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四人とのデート(前編)

「おはようございます。ご主人様」


 朝、目を覚ますと、いつも通りフィーナがキスしてくれた。

 そうだ、いつも通りだ。

 やっと日常に戻ってきた実感が湧いてきた。

 ダンジョン攻略も異世界生活らしくてドキドキしたけど、やっぱり自分には彼女たちと過ごすのが合ってるな。


 ほうけていたからか、フィーナが不思議そうに俺の顔を覗き込む。

 こんな可愛い彼女が出来るなんて、異世界に来れて良かった。

 この世界に来てから何度も感じた事をまたも思ってしまう。

 ツヤのあるサラサラとした黒髪をなでると、安心したように笑顔を見せる。

 やっぱり、朝はフィーナの笑顔に限るな。

 元気が湧いてくる。

 抱き寄せると目をつぶる。

 唇を合わせて舌を入れると、緊張もなく受け入れて舌を絡めてくる。

 こんな動作も今ではすっかり自然に出来てしまう。


「おはようフィーナ」


 唇を離すと、少し照れた表情でほほえむ。

 フィーナもいつも・・・に戻った安心感を感じてるみたいだ。


 リゼットの方を向くと、柔らかな笑顔で答えてくれる。


「ご主人様。おはよう」


 首に抱きつくようにしながら俺の顔を引き寄せる。

 されるがままにしていると、腕にキュッと力を入れて抱きしめる様に唇を押し当ててくる。

 俺も答えるようにリゼットの背中に腕を回し抱きしめる。

 緊張したような雰囲気もなく俺に自然と身を任せると体同士がピッタリとふれあう。


 しばらく抱き合いながらキスをして唇を離す。

 ダンジョン攻略が終わった後からは、以前あったリゼットの緊張がなくなった気がする。

 遠慮がちで体に力が入っていたのが、今は感じられない。

 おそらくだが、過去の事を引きずっていて、俺に負い目みたいなのがあったんだろう。

 そう考えれば、シャーロットが過去をバラしてくれたのは良かったのかもしれない。


「おはようリゼット」


 フィーナと同じように、今度はこちらから抱き寄せると舌を入れる。

 思った通り緊張したような感じはなく、すんなりと受け入れてくれる。

 舌の動きはまだぎこちなさが取れないが、懸命に答えようと必死に動かしてる。

 それもまたかわいい。


「ご主人様、おはようにゃー」


 リゼットから離れてティアの方を向くと、満面の笑顔で向かって来た。

 俺を押し倒すような勢いで抱きついてくると、すぐに舌を入れてくる。

 ネコ族特有の少しザラザラした舌が口の中を這いまわり、マッサージするような感触が刺激的で妙に心地いい。

 いつまでも離れないので、息苦しくなり無理やり引き剥がす。


「いい加減離れろ」

「う”に”ゃー」


 ほっぺを俺に押されて、不思議な声を発しながら引き剥がされる。

 それでも笑顔を崩さずに笑いかけてくる。


「お返しのチューは?」


 俺が向きを変えようとすると、小首をかしげて訴えてくる。

 また、長い時間捕縛されるのは皆に申し訳ないので、軽くキスをするが、それでも満足したらしく、体をクネクネさせながら妙な笑い声を上げた。


「にゅふふふふー」


 最後にクラリーヌの方を向く。


「おはよう。ユウキ」


 相変わらず照れながら、顎を上げて俺を迎える準備をしている。

 黙って抱き寄せながら唇を合わせると、やさしく抱きしめ返してくれる。

 舌を入れるのは、最初に俺がやり過ぎてしまったため少し抵抗があるらしく、チュッチュと短いキスを繰り返すのがお好みの様子だ。

 はなれる度に俺を見て照れるのがカワイイ。


……


 朝の食事をしていると、ティアとクラリーヌが急いで食べ終わる。


「フィーナも早く食べるにゃ」

「あの、私はいいです……」

「ん? なんかするのか?」

「ユウキは気にしないで、デートの準備をするだけだから」


 俺はなんとなく聞き流すが、フィーナは困った様子だ。


「さあ、いくにゃ」

「私はご主人様とゆっくりご飯食べたいですー」


 フィーナは、ティアとクラリーヌに両肩を掴まれると引きずられるように空き部屋に連行されて行った。


「あれ? リゼットは良いのか?」

「一人だと、ご主人様も寂しいでしょ? それに、あたしには必要ないのよね……」


 リゼットが嬉しいような残念な様な微妙な表情でため息を付く。

 あまり深く突っ込まないほうが良さそうだ。

 食事を終えた後、お茶を飲みながら、ちょっとした会話を楽しんでいると、背後からクラリーヌとティアがソロソロと近寄って来た。


「ん? 準備出来たのか?」


 振り向くと、着飾ったクラリーヌとティアがいた。

 なんか、フィーナは後ろに隠れてコソコソしてるぞ。


「じゃーん、にゃ」

「どうよ?」


 ティアが両手を広げてクルリと周る。

 クラリーヌは腰に手を当てて得意気に胸をはる。


 どうよと言われても困る。

 確かに、オシャレな服を着ていて綺麗だけど、いつもと変わらないような……。

 ん? ティアの雰囲気が微妙に違う気がする。

 んー??

 ああ、化粧をしてるのか。

 みんな、スッピンでも十分かわいいから気にしてなかったけど、ティアが化粧してるのは初めて見たな。

 目がパッチリしてて、唇も赤い。

 いつもよりちょっと大人っぽい雰囲気だ。


「ティアが化粧しているのは初めてだな。すごい綺麗だよ」

「にゅふふふふ」


 褒められて嬉しいのか、自分の腕を絡ませて体をクネクネとよじる。


「アタシはどうなのよ?」

「もちろん綺麗だよ。

 しかし、クラリーヌは化粧するとホント変わるよな。

 いつものキツイ雰囲気が消えて、大人しそうに見えるもん」


 クラリーヌはツカツカと俺の側によると頬をつねる。


「イテテテ、何だよ!」

「なんか、言葉にトゲがない? まるで普段がキツイみたいじゃない」


 いや、実際キツイだろ!

 って言うツッコミは心の中に留めておこう。


「純粋に化粧が上手いってことだよ」

「まあいいわ。それよりフィーナを見てあげて」


 納得いかなそうではあるが、俺から離れるとティアの後ろに隠れているフィーナを引きずり出す。

 フィーナは恥ずかしそうにしながら俺の目の前に躍り出る。


「あの……ご主人様どうですか?」

「すごい……綺麗だ……」


 思わず素直な気持ちが言葉に出る。

 普段は、あどけない感じがするけど、今は完璧に大人の女性だ。

 服装は以前、買った白いワンピースだ。

 だけど、同じ服を着ているにもかかわらず、前の可愛らしい純朴な感じとは違い、ドレスを着てるかのような豪華さを感じる。


「化粧なんて初めてだから恥ずかしいです……」


 俺が見とれていたからか、体を抱くように隠すと、恥ずかしそうにうつむいてしまう。


「……ああ、いやゴメン」


 俺もなんだか気恥ずかしくなり目をそらす。


「やっぱり、対応が違うじゃない。

 まあ、メイクしていて変わりようにびっくりしたからね。

 アタシの化粧テクニックが上手いということで納得してあげるわ」


 クラリーヌは少し不機嫌になりながらも俺の反応に満足したようだ。


「そういえば、リゼットは化粧しないのか?」

「あたしはいいのよ」

「なんでだよ。せっかくだから化粧すればいいのに」


 リゼットがちょっと困った様な表情をすると、クラリーヌが呆れた顔で助け舟をだす。


「まったく、ユウキの鈍感さには困るわね。

 肌はキレイだし、目もパッチリしているし、唇もバッチリ赤いから化粧する必要ないのよ。

 むしろ、幼い顔だから化粧したら変になるわ

 女としては嫉妬しちゃうわね」


 クラリーヌが深い溜息をつくと、リゼットが焦って顔の前で手をバタバタ指せる。


「あたしは、ただ歳を取らないだけだし、クラリーヌみたいに化粧したり、色んな服を着れたほうがうらやましいわよ」

「確かに化粧したり出来るけど、ユウキはキレイ系よりカワイイ系の方が好きみたいだからね。

 ホントは、フィーナの化粧も今より普段の方が好きなんじゃない?」


 ジトッとした目で俺を見るクラリーヌ。

 なぜ、俺が責められてるんだ……。


「いや、そんな事無いぞ。フィーナもティアもクラリーヌも見違えるように綺麗だし。

 もちろん、普段のスッピンでも十分かわいいから好きだけど。

 まあ、アレだな!

 みんなもそうだけど、リゼットは化粧なんてしなくても十分かわいいな!」


 言っててよくわからなくなってきた。

 クラリーヌは相変わらず胡散臭そうに俺を見ているが、ため息をひとつつくと納得したようだ。


「なに言ってるかよくわかんないけど、みんなが喜んでるみたいだからいいわ」


 周りを見ると、フィーナもリゼットもティアもなんか照れてる。

 自分でも、よくわからんけど、俺の心が通じたようだ。


「まあ、準備が出来たならすぐに出かけよう。時間が勿体無い」


 みんな出かけるのはやっぱり楽しみなようだ。

 俺が立ち上がると、さっきの微妙な雰囲気はなくなって、いそいそと俺の近くに集まる。

 手を繋ごうと思ったけど、残念なことに俺には二本しか腕がない。

 こういう時は先に仲良くなったフィーナとリゼットだな。

 ティアとクラリーヌは、少し不満気な顔をしたが納得したようだ。


 買い物にお風呂に豪華な食事、今日も一日楽しもう。



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