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デーモンアクセサリー(後編)

「あれ? 家に帰ったんじゃないのか?」


 なぜか家の前にはクラリーヌが立ち尽くしていた。

 足元には、5つほど大きな袋が置いてある。


「今日もユウキの家で寝ていいかな?」


 遠慮がちに聞いてくる。


「もちろんまわないって言うか嬉しけど。

 チームに戻ったんじゃなかったのか?」


 顔をぐいっと近づけてきて、早口にまくし立てる。


「えーとね。家に帰ったらね。

 新しい女の子のメンバーを二人追加したからアタシはいらないって言われてね。

 リーダーはアタシだって言っても、ジスレニスがやるから大丈夫だって。

 アタシが居ない間もギルドの依頼はこなしてたらしくて問題なかったって。

 だから、あたしはいらないって言われちゃって……」


「……つまり、どういうことだってばよ?」


「えーと、『風の射手』から追い出されちゃった」


 照れながら舌をペロリと出す。

 デジャブか?

 なんか前にもあった気がするぞ。


「そ、そうか……」


 突然の事でいまいち理解が追いつかない。


「だからユウキのチームに入れてくれないかな?

 あと、住む所も無いんだよね」


 うつむいてモジモジと上目遣いに見てくる。


「俺は構わないって言うか嬉しいけどクラリーヌは良いのか?

 風の射手のメンバーは家族みたいなものなんだろ?

 それが追い出すなんて尋常じゃないぞ」

「ご主人様。とりあえず家に入りましょう」


 リゼットが話が長くなると感じてか促してくれた。

 俺たちは荷物を持って部屋に入ると居間で一息入れる。

 すると、クラリーヌは少し顔をほころばせて話し始める。


「あのね。勘違いはしてほしくないんだけど、みんな嫌がらせの為にアタシを追い出したんじゃないと思うの。

 新しいメンバーを入れたのもアタシを安心させるためだよ」

「つまり、俺のチームに入っても大丈夫な様にしてくれたってことか?」


 クラリーヌが「うん」と小さくつぶやく顔は、感謝と心配が入り混じったような複雑な表情だ。


「風の射手の人たちがいじわるするとは思えないにゃ」

「そうだな……俺もそう思う……。

 それなら俺は大歓迎だ。

 クラリーヌがチームに入ってくれれば心強いし一緒に居られるなら嬉しい。

 みんなも問題ないよな?」

「もちろんです」

「ええ、歓迎するわよ」

「一緒に居られなくて寂しかったにゃ」


 ティアがクラリーヌに勢いよく抱きつくとアワアワと慌てている。

 唐突だけど、これからもクラリーヌと一緒に入られるんだ。

 こんな嬉しいことはない。

 ティアからようやく離れられたクラリーヌを、無意識のうちに抱きしめていた。


「ちょっと、いきなりどうしたのよ」

「昨日は一緒にいられないと思ってからな。嬉しくって」

「大げさね。別にいつでも会えたのに。……でもアタシも嬉しい」


 しばらく無言で抱きしめた。


「ご主人様。クラリーヌもチームに入るんなら、今日のこと話したほうが良いんじゃないかしら?」


 みんなを椅子に座るように促しながら、リゼットが真面目な顔をする。


「今日のことって何?

 報酬もらっただけじゃないの?

 あ、アタシの取り分はちゃんとくれるのよね?」

「もちろん、協力してくれたんだからクラリーヌにもあげるに決まってる。

 それよりデーモンロードの話なんだが……」


 領主と話し合った内容を簡潔に話す。


「はぁ? デーモンロードに体を貸すの!?

 ユウキあんた本気?

 そんな得体のしれない奴の話を信じるなんて信じられないわ」


 クラリーヌは大げさに驚く。

 いや、俺が鈍感なだけでこれが普通なのかもしれない。


「あたしもちょっと心配だわ。

 少なくとも慎重になった方がいいわね」

「そうかにゃ?

 戦いの時もご主人様に力を貸してくれたし、話した感じだと大丈夫だと思うにゃ」

「私はご主人様を信じます」


 慎重派と能天気派の二つに割れてしまったな。

 俺も話をした限りでは裏はなさそうに思ったけど、クラリーヌもリゼットも間違った事は言わないしな。


「分かったよ。慎重に行動するとしよう。

 ただ、約束したからには二人の望みである『メシを腹いっぱい食べる』と、『自由に動きたい』は叶えないとな」

「そうね。少なくとも生欲の王との戦いの時には役に立ってくれたわ。

 協力してもらえるなら、多少のリスクは目をつぶるわ。

 言い方は悪いかもしれないけど実験・・はした方がいいわね」

「アタシは反対ね。

 確かに魅力的な戦力だけど、少しでもリスクは減らすべきだわ」


 さすが、昔から風の射手を率いてるだけあって慎重だな。


「ご主人様はそういう事を言ってるんじゃないにゃ。

 たとえ、デーモンロードでも約束を破ったらいけないにゃ」


 珍しくティアが語気を強めてリゼットとクラリーヌをまっすぐと見つめる。


「あっ、あの。ご主人様には、人を疑うようなにはなって欲しくないです。

 だから、ご主人様にお願いされたなら喜んで体を貸します」


 フィーナも強く訴えかける。


「みんなありがとな。

 俺を信用してくれるフィーナとティアも。

 忠告をしてくれるリゼットもクラリーヌも。

 どっちも、ありがたいよ」

「まったく、ユウキはそういう事を平気で言えちゃうんだから」

「ティアとフィーナの言う通りね。

 あたしもご主人様を信用するわ。

 もし、何かあったら協力して対処すれば大丈夫でしょ」

「すまないな。その代わりと言うのもアレだけど、リゼットとクラリーヌの言うとおり慎重にやろう」

「明日にでも早速やってみる?」

「いや、明日は別のことをがしたい」

「別のこと?」

「ああ、明日は5人でデートしよう。お金も入ったし買いたいものもあるし。

 なにより、久しぶりに風呂に入りたい」

「嬉しい、久しぶりにさっぱりしたいです」

「ずっと入れなかったものね」

「お風呂だにゃー」

「お風呂か、良いわね」


 クラリーヌも風呂は好きみたいだな。

 明日が楽しみだ。



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