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ゴブリン討伐

 今はゴブリンのいる砦に潜入中だ。

 正面から突破しても良かったのだが砦には、秘密の通路が存在するという情報があったので、隠密行動の練習がてら潜入してみた。


 が、それが失敗だった。


「あまり音を立てないでください。

 あと、行動のタイミングが遅いです」


 潜入という行動で、フィーナの何かを刺激してしまった様だ。

 全属性の魔法が使えて万能だと思ってたが、そういうわけではなかった。

 特に今の装備は、音はうるさいわ、緻密な動作はできないわ、重いから動きも遅いし隠密行動に全く向いてない。

 さっきから怒られっぱなしだ。


 音を立てないように俊敏に動作する。

 俺には不可能だ。


 それに比べてフィーナはすごい。

 隠密スキルが有るのもそうだが、動きに無駄がなく確認も判断も早く、隠れる場所を熟知している。

 今までに、6匹のゴブリンを倒しているが、全てフィーナがやっている。

 音もなく背後から一撃で仕留める動作は芸術的、暗殺者としての腕は一流だ。


「ぼーっとしてないで早く来る!」


 叱咤された俺は、頑張って音を立てないようについていく。

 あーあ、今朝はあんなにかわいかったのに。


 昨日の注文通り、フィーナはベッドにいてくれて起きるとすぐにキスをしてくれた。

 起きてすぐに女性の体温を感じるのは至福だ。

 朝の元気もあって、そのまま愛し合った。

 おかげで、予定より家を出るのが遅くなってしまったのが問題だが、あの幸福感はやめれそうにない。


「今朝のフィーナが可愛かったなーって」

「バカな事を考えてないで、仕事に専念してください」


 ちょっと顔を赤らめているが、それでも教官としての顔は崩さない。

 少し進むと広めの部屋に3匹のゴブリンが居た。


「隠れる場所もないですし、不意打ちは難しそうです」

「気を引ければ行けるか?」

「こちらに気づかなければ2匹は倒せます」

「なら1匹は俺が受け持とう、もちろん気づかれないようにな。

 今からサイコキネシスを使って注意をそらしてみる」

「なるほど、それなら音がして注意がそれた瞬間に相手の背後を取ります」


 俺は、サイコキネシスを使って部屋の奥、俺達とは反対側にある樽を動かす。


「なんだ、なんだ? 樽がひとりでに動いたぞ」

「ネズミでもいるんじゃないか?」


 ゴブリンたちが樽の方を向いた隙にフィーナが音も無く近寄り1匹仕留める。

 2匹めを仕留めようとしたタイミングで、俺はマジックアローと念じた。


 出ない。

 あれ?

 なんで出ないの?


 もう一度念じてみる。

 やっぱり出ない。

 一人でテンパっていると、フィーナはすでに3匹めを倒していた。

 そして、別のゴブリンが入って来ないかドアの影で警戒する。

 安全だと確認してフィーナに近寄った。


「すまない、なぜか魔法が出なかった」

「魔法を発動してから次の魔法を使うには少し時間が必要なようです。

 訓練するとそれも短くなるようですが」

「そうだったのか、これからは気をつける」

「そうしてください。

  知識がない行動は即、死につながります」


 フィーナに怒られてシュンとする。

 正面からバッサバッサと切ったほうが楽しかったな。

 この後も同じように、サイコキネシスで注意を惹きつけて、フィーナが倒すを繰り返した。


「ここが敵の本陣のようですね」


 しばらく探索し、二十匹近くのゴブリンがいる広間にたどり着く。

 装備は様々で、戦士風や魔法使い風、騎士風の奴もいる。


「この数は私ではどうにもならないので、ご主人様の指示に従います」

「わかった」


 出番が無いまま終わらないでよかったと胸をなでおろす。

 数が多いので戦力を分散させないとな。

 まずは、フィーナと自分にアイアンアーマーをかける。

 それから、ウィルオーウィスプを召喚。


「俺は広間の入り口で敵を迎撃するから、俺の横をすり抜けていった奴の始末を頼む」

「わかりました」


 広間の奥の倉庫にある樽をサイコキネシスで動かす。

 サイコキネシスは、重い物は動かせないが範囲はけっこう広い。

 ゴブリンの3分の1が倉庫を見に行った。

 今度は予め召喚しておいたウィルオーウィスプを部屋に突入させて、部屋の奥の方にゴブリンを誘導させる。

 ゴブリンは突然の侵入者に驚きながら空飛ぶ光の玉になんとか攻撃を当てようと剣を振る。

 が、ウィルオーウィスプは浮いているためなかなか攻撃は当たらない。

 魔法のラグが終わったと同時に、マジックアローを叩き込む。

 そして、広間の入り口に陣取ると剣を引き、近くのゴブリンを一刀の元に切り伏せる。

 後はひたすら、剣を振りながらマジックアローを叩き込むだけだ。


 あ、ゴブリンメイジの存在を忘れてた。

 遠くのゴブリンがこちらに向けて火の玉を打ち出してくる。

 多数のゴブリンが俺に群がっているので避けられずに受けてしまう。


「やば」


 しかし、アイアンアーマーのおかげか、ほとんど痛みはなかった。

 お返しにゴブリンメイジにマジックアローを叩き込む。


 ゴブリン単体は弱いが数が多すぎた。

 倒しても倒してもやってくる。

 倉庫に注意を逸らしたゴブリンも戻ってきて更に数が増えてしまった。

 攻撃自体はアイアンアーマーと防具のおかげでダメージは受けないが、マジックミサイルでは複数の敵を倒す事ができない。

 剣を大きく振り回して複数のゴブリンに攻撃するが、戻りが遅いため数で押し寄せるゴブリンに接近されてしまう。

 入り口に陣取っているから正面の相手を何とかすればいいし、背後を取ろうとする敵はフィーナがやっつけてくれる。

 ウィルオーウィスプも敵を引き付けながら少しずつ数を減らしてくれた。

 それでも殲滅するのに時間がかかった。

 ダメージはほとんど受けてないが、攻撃を沢山もらってしまった。

 ちょっと無計画すぎだ。


「うーむ。今回は反省点の多い戦いだったな」

「でも、ほぼ無傷ですよ。

 私もアイアンアーマーのおかげで、ほとんどダメージを受けませんでした」

「しかし、今回は攻撃力の少ないゴブリンだったから良かったものの、もっと強い敵だったら死んでたかもしれない」

「……そうですね」

「俺は一対一では負ける気がしないが、数が多い敵には弱いらしい。

 広範囲魔法や召喚魔法を強化したほうがいいかもしれないな、後はパーティーメンバーの増強か」

「ご主人様なら複数の敵を倒す呪文でバッタバッタですよ!」

「とりあえず早く街に戻ろう。

 明日までに魔法の増強はしておいたほうが良さそうだ」


 すぐ街に戻ると、冒険者ギルドで賞金の金貨1枚と銀76枚を受け取り、魔法屋に行った。

 広範囲魔法は中級以上になるらしい。

 店においてあった、一直線上の敵を倒す中級破壊魔法ライトニング・ボルトと、複数のファイアーリザードを召喚する中級召喚魔法サモン・ファイアーリザード、広範囲で回復が出来る中級回復魔法サークル・ヒーリングの3つの魔法を金貨30枚と、銀貨45枚で購入した。


 次は武器屋にいく。

 フィーナは防御に不安があるため後衛として活動してもらったほうがいいと思った。


「フィーナは弓は使えるのか?」

「一応基本的な訓練は受けています」

「なら、やはり弓も買うか」


 銀の弓と矢を金貨3枚と銀貨89枚で買った。


――――――――――――――――

ヤスナガ ユウキ 23歳 男 LV 50

ジョブ ヒーロー

HP 343

MP 332

スキル マジックアロー ヒール ウィルオーウィスプ アイアンアーマー サイコキネシス ライトニング・ボルト サモン・ファイアーリザード サークル・ヒーリング

装備 両手剣(名前不明) 鎧(名前不明) 銀の兜 銀のブーツ 銀のガントレット


フィーナ 17歳 女 LV 20

ジョブ シーフ

HP 129

MP 39

スキル 罠解除 カギ解除 隠密 バックスタブ

装備 ショートソード バックラー 銀の弓 革の鎧 革の帽子 革の靴 革の小手 ダガー×2 そよかぜの指輪 硬化の指輪

――――――――――――――――


 宿屋に戻ると食事もそこそこに部屋に行く。

 そして、装備を外すとベッドにふて寝した。


 あー、今日は失敗だった。

 もっとうまくいくと思ったのに。

 結局最後は力技だったし、剣技がうまくて魔法が強力でも使い方が下手なら宝の持ち腐れだ。

 こっちの世界に来て最強になったと思ったけど、全然そんなことなかった。

 もうちょっと慎重にならないと本気で死ぬかもしれない。

 そう考えると明日のアンデット討伐も危ない気がしてきた。

 よくあるファンタジーRPGならアンデットは、毒やらマヒ攻撃、レベルドレインなんかの強力な能力を持っている。

 気をつけないとマジでやばいな。

 もともと、俺は冒険物が好きなだけでゲームは得意じゃないしなー。


 そんなことを鬱々と考えていると。

 フィーナがベッドに入ってきて背中から抱きしめてくる。


「俺がこの世界の知識が少ないことを痛感したよ。

 明日のアンデット討伐でうまくいく自信がなくなってきた……」

「ご主人様なら大丈夫ですよ。

 他の冒険者の見学のつもりでやりましょう」

「そうだな。俺たちは前に出ないようにして、経験のある冒険者のフォローに回るか」


 フィーナの方に体を向きなおす。

 キスしたい気持ちもあるが、俺ごときがしていいのかというネガティブな考えが思考を支配する。

 すると、彼女の方からキスしてきた。


「今日は特別に体を拭かせてあげてもいいですよ」

「えっ? でも、恥ずかしいでしょ?」

「それでご主人様が元気になるなら大丈夫です」


 顔を赤らめながらも優しく微笑んだ。

 フィーナはやさしい。

 フィーナのためにも今回の失敗は糧にしよう。

 もっと慎重に知識を手に入れて強くなるんだ。


「体は拭きたいけど、なんかズルい気がするから今日も我慢するよ」


 その後、二人とも体を拭き装備の手入れをしてベッドに入った。

 多少落ち込んでも、フィーナと一緒のベットに入ると俺の一部は元気になってしまう。

 むしろ、落ち込んだ時のほうが元気な気がする。

 獣のように愛しあうと、陰鬱な考えがよぎる前に眠りへと落ちていった。


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