魔法
朝起きるとベッドにフィーナがいない。
寂しさを覚えつつ、横を向くと装備の手入れをしていた。
「フィーナ、キスして」
寝転んでいる俺の近くに来て軽いキスをする。
「朝は勝手にベッドから出ないで、それから朝起きたらキスすること」
「わかりました。ご主人様」
やさしく笑うと、頭をなでてくれた。
「装備のお手入れは夜のうちにやります。
本当はそのほうがいいですし」
「俺も手伝うよ」
「大丈夫です。私に任せてください」
手入れを終えると街を散策する。
「昨日言ったとおり、まずは装備屋、それからスキル。
今日は魔法がいいかな、最後に冒険ギルドで軽い仕事を受けて、魔法の威力を試してみる」
今日の予定を言うと、フィーナが道案内をしてくれた。
大きめの武器屋に行くと、ショートソード、ロングソード、メイス、杖など色々な武器が並んでいる。
「武器は、鉄、鋼、銀、ミスリル、アダマンタイトの順に価格と効果が上がっていきます。
普通に流通しているのは銀の装備までで、ミスリル、アダマンタイトはあまり見かけませんし、売っていても高価です」
フィーナが丁寧に教えてくれる。
「俺は今の剣があるからいいが、フィーナのは鉄のショートソードか?」
「はい」
「銀のショートソードを買うか。金貨3枚だな」
「そんな高級な装備をいただく訳にはまいりません」
フィーナは驚いた表情で、両手を顔の前で左右に振った。
「安い装備で命を落とすぐらいなら良い物が欲しい。
今のところお金には困ってないからな」
「ありがとうございます」
手元には今、金貨55枚、銀貨84枚、銅貨97枚で、通貨単位のゴールドに換算すると55万8497ゴールド持っている。
店で一番いい武器の銀のショートソードが金貨3枚だと、店売りの装備品を整えるには十分だ。
銀のショートソードを購入すると、次は防具屋に行く。
防具は、兜、鎧、小手、靴があるようだ。
「防具も素材のランクは武器と変わりません。
ただ、一番下に革というのがあります」
「いま装備している防具だな。では銀の防具類を買うか」
「銀の装備を買うのは、ご主人様だけでいいです」
「遠慮はするな、フィーナに死なれても困る」
俺が強く言うと、遠慮がちにフィーナが答えた。
「いえ……。金属ですと動きが鈍くなりますし、音が出てしまって隠密行動ができなくなってしまいます」
「そうか、フィーナはシーフだったな。すまない」
「私を気遣ってのことですので、気にしないでください」
俺の装備、銀のヘルム、銀のブーツ、銀のガントレットを買うと金貨7枚と銀貨34枚を支払った。
次は魔法屋にいく。
魔法屋には巻物が積んである。
「魔法のランクは、初級魔法、中級魔法、上級魔法があります。
初級であればすべての属性が揃ってますが、中級と上級は欲しい物があるとは限りません」
「価格は初級で金貨1枚、中級で10枚、上級で100枚程度か。魔法は高いな」
店に置いてある巻物の値段を確認する。
「はい。魔法などのスキルは扱える人が少ないので、値段が高いですね。
魔法の属性は、破壊、回復、召喚、付与、変性ですね」
「おぉ、召喚なんかもあるのか」
俺の中二病心に火がつきはしゃいでしまう。
フィーナは子供を見るような優しい目で俺を見ている。
ちょっと恥ずかしい。
「メイジにも得意な魔法、不得意な魔法があるようです」
「そうか。すべての魔法を完璧に使いこなすのは無理なのか。
得意な魔法ってどうやってわかるんだ?」
「使ってみないとわからないみたいですが、不得意でも練習さえすれば克服は出来るようです」
「得手不得手は才能。
それからは練習次第ということか。
どれが得意かわからないし、初級魔法を一通り買ってみるか」
破壊魔法は、威力は低いが命中率が高いマジックアロー。
回復魔法は、HPの回復ができるヒール。
召喚魔法は、光の精霊を召喚するウィルオーウィスプ。装備品の召喚もあるようだが俺には必要なさそうだ。
付与魔法は、防御力の上がるアイアンアーマー。フィーナが革装備しかできないので必要だろう。
変性魔法は、他に分類されないものらしく色々な種類があって迷ったが、手を触れないで物を動かせるサイコキネシスを買った。
初級魔法5つで合計5金貨と銀貨4枚だ。
「これはどうやって覚えたらいいんだ?」
「巻物に魔法が込めてありますので、開けば覚えられます」
マジックアローの巻物を開いてみる。
巻物は光ると、燃え尽きるように消滅した。
「ふむ、これで使えるようになったのか。
早く使いたいから、すぐに冒険者ギルドで仕事を探そう」
一通り魔法を覚えると装備を整えた。
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ヤスナガ ユウキ 23歳 男 LV 50
ジョブ ヒーロー
HP 343
MP 332
スキル マジックアロー ヒール ウィルオーウィスプ アイアンアーマー サイコキネシス
装備 両手剣(名前不明) 鎧(名前不明) 銀のヘルム 銀のブーツ 銀のガントレット
フィーナ 17歳 女 LV 19
ジョブ シーフ
HP 121
MP 36
スキル 罠解除 カギ解除 隠密 バックスタブ
装備 ショートソード バックラー 革の鎧 革の帽子 革の靴 革の小手 ダガー×2 そよかぜの指輪 硬化の指輪
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俊敏さが上がるそよかぜの指輪と防御力が上がる硬化の指輪は、俺が使うより意味がありそうなのでフィーナに渡す。
フィーナは顔を赤らめて受け取ると左手の薬指と右手の薬指に指輪をつけた。
こっちの世界の風習は分からないが何か勘違いされた気がする。
手のひらをくるくると回しながら指輪を眺めてる。
フィーナよ、それは盗賊団から奪ったものだぞ……。
後でちゃんとしたアクセサリーの指輪を買ってやろう。
冒険者ギルドに行くと依頼が貼ってある掲示板を見る。
「魔物退治、物の運搬、護衛いろいろあるな。
魔法の効果も見たいから、モンスターのいるダンジョンに入る依頼がいいな」
「それなら、このアンデット退治の依頼なんてどうでしょう?
アンデットならヒールでダメージが与えられますし。
強さは、私でも倒せる程度です」
「なるほど。場所も郊外の墓地だし近くていいな」
早速、依頼を受ける。
墓地の地下でソンビやスケルトンが発生してしまって困っているらしい。
お昼をとった後に、郊外の墓地まで行く。
墓守に案内してもらい説明を受けた。
「どれだけの数がいるかまではわかりませんが、地下はそこまで広くないので、見回るだけなら1時間程度で終わります」
「わかった。ありがとう」
墓守を残して二人で地下に潜っていく。
奥の方は、暗くて全く見えない。
「とりあえず明かりか。
ウィルオーウィスプを出せば明かりになるよな?
どうやって使うんだ?」
「頭のなかでウィルオーウィスプと念じれば出るはずです」
ウィルオーウィスプと念じてみる。
バスケットボールぐらいの大きさの光の玉が現れるとふよふよと浮いている。
洞窟の奥まで照らすような強い光のためランタンやトーチはいらなそうだ。
冒険者カードを見るとMPが7減っていて、動くと俺についてきてくれた。
「すごい! 魔法は術者の魔力に比例して強くなるのですが、こんな大きなのは見たことありません。
私が使ったとしたら、小指程度の光の玉が出てすぐに消えてしまうはずです」
「得意なのは、召喚魔法なのかな?」
次は、アイアンアーマーをフィーナにかけてみる。
フィーナの体が緑色の光を放つ。
「これもすごいですね。
効果の強さは光の強さでわかるのですが、かなり強力そうです」
「うーん。付与魔法も効果が高いと。
よし、モンスター退治をはじめるか」
少し奥に行くとゾンビが1匹ゆっくりと歩いていた。
試しに、マジックアローと念じてみる。
10本の光の矢が現れると、一斉にゾンビ向かっていく。
明らかに必要以上のダメージを与えるとソンビは肉片と化した。
「すごい威力だな」
「出現する本数も魔力に比例します。
威力も多分そうです。
ご主人様はどの属性の魔法でも使いこなせるのですね」
「得意不得意がわからんな」
更に奥に進むとスケルトンが2体歩いている。
今度はヒールを唱える。
スケルトンが灰になった。
もう一体もやってみる。
同じく灰になる。
「うーむ、これも強力な気がするな」
「さすがご主人様です」
もう少し進むと、またゾンビがいた。
「召喚した物は戦闘にも使えます。
と言うか普通は戦闘に使います」
フィーナに言われたので、ウィルオーウィスプに命令してみる。
ウィルオーウィスプは、ゾンビに体当たりをした。
ソンビは消滅した。
「跡形もなく消え去ったぞ」
「アンデットは光に弱いので相性が良かったのかもしれませんね。
それにしても威力が高すぎですが」
こんな調子で、2時間も経たずに地下を一周してアンデットを殲滅した。
MPを確認したら200以上残っている。
「とりあえず、一通りの魔法が使えることがわかったな」
「普通は得手不得手があるはずなんですが、ご主人様は何をやってもすごいのですね」
墓守に報告したら早いと驚かれた。
冒険者ギルドに銀貨14枚をもらう。
アンデット1体に対して銀貨1枚の報酬だ。
低レベル向けの依頼だとこんなもんなんだろう。
「次の依頼だけ受けておくか。
今度はもっと歯ごたえがあるやつがいいな」
「これなんかとうでしょうか?
ゴブリンの集団が使われてない砦に居を構えてしまったそうです。
普通のゴブリンと違って、レベルが高く魔法を使うゴブリンもいるとか。
通常ならある程度のレベルの冒険者がパーティーを組まないと危険な依頼ですね。
ご主人様なら一人でも十分だと思います」
「わかった。それにしよう。ん? これは何だ?」
『急募!アンデット多数発生!大量募集!』
「アンデットが山の中に大量に現れたから、複数の冒険者を募集しているみたいですね」
「ふむ。他の冒険者の戦いっぷりも見てみたいから調度いいな。
えーと、2日後の早朝に冒険者ギルドの前か。
これも受けよう」
依頼を受けてギルドを出る。
まだ日が暮れるには時間がありそうだった。
「まだ日が高いし、服でも買いに行くか。
俺もお前も2着しかないしな。
ついでに街に出られるような洋服も欲しいな。
いつも鎧を着ていては肩がこる」
「洋服ですか?
私はいつもの革鎧のほうが落ち着きますが」
フィーナは戦闘以外は疎いみたいだな。
とりあえず、適当な服屋に入ってみる。
「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」
店員らしい女性が出迎えてくれた。
なかなかの胸を持っている美人だ。
などと考えていると、フィーナが白い目で見てくる。
「えーと、男物と女物の肌着と下着を2着ずつ見繕ってくれ、あとこの子にあう洋服もお願いする」
自分用の洋服は、サイズが合いそうなズボンとシャツを適当に選んだ。
自分の着る服には余り興味は無い。
「お客様のような黒髪の女性には、白のワンピースなどいかがでしょうか?
黒髪が映えて可愛らしいと思いますよ?」
「ふむ、なかなか良さそうだ。じゃあ、これにしよう」
「え、ご主人様、私はお洋服なんていらないです」
「そう言うな。では、会計をお願いする」
銀貨7枚と銅貨20枚を支払う。
宿屋に戻るとちょっと早めの夕食を済ますと、お湯をもらい部屋にもどり装備品を外す。
今日こそ体を拭かせてもらおう。
「さて、洋服を試着して欲しいので体を拭こう」
「うっ」
フィーナが、困った顔でもじもじとしている。
「体を拭かせてあげたら、昨日みたいなことはしない?」
「へ? 昨日みたいなこと?」
よくわからず素っ頓狂な声を出してしまう。
「その……ベッドの上で……ずっと……舐めてたから……」
そう言って涙目になりながら顔を赤くしている。
昨日焦らしまくったのが辛かったらしい。
「調子に乗ってやり過ぎた。
体を拭かせてくれなくても、あんなことは二度としない」
やり過ぎたことを素直に謝る。
「今日は体を拭くのも諦める」
体を拭かせてもらえないのは残念だが、自分のミスなので仕方がない。
無理やりというのは俺のポリシーに反するしな。
仕方ないので、ベッドに潜って壁のほうを向く。
「見るのもダメですからね」
フィーナきつい口調で言って、ゴソゴソと服を脱ぎ体を拭き始めた。
うーむ、失敗した。
体を拭くのが一歩遠ざかってしまった感じだ
「着替えましたが、……この服装は恥ずかしいです」
見るとワンピースを着て恥ずかしげに、モジモジとしながら立っていた。
店員の言ったとおり、黒髪が純白のワンピースが似合っている。
かわいい。
かわいすぎる。
「なんかスースーするし、こんな服は、はじめて着ました」
そうか、盗賊団にずっといたからズボンしか履いたことがなかったのか。
「とっても似合っているよ。
今度その服で街に買い物に行こう」
「やだ! こんな格好で人前に出たら恥ずかしくて死んじゃう」
普通の女の子はそんな格好で街を歩いているわけですが。
これは萌える。
普段は革鎧を着ている女の子が、ワンピースを着ただけでここまで変わるのか。
ギャップ萌えというやつか。
ていうか、皮鎧よりワンピースのほうが、よっぽど似合っている。
これは、かわいがらずにいられない。
フィーナをベッドの横に座らせる。
キスをして、胸を柔らかく愛撫する。
肌の上に直接ワンピースを着ているので、胸の感触がほぼダイレクトに伝わってくる。
なんというか、服の上から伝わってくる、この感触がたまらない。
太ももを触る。
服の裾から見える白い足もたまらない。
戦闘で鍛えた足は程よく脂肪がついており、柔らかくかつ引き締まっている、肌も綺麗だ。
服をめくりながら、ももの付け根を弄る。
ん?
下着はいてない?
そういえば、今まで鎧用のインナーズボンしか着てなかったら、パンツを履いてなかった気がする。
胸も大きい割にブラジャーとかはつけてない。
これについては、この世界に無いのかもと思っていたが、盗賊団の男の中で育ったからそういう知識が無いのかもしれない。
今度、服屋で探してみよう。
そりゃ、下着も履かないでワンピースを着れば、恥ずかしいのは当たり前だ。
ノーパン恥辱プレイもAVで見るならいいが、フィーナの恥ずかしい姿を他人に見せたくはない。
「ワンピースの下には、下着を履くって知ってる?」
「下着?」
不思議そうに顔をかしげる
「あれのこと」
さっき買ってきたパンツを指差す。
「え?」
「じゃないと、スカートがめくれると見えちゃうでしょ」
そう言いながら、スカートの裾をめくり上げる。
「キャ」
フィーナは俺を突き飛ばして、スカートの裾を抑えた。
「やだ……。私、恥ずかしい」
「大丈夫、大丈夫。フィーナが知らないことは、俺が教えてあげるから」
キスしながらベッドに押し倒した。