デーモンロード『生欲の王』③
「手順は先ほど伝えた通りだ。
みんな気を引き締めてかかってくれ!」
カシードの号令を合図に、リュナが次々とアイテムを使っていく。
巨人の腕:筋力上昇
光魔苔の結晶:魔力上昇
千年樹の枝:防御力上昇
ファントムの魂:魔法防御力上昇
韋駄天の教え:速度上昇
古代の歯車:回避率上昇
ラビットリング:運命値上昇
戦乙女像:武器強化+聖属性付加
ヘパイストスの槌:防具強化
ルーンの秘薬:魔力効果向上
妖精の鱗粉:継続的体力回復
魔法石エネル:継続的魔力回復
死神の気まぐれ:致死ダメージ回避
聖なる祝福の杖:防御フィールド付加
風の精霊の息吹:遠距離物理攻撃回避
厄災休暇:状態異常耐性
リュナのアイテム使用のスキルによって、より強くアイテムの効果が発現する。
体が色とりどりに発光し、様々な力が注がれていくのを感じる。
「次は召喚だ!」
俺とリゼットで一体づつドラゴンゾンビを召喚する。
さらに、カシードが身につけた指輪を天にかざして唱えた。
「ジンよ。件の盟約に基づき我に力を貸せ」
洞窟内に突如発生した突風が、竜巻に成り、次第に人に似た形になる。
それは、風の揺らぎの様に透明ながら、そこに居ると思わせるエネルギーを発していた。
「ナニヨウダ」
「合図をするからデーモンをやっつけてくれ」
「ヒサシブリ二アバレラレル」
強風を出しながら楽しげに笑う。
「すごいわ、まさか風の精霊王を使役するなんて」
リゼットがドラゴンゾンビを操りながらジンを食い入る様に見つめていた。
「結界を開放したら広範囲攻撃を叩き込んでやれ!
広範囲に攻撃できない奴はデーモンが逃げ出さないように確実に仕留めろ!」
「「「おお!!」」」
「行きやす!」
結界の封印を開放するピエール。
そこから先はほぼ一瞬の出来事で、何が起こっているのか理解するのに精一杯だった。
風の精霊王ジンがいち早くデーモンの群れの真ん中、ホールの中心に突進すると、激しい竜巻を発生させる。
それに、合わせたかのようにシトが叫んだ。
「フロストノヴァ!」
極寒の冷気がデーモンを襲うと、ジンの竜巻と合わさり巨大な吹雪と化す。
同時に2体のドラゴンソンビが吐き出したソンビブレスが、吹雪と合わさり死を呼ぶブリザードとなる。
「魔神剣!」
レナルヴェが気合とともに剣を横に薙ぎると、巨大な斬撃が飛翔しデーモンを真っ二つにしながら進んでいく。
「フェンリルよ我が敵を喰らえ!」
さらに、エルダールから放たれた矢が巨大な白銀の狼の姿になると、ブリザードの中、まるで遊ぶかのように悠々と駆け巡り、デーモンを牙にかけた。
黒騎士もそれぞれに役割をこなしている。
ボードウィンは、レナルヴェ程ではないものの広範囲に衝撃を出す斬撃を繰り出し。
セッツァーは、二本の剣を自在に操ると無数の斬撃がデーモンに向かって飛んで行く。
アーリンは、シトをフォローするようにレーザーのような高圧の水流を手から放出している。
それは、水圧でデーモンを切り裂きながらブリザードの中で氷塊になり、ダメージを増加させていた。
ニルデンは、神聖魔法によりデーモンの弱体化をしているようだ。
ジュリアンは、アイテムを使い回復を行い。
ガイは、敵からきた反撃を身をもって防いでいる。
俺のチームはというと、リゼットは二体のドラゴンゾンビを操っている。
ティアは味方のダメージを回復し、クラリーヌは弱ったデーモンに止めの一撃をくれた。
俺もライトニング・ボルトでデーモンを仕留めていく。
フィーナとドラゴンファングの面々はリュナの指示の下、魔法のアイテムを使う。
雷を発生させる杖や、神聖ダメージを与える宝珠など、ありとあらゆるアイテムを使っている。
そうした激しい波状攻撃により、デーモンの八割が一瞬で消し飛んだ。
「いいかげんにしなさい!」
シャーロットの怒号が響くと、闇の波動がブリザードを吹き飛ばす。
「デーモンロード、ナカナカノチカラダ」
精霊王ジンは、それだけ言い残すと姿を消した。
「大方の敵は倒した。
後はデーモンロードと弱った雑魚だけだ。
俺達はデーモンロードを何とかする。
黒騎士とユウキ達は残った雑魚の掃討を頼む」
「俺も手伝います。
フィーナ達は指示どおり残りのデーモンを頼む」
シャーロットに向かって走るカシードを追う。
デーモンロードを封印できるのは俺だけだ。
それに、リゼットを泣かせた奴を、許す訳にはいかない。
「良くもやってくれたわね」
「本当にやるのはこれからさ」
シャーロットの苛立った声に、嘲笑の笑みを浮かべなるカシード。
「余裕ぶってられるのは今のうちだけよ。
デーモンロードの力を手に入れたあたしに勝てるかしら?」
「ああ、それだけの準備はしたからな。行くぞ!」
俺達は一斉に攻撃を加える。
シャーロットは、魔法のシールドを張りつつ攻撃魔法で俺達を迎え討つ。
それからしばらくは、激しい攻防が行われた。
俺達の攻撃をことごとく防御し回避するシャーロット。
カシード達は、ありとあらゆる手段を講じたが、致命的なダメージを与えるには至らなかった。
「よく粘るものね」
シャーロットは、余裕を見せている。
「まだまだこれからさ。
ピンチなのはお主の方じゃないのか?」
その声に答えるように、残っていたデーモンを倒した黒騎士とフィーナ達が戦闘に加わった。
「お仲間のデーモンもいなくなり、こっちは戦力増強だ」
「ふん、戦力が増えたって言っても、デーモンとの戦いで力尽きる寸前じゃない」
彼女の言う通りだ。
残ったデーモンも予想外に粘り強く、黒騎士達は疲弊していた。
彼らが加わったとしても事態が好転するようには思えない。
なぜ、こうも倒せないんだ?
強いわけではない、ただ防御力がやたらと高い。
それに、どうして俺はこんなにイライラしているのんだろう?
ふとリゼットと目が合う。
そうだ、シャーロットにリゼットは悲惨な目に合わされた。
リゼットを泣かせた!
ゆるせるはずがない!!
許せない?
なんだろう?
何かを忘れてたような?
そうだ!
夢だ。
夢の中で俺に言ったんだ。
力を貸してやると。
「デーモンロード食欲の王!」
俺が叫ぶと、装備していたサークレットが、周りの光を吸い込むように黒く輝きだした。
『ようやく、ワシの名を呼んだな。よかろう力を貸してやろう』
装備していたサークレットから響くような不思議な声が聞こえると、大きな力が体に流れこむ。
それと共に、黒いオーラの様なものが体から立ち上る。
「おい、何だその力は!」
コレならやれる!
レナルヴェの質問に答えること無く、怒りの心のままに、シャーロットに接近すると一撃を加える。
が、デーモンロードの力が加わった攻撃も魔法のシールドに弾かれた。
「ダメじゃないか!」
『何をやっておるんじゃ。
力押しをすればよいわけじゃないわい。
ワシの戦い方は違うぞ』
食欲の王を怒鳴りつけるても、ゆうゆとしておりむしろ俺に呆れていた。
『見ておれ』
サークレットの闇が更に深くなると、周りの光を吸い込みだした。
その闇によって、シャーロットを覆っていたシールドが粒子となり、サークレットに吸い込まれていく。
『ワシはなんでも食べるぞ。魔法のシールドでもこの通りじゃ』
「すげえ」
『感心しておらんと早く攻撃せんか』
食欲の王の叱咤に、弾かれたようにシャーロットに斬りかかる。
彼女も虚を付かれたが、すぐに魔法を使うと、俺との間に爆発が起こる。
その衝撃で、俺の剣は軌道をそれたが、シャーロットも衝撃で吹き飛ばされた。




