっかりとるのじゃ、袱紗は麻や、木綿より滑らかな上質な帛が望ましいですな」

三尺四方の明らかに明渡りとわかる上質な白絹の袱紗の角をつまみ、見事な手さばきで台子の上にふわりと広げる。

かなりぎこちない手捌きながら真三郎も動きをを真似る。


「そして、この上に、茶道具、水差しに、杓立て、建水、蓋置を順に並べて……そうそう、配置はもっとこう台子の中央に、」


宗久が真三郎が並べた明らかに安物と分かる茶道具の配置を修正していく。


「そして、袱紗の端をピンと伸ばして、一気に、横ではなく、下に布を落とすように引きます、はいっ!」


バッ!

バッ……ガシャン!

落ちはしなかったものの、動きがらぎこちなく、切れがなかった真三郎の台子上の水差しが少し動いてゆっくりと倒れる。


「うーん、残念、星一つ!です!」


流石は堺の巨……いや宗匠、茶の湯には厳しいのである。






信長………



今井宗久…………



ごめんなさい。m(._.)m こんな台子の手前はありません。


茶席に招かれた時にやらかして高価な茶道具を壊しても責任は負いませんから!

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