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新しい生活

 新居での初めての朝。

 俺は二つ繋げたベッドの真ん中で、二人を抱えるような体勢で目を覚ます。

 フィーナとリゼットは俺の腕に頭を載せ、胸に頭をつけて目をつぶっていた。

 俺が起きたのに気づくとフィーナがキスをしてくる。

 いつもより情熱的でいつもより長かった。

 昨日の夜もそうだったが、リゼットが来たことでフィーナが積極的になった気がする。


「おはようございます。ご主人様」

「おはよう」


 俺はこの満面の笑顔でする朝の挨拶に弱い。

 ムギュッと抱きしめると頭をなでて、今度は俺からキスをする。

 フィーナとのキスが終わると、今度はリゼットが軽いキスをしてくる。

 リゼットはまだ慣れておらず、ぎこちなさを感じた。


「ご主人様。おはよう」

「ああ、おはよう」


 顔をほんのりと赤らめて、上目遣いに作ったような笑顔をする。

 長い一人暮らしのせいか、リゼットは笑顔もぎこちない。

 おそらくだが、幼い外見のせいで人間不信なところもあるのだろう。

 慈しむように優しく抱きしめ、優しくキスをする。

 体が華奢なのもあるが、心に壊れそうな弱さを感じるからだ。


 ベッドを降りるといつもどおりフィーナが装備を着せてくれる。

 俺は自分でできると言ったのだが、頑なにやると言って聞かない。

 こういう所は、フィーナは頑固だ。


 今日はリゼットの生着替えが見られるので、ワクワクドキドキしながら見守る。

 リゼットが怪訝な顔を俺に向けるが、着替えだした。

 すこし恥ずかしそうにしているが、それでも堂々と着替える。

 ピタリと着替えるのを止めると、再び俺を怪訝な顔で見る。

 ご主人様のヘンタイっぷりにドン引きと言った所だろう。

 俺は涼しい顔で見守る。

 怪訝な顔で俺を見るリゼット。

 見つめ合う二人……。

 目をそらす俺。

 まけた、リゼットの眼力に俺はまけた。


 落ち込む俺。

 慰めるフィーナ。

 フィーナは、リゼットに何故落ち込んでいるのか聞いている。

 リゼットは肩をすくめて「さあ?」と答えた。


 これが、新しい家で始まった、新しい朝の出来事だ。


…………


 装備が整った後は、冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドに着くと、アンデット討伐の賞金が出るか確認する。

 アンデット討伐の賞金の金額については後で決めると言われたからだ。

 賞金受付のカウンターに行き、確認すると金額は確定された様で支払いが行われた。

 金貨5枚と、銀貨8枚だ。

 苦労したわりには少ないが、モンスターの殆どは他の冒険者が倒したし、俺がしたことはリゼットを説得しただけだ。

 仕方ないだろう。


 次は依頼を調べる。


「なにか良い依頼はあるか?」

「どういうのがいいでしょう?」

「今日の軽くこなせる依頼と、明日の朝からやる本格的な依頼だ。モンスター討伐系がいいな」

「いろいろあるわね」


 リゼットは、俺から離れて依頼を興味深そうに眺めている。


「これなんてどうでしょうか?

 街道沿いの森にモンスターが出たようですよ?

 それを退治する依頼です」

「今日のはそれにしよう。明日のは、どれにするか……」

「これなんて良いんじゃない?

 少し遠いけど、森の中にある泉の近くに20匹ぐらいのモンスターが、住み着いたみたい」

「うむ。さっきのとこれの依頼を受けてすぐに街道に行こう。依頼が終わった後は買い物をしたい」


 カウンターで依頼を受けると、モンスターが現れた場所に向かった。

 街道を歩くときに、フィーナとリゼットの手をとった。

 フィーナは、はにかんだ笑顔を、リゼットは嬉しいような困ったような笑顔を俺に向ける。

 ピクニックに行くような気分で手を繋いで歩いた。



 森の近くの街道を通ると、森から2メートルほどの豚面の人型モンスターが8体と3メートルに届くほどの毛深い野人のモンスターが3体現れた。


「オークとオーガね。力は強いけど大した敵じゃないわ」

「フィーナは弓で牽制してくれ。リゼットは……。

 好きなように戦ってくれ」


 俺はリゼットに指示を出そうかと考えたが、むしろリゼットに指示を出してもらったほうが良い気がしてやめた。


「あたしの戦い方は召喚して見てるだけだけどね。

 ご主人様もファイアーリザードを出すといいわ」


 リゼットは、言いながら3体のジャイアント・スケルトンを召喚する。

 俺も言われたとおりファイアーリザードを5体出すと、剣を抜いて前に出た。

 ジャイアント・スケルトンはオーガに、ファイアーリザードはオークに差し向ける。

 モンスターと召喚獣はほぼ互角だったが、俺がライトニング・ボルト、リゼットがサモン・ファイアーエレメンタルを唱えると、戦局が一気に傾きあっという間に殲滅した。


「ご主人様もリゼットもすごいですね」


 フィーナは出番がなかったので、ちょっと残念そうな顔をしている。


「フィーナは、ダンジョンに潜った時に活躍してもらう。戦闘は俺達に任せてくれ」

「はい!」


 気分を戻すと笑顔で答えた。


…………


 帰り道も手を繋いで歩く。

 日差しは高く、雲1つない天気で、適度な風が心地よい。


「お腹が空いたし、そこの原っぱに座ってご飯を食べないか? 携帯食料しか無いけど」

「天気もいいですし楽しそうです」

「ピクニックね。何年ぶりかしら」


 三人で座ると、リュックから携帯食料を出した。

 中身は、固いビスケット、干し肉、チーズ、ドライフルーツだ。


「こうやって食べると携帯食料もおいしく感じるものだな」

「はい。美味しいです」

「ご主人様の前世でも、ピクニックはしたのかしら?」

「前世では恋人同士や家族でやったりするものだが、俺は一人で居ることが多かったからピクニックはやったことがないな」

「前世のご主人様は恋人が居らっしゃらなかったのですか?」

「ああ、いなかったな」

「ご主人様にいらっしゃらないなんて信じられません」

「前世の俺はダメ人間だったからな」


 乾いた笑いを出す。


「こんなに優しくて頭のいいご主人様がダメ人間なわけ無いです!」

「俺はこの世界にこれて幸せだ。二人と出会えたしな」

「私も幸せです」

「私もよ」

「実は私、ピクニックするの初めてなんですよ」

「私は40年ぷりぐらいね」


 よく考えれば、俺だけではなくフィーナもリゼットも幸せとは言えない過去を送ってきた。

 これからは、幸せを作っていこうと心に決めた。

 それから、しばらく食事と会話を楽しみ街へ戻った。


…………


 冒険者ギルドに戻るとカウンターで賞金を受け取る。

 銀貨92枚、移動時間込みで3時間程度の仕事ならこんなもんだろう。

 生活に必要な魔法を買うために、魔法屋に行く。


「生活に使えるような魔法があるのか?」

「飲水を出したり、火を起こしたりね。大体が初級変性魔法になるわ」

「遠くに移動する魔法は無いのか?」

「あるけど、変性か召喚の上級魔法になるわね」

「上級魔法では金が足りないな。買うのは水と火の二つにしよう」


 水を出す初級変性魔法ウォーターと火を出す初級編性魔法トーチを購入し覚える。


「ご主人様はやっぱり変性魔法も使えるのね」

「ああ、全属性を試してみたが得意不得意がわからなかった。

 リゼットは召喚魔法以外は使えないのか?」

「初級魔法ぐらいなら使えるけど、効果が極端に落ちるわね。

 魔力には自信があるから、練習すればある程度使えるようにはなると思うけど」

「そういう物なのか」



 次は、食器や調理用具を買うため家庭用品店に向かう。


「フィーナとリゼットは料理はできるのか?」

「はい、簡単な料理なら」

「あたしも簡単な料理だけね」


 俺はこっちの世界に来てからは料理をしていないが、料理は好きだったので時間が有るときにチャレンジしたい。

 必要そうなものを見繕って購入。

 二人共料理を作ってくれると言うので、食品店にも行って食材を購入する。

 食材も含めて銀貨18枚と銅貨35枚だ。



 最後は、リゼットの服を買うため洋服店に行く。


「リゼットは洋服に興味あるか?」


 今は戦闘用のローブを着ている。


「人並みにはあるわよ。

 でも、あまり着られるものが無いのよね」


 リゼットの身長に合う服を探して気づく。

 子供用の服しかないのだ。

 女の子用の衣服なので、落ち着いた物は少なく可愛らしい物しか無い。

 こんなものを着たら、ますます子供に見えてしまう。

 ズボンはどうだろうかと見てみたが、今度は中性的な少年に見えてしまう。


「やっぱり、可愛らしい服は嫌いか?」


 俺は、恐る恐る聞いてみた。

 リゼットは顎に手を当ててしばらく悩む。


「ご主人様が好きなら着るわ」


 好きかと聞かれれば当然好きだ。

 思い切って、俺の趣味を全開にして選んでみた。


 一着目は、リボンのついた水色のワンピース。

 二着目は、半袖の白いシャツとピンクのスカート。


 ちなみに、ミニスカートはこの世界には無いようだ。


「フィーナの服ももう一着欲しいんだが、どんなのが良いかな?」

「本人に聞いたほうが良いんじゃないの?」

「フィーナは服に興味が無いんだ」

「私は洋服なんていりません」


 フィーナは、ノーパンワンピースを思い出したらしく、顔を真赤に染めると頭を振って拒否した。


「な?」

「フィーナに似合う服なら、これなんてどうかしら?」


 リゼットが選んだのは、ベージュの半袖シャツと黒いズボンだ。

 かわいいのではなく少し大人びた雰囲気の服装だ。


「あ、これなら欲しいです」


 スカートではなくズボンだから安心したのだろう。

 換えの下着と洋服を銀貨13枚と銅貨30枚で購入した。



 家に帰り夕食の支度をする。

 俺は魔法を使って水と火を用意すると、やることがなくなったので椅子に座って料理が出来るのを待つ。

 二人は鼻歌を歌いながら料理。


 うむ。

 料理する二人の女性の後姿がそそられる。

 まるで新婚夫婦みたいでドキドキしてきた。

 今度エプロンを買おう。


 しばらくすると、テーブルに香りと湯気を立ち上らせて料理が並べられた。

 パンと肉野菜炒め、マッシュポテトがひとりひとり用意され、真ん中に鍋が置かれる。

 肉や野菜のごった煮鍋はフィーナが、その他の家庭料理的な物はリゼットが作った。


「この鍋は美味しいな。肉や野菜がとろっと溶けてダシがよく出てる」

「ありがとうございます」

「こっちの、肉野菜炒めとマッシュポテトも美味しい。家庭の味っていう雰囲気があるな」

「ありがとう」


 二人の料理はとても満足がいくものだった。

 食事が終わると、フィーナが装備の手入れして、リゼットが片付けと洗濯をする。

 俺は体を拭くためのお湯を作る。


 寝る準備が整うと今日のメインイベントである。

 まずは、俺の体を二人に拭いてもらう。


「ご主人様。私の体拭いてもいいですよ」

「今まで嫌がっていたのにどうしたんだ?」


 フィーナは顔を真赤にして下を向いているだけで答えない。

 俺はしばし考え、フィーナの頭を撫でながら言った。


「今日は自分で拭いてもらおう。

 俺は寝室で待っているから、今日買ってきた洋服に着替えてフィーナから寝室に来てくれ。

 フィーナが部屋から出てきたら今度はリゼットだ」


 つまり、洋服に着替えた二人を一人づづ相手にする。

 フィーナはホッとしたような、ちょっと残念そうな顔をして頷いた。


 しばらく寝室で待っていると、ベージュのシャツに黒いズボンの少し大人びた感じのフィーナが部屋に入ってきた。

 胸の谷間が服からみえ、ズボンによって強調された腰のクビレからヒップのラインが凄くセクシーだ。

 俺はベッドから立ち上がるとフィーナを抱きしめた。


「いつもと違ってセクシーだね」

「あっ、ありがとうございます」


 抱きしめながら腰のラインに手を這わせて確かめる。

 いつもは胸にばかり意識が言って気付かなかったが、腰は引き締められており抱くとすごく細いことがわかる。

 唇にキスをした後、首筋に唇を這わす。

 同時に、おしりを軽く撫でるように愛撫する。

 しばらく、立ったままでお腹から腰、ヒップを堪能するとフィーナを連れてベッドに移動した。


…………


 フィーナが寝室を出て行くと入れ替わりに、リゼットが入ってくる。

 リボン付き水色ワンピースの子供っぽい服装だ、


「この歳になってこんな服を着ると思わかなったわ」


 この年と言っても見た目としては相応の服装だ。


「可愛らしくてとっても似合ってるよ」

「照れちゃうわね」


 顔をうつむきもじもじとしている姿は、まるで子供の様に見えた。

 背が低いので膝立ちの姿勢で抱きしめてキスをする。

 服の上から体をまさぐる。

 背中、腰、おしり、一通り撫で回した後、ワンピースの裾をめくる。

 かわいらしいパンツがあらわになる。


 ふと冷静になりリゼットの顔を伺う。

 リゼットから俺はどんな風に写っているだろうか。

 自分を子供のように扱う、ヘンタイだと思われてないだろうか。

 しかし、そんな心配を他所にキスをしてきた。

 俺は立ち上がると、リゼットをお姫様抱っこする。

 小さく華奢な体は予想以上に軽かった。

 そして、そのままベッドに運んだ。


…………


 二人のファッションショーが終わると三人でベッドに入る。

 順番にお休みのキスをした後、待っていて体の冷えてしまったフィーナを少し温めてあげる。

 ふと、洋服を部屋の中でしか着てないことに気づく、明後日は仕事を休んでデートの日にしようと決めて眠りについた。


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