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休日のひととき(後編)

 三人をでるのが終わり寝室を出ると、居間が見違えるように華やかになっていた。

 テーブルには真っ白なクロスが敷いてあり、棚には花瓶に花が添えてある。

 雑多においてあった物も、分類別に小箱に入り整理されていた。


「これは、ティアーヌがやったのか?」

「そうだにゃ。大したことは出来なかったけど仕方ないにゃ」

「そんなことは無いぞ。部屋が明るくなったように感じるな」 


 無骨で薄暗かった部屋に、光が差し込んだような印象を覚える。


「これは買ったのか?」


 木で出来た椅子の背もたれには、ピンク色のカバーがしてあった。

 触ってみると、綿が詰めてあるようでふかふかしている。


「それは手作りだにゃ」

「ティアーヌは本当に何でもできるんだな」

「えへへへへ」


 赤らめた頬を手の平で覆うと体をくねらせる。


 様変わりした部屋を楽しく見回す。

 そして、玄関に目が行き着くと、不思議な物が置いてあるのに気がついた。


「あれも……ティアーヌが置いたのか?」


 恐る恐る聞いてみる。

 玄関のドアの脇には、50cmぐらいのなんとも奇妙な置物があった。

 狛犬の様にも見えるが、とても不格好で犬の格好をした土偶のようにも見えた。


「あれはリゼットにゃ」


 まゆをひそませて小声でつぶやく。


「護衛用のゴーレムよ」


 リゼットは誇らしげに胸を張って高らかに宣言した。


「ゴーレム? 危険じゃないのか?」

「ええ、ちゃんとあたし達は認識するし、許可すれば他人を部屋に入れることも問題無いわ」

「私がいるから必要ないって言ったんですけど」

「必要ないにゃ、可愛い部屋が台無しだにゃ」


 どうやら二人には不評らしい。

 理由は違うようだが……。


「フィーナがいない時もあるでしょ?

 留守にする時もあるし。

 まあ、安い魔法石しか買えなかったから、強くはないけど便利よ。

 侵入者の姿を記憶できるし、敵をすぐに発見してくれるわ」


 なるほど、番犬というわけか。

 近づいて眺める。

 頼もしいが、見れば見るほど不気味だ。

 こんなのに襲われたら、おしっこちびっちゃうかもしれない。


「まあ、ちょっと不格好になっちゃったけど……」


 ヘンテコな外見なのは認識してるらしい。

 リゼットは不器用なのかもしれない。

 そう考えたら、とたんに可笑しくなって笑いが漏れてしまった。


「くっくっくっ」

「ちょっと! 笑うことないでしょ!」

「リゼットって不器用だったんだな」

「そりゃ、フィーナやティアーヌみたい器用じゃないけど……」

「いや、完璧だと思ってたリゼットに弱点があって安心してるんだ。

 そうかー。不器用だったのかー」


「あっ、当たり前じゃない。

 人には得手不得手っていうのがあるのよ」


 ふてくされて腕を組むとそっぽを向いてしまった。

 それでも、抑え切れずに笑っていると、顔を真っ赤にして太ももを軽く叩いてきた。


「笑うな」

「ごめん、ごめん。さて、今度は俺の装備がどうなったか見ようかな」


 そう言うと、フィーナは嬉しそうに、空き部屋の一つに案内してくれた。

 ドアを開けてフィーナ以外の全員が固まる。

 当のフィーナは胸を貼って誇らしそうだ。


 そこには、羽やら花やらがゴテゴテと過剰に飾り付けられた俺の装備があった。


「これをフィーナがやったのか?」


 俺の顔はさぞ引きつっていることだろう。

 そんなことはお構いなしに、フィーナは嬉しそうに解説する。


「ご主人様は英雄になる人で、剣と鎧は立派なのに、他の装備がかっこ悪かったのでパワーアップしてみました」


 どの辺がパワーアップなのか疑問はあるが、とりあえずこれを装備すれば注目の的なのは間違いないだろう。

 悪い意味で。


「え? うん、ああ」


 『カッコ悪い』と、はっきり言うべきか迷ってしまう。

 せっかく、フィーナが頑張って飾り付けてくれたし、ひどいことを言って傷つけたくはない。

 しかし、これを装備するのも遠慮したい。


 そんな俺を見て、ティアーヌが助け舟を出してくれた。


「かっこいいにゃー。けど、やさしいご主人様には、もっと落ち着いた装飾の方が良いと思うにゃ」


 良いぞティアーヌ!


「そんなに派手にしちゃうと、折角のご主人様のいいところが隠れちゃうわよ」


 ナイス、リゼット!


「派手すぎですか? ティアーヌは、どうしたら良いと思いますか?」


 どうやら、ティアーヌのセンスは認めているらしい。

 まあ、服のコーディネートをしてもらったぐらいだし、外見に興味の薄いフィーナからすればティアーヌは頼れるのだろう。


 その後は、ティアーヌがあれこれと指示をして、俺の装備は剣と鎧に合わせた青色に染められた。

 フィーナはセンスが無いだけで、手先は器用なので、綺麗に色を塗ってくれる。


「うむ、なかなかいいんじゃないか?」 

 

 試しに装備してみる。

 実に勇者っぽい出で立ちだ。


「かっこいいです」 

「いいわね」

「英雄にふさわしいにゃ」


 後でティアーヌに礼を言っておこう。

 俺が笑いものになるのを救ってくれたのだから。


……


……


「恥ずかしいにゃー」


 珍しいことにティアーヌが、もじもじしながら大事な部分を隠そうと必死になっている。

 今は、お風呂での約束通り体を拭かしてもらっている。

 ただし、普通に拭いてるのではない。


 三人同時に、だ!


 つまり三人とも裸で並んでいる。

 順繰りに少しづつ拭くのだ。

 一人を拭いてる間は裸で待機してもらっている。


「ご主人様のヘンタイ度が上がってます~」


 フィーナは涙目で腰が引けた状態になりながら、胸と下腹部を一生懸命隠している。

 すぐにでも、しゃがみそうな雰囲気だ。


 今はリゼットの体を拭かしてもらっている。

 拭いてもらっている最中の方がマシのようで、恥ずかしげではあるが余裕がある。

 さっきフィーナを拭いてる最中は、恨めしそうな目を向けられてた。


 まあ、その目は俺を逆に萌えさせていたわけだが。


「ご主人様、一人づつ拭け良いのではないですか?」


 フィーナの震えた声が聞こえてくる。


「それではダメだ。俺は三人とも平等に愛したいのでな」


 なんてことを言ってみる。

 もちろん言い訳だ。


「あたし達の恥ずかしがる姿が好きなんでしょ?」


 リゼットが冷たく言い放つが、今の俺にはまったく効かない。


「いやいや、純粋な気持ちだよ。

 君達には優劣を付けたくない。

 だから少しづつ平等に拭いてるんだ」


 俺は、やや演技がかった口調で言うと、リゼットが諦め顔でため息をついた。


「ご主人様はいつもはやさしいけど、エッチなことでは意地悪だにゃー」


 普段は元気に立っているティアーヌの耳と尻尾も悲しげに垂れ下がっている。

 ちょっとやり過ぎかもしれない。


「そんなに言うならもう許してやろう。寝間着を着ていいぞ」


 フィーナは、すぐにしゃがみこんでしまった。

 ティアーヌは、素早い動きで服を着こむ。

 リゼットは、ホッとした表情で俺にしがみついてきた。


 さすがにやり過ぎだろうか?

 どうも、エロいことになると歯止めが効かなくなる。

 しばらくは自重しよう。


……


 と誓ったのもつかの間、ベッドの上で三人を相手にしたら結局意地悪なことをしてしまった……。

 まあ、ベッドの上の意地悪は、三人とも喜んでいるので良いか。


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