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┗外伝:フィーナの気持ち

--- フィーナの視点 ---


 気づかなくてよかった。


 ご主人様の寝顔を見ながら、心の中で安堵する。


 『ご主人様を守りたい』


 その言葉に嘘偽りはない。

 でも、すべてを話したわけでもない。


 ご主人様は純粋な人。

 このモンスターが蔓延はびこり、賞金首がたくさんいる殺伐とした世界の中で、まるで赤子の様な純粋さを持っている。

 私はそれを守りたい。



 7歳の頃、盗賊団に家族を殺された。

 両親に隠れていろと言われ隠れた。

 盗賊団には見つかってなかった。

 しかし、煮えたぎった心は、隙のあった団長を見て我慢が出来なかった。

 両親のかたき討ちで団長を刺した。

 傷は浅く団長にダメージはほとんど無かった。

 でも、私の殺意と不意打ちを成功させた動きの良さを痛く気に入り、無理やり団員にさせられた。


 それから、ずっと団長を殺そうとしてきた。

 団長は私の殺意を喜々として受け入れ、俺を殺せたら一人前だと笑った。

 数えきれないほど、正面から戦いを挑み、ねじ伏せられ。

 数えきれないほど、寝込みを襲い、返り討ちに合い。

 自分の力では無理かもしれないと、挫けそうになる心を無理やり押し殺し自分を鍛えた。


 童話に出てくる様な王子様が私を救ってくれる。

 甘い夢を見た時もあった。

 そんな人が現れたら自分のすべてを捧げても良い。

 本気でそう考えた。

 でも、子供のような願いが現実になるほど世界は甘くないことも知っていた。


 しかし、実際に現れた。

 蒼い鎧を来た物語の勇者の様に強く純粋な人。



 ご主人様は捕まえた私の縄をすぐに解いてくれた。

 私は感謝していたしすべてを捧げるつもりでいた。

 だから、逃げ出す気持ちはなかったが、逃げだそうと思えばいつでも出来た。

 団長と戦っていた時はずごく強かったし、返り血を浴びた姿に恐怖もした。

 でも、二人きりになったら、とても隙だらけだし、簡単に自分の心をさらけ出してた。

 私は所有物なんだから、気持ちなんて気にせず襲いかかるのが普通だ。

 なのに、まるで気になる女の子を前にした男の子の様にいじらしい態度だった。

 ご主人様は、反応を伺いながら、どうにかエッチなことが出来ないか試していた。

 私も初めてだったから、ドキドキしてわけがわからなくなってたけど、その純粋な態度があまりにかわいらしかった。

 だから、させてあげたいなんて事まで思ってしまった。

 している時も、ご主人様は自分のことより私の体を気遣って、気持よくさせようと必死になってた。

 終わった後も、私に警戒心など微塵も出さずに寝てしまった。


 よだれを垂らし寝言を言うご主人様は本当にかわいかった。

 今でもご主人様の寝顔を見るのは楽しみのひとつ。


 私が悪意を持った女盗賊だったら、ご主人様は死んでいた。

 そんな隙だらけのご主人様を、私が守らなくちゃいけない。

 その時に強く思った。


 盗賊団の賞金を受け取った後も、大金を持ってるにもかかわらず、全く警戒していなかった。

 私はスリに盗まれない様に警戒し、撃退していたから問題なかったが、私がいなかったらご主人様は気づくことなく大金を盗まれてたと思う。

 私は盗賊暮らしが長く、襲撃されるなんて当たり前だから寝ている時でも警戒を怠ることがない。

 ご主人様と一緒に寝てれば、暗殺者が来てもすぐに反応できる自信がある。

 自分の磨いてきた力が、ご主人様を影から守る為に鍛えられてきたのだと確信できた。


 リゼットもティアーヌもご主人様のそんな純粋な心に惹かれている。

 それどころか、出会った人たち全員がそうなんだと思う。


 でも、ご主人様が自分が隙だらけである事、この世界では純粋すぎる事。

 それに気づいてしまったら、純粋さが損なわれるのではないか。

 それが私は怖い。

 だからご主人様には気づかないように、私が影から守る。


 それこそが私の使命であり願いだ。


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