疑念
空き家に入ると女盗賊の縄を解いてやる。
「ありがとうございます」
女盗賊が礼儀よく頭を下げると、さらさらの黒髪がふわりと舞う。
「恨まれるならわかるが、礼を言われる記憶はないのだが?」
「私は盗賊団に捕まっていて、無理やり協力させられてたんです。
倒していただいたおかげで開放されました」
捕まっていた?
性奴隷にされてたんじゃないだろうな?
ちょっと、やる気がなくなってきたぞ。
「しかし、盗賊団の一員だったというのは事実だ。俺の所有物であるのは変わらないぞ?」
「はい、それは大丈夫です。むしろ助けていただいたので、ご主人様のお力になりたいです」
「まて、ご主人様とはなんだ?」
「所有者の事は、ご主人様と呼ぶのが普通だと聞きました」
そうなのか。
まあ、悪い気はしない。
「まあいい、とりあえず座れ」
丸テーブルの奥の椅子に座らせ、向かい側に座る。
「俺の名前はユウキだ。お前の名前はなんと言う?」
「フィーナです」
「いい名前だな。フィーナは盗賊なのだから、そこそこ強いのだろう?」
「盗賊団の中では強かったです」
「ならば、仲間になってもらいたい。俺はこの国に来たばかりだし一人なので、一緒に冒険をしてくれる人がいると心強い」
一人では冒険するのは難しいだろうし、盗賊ならば罠の解除とかいろいろ役に立つだろう。
なにより、女性がパーティーに入れば毎日のように夜の相手をしてもらう事が出来る。
性奴隷だったのが引っかかるが。
「はい、ぜひ協力させてください」
「うむ。冷めてしまったが食事を取るといい」
彼女は小さく頷くと食事を取り始めた。
食事をしている姿を眺める。
目も髪も黒く、髪は肩に掛かる程度の長さに適当に切られている。
鼻筋は通っていて、目も大きめだ。
見れば見るほど、かわいいのがわかる。
顔や体が土埃で汚れてしまっているのが、勿体無く感じる。
性奴隷だったのも勿体無い。
「あの……。なにかついてますか?」
「いや、かわいい顔をしているので、つ見とれてしまった」
あ、つい本音が。
「私なんてかわいくないです」
消え入るような声で言うと、顔を赤らめてうつむいてしまう。
性奴隷にされてたかと思ったが、実は純粋なのか?
「いやすまない。先ほどの言葉は忘れてくれ」
俺も気恥ずかしくなり、目をそらして頭をかく。
食事をしている音だけが無言の家に響き渡る。
これからどうしようかと考えていると食事が終わった。
「さて、泥まみれだし体を洗うか」
俺はわざとらしく言うと、お湯の入った大きめの桶のところまで行く。
どうやって行為に持っていくか悩んだがあまりいい手が思いつかない。
だから直球で行くことにした。
「お前を洗うからこっちへこい」
断られたらどうしよう。
ドキドキしながら待っていると、意を決した顔をして俺のそばまで来てくれた。
そして、自ら服を脱ぎだした。
どうやら俺がしたいことを理解してくれたらしい。
上着を脱ぐとたわわに実った果実が2つぷるるんと出てきた。
おおきい!
服の上からでも大きいと感じていたが、実際の物を見ると予想より大きかった。
サイズで言えばDカップ、いやEカップはあるのではないだろうか。
俺はあまりの大きさに目を見開いて見つめてしまう。
「あの……。あんまり見つめられると恥ずかしいです」
俺の視線を遮るように、両手で胸を隠された。
恥ずかしがる顔もかわいいな。
顔だけじゃなくて、恥ずかしがる仕草もかわいい。
これだけ恥ずかしがるということは、性奴隷ではなかったのか?
ずっと見ていたい気もするが、見ているだけでは始まらない。
彼女も身動きができなくなってしまうだろう。
「すまない」
そう言うと顔を横に逸らした。
目だけは胸に釘付けだが。
俺が向いた方向と逆の方を向いて、胸を隠しながらズボンを脱ぎだした。
くそう。
あくまで俺に見せないつもりか。
いいだろう、どうせ後で存分に見てやるのだ。
ズボンを脱ぐと片手で胸を、片手で下を隠す姿勢をしてこっちを向いた。
まるで、絵画のヴィーナスの様な格好だ。
いや、まさに美の女神と言ってもいい美しさだ。
今は泥だらけだが綺麗に磨けば宝石のごとく、その美しさは光り輝くだろう。
やばい。
あまりの美しさにポエマーになってしまった。
俺はかがむと、桶と一緒に置いてあったタオルにお湯をつけて絞る。
「まずはこれで顔を拭くがいい」
そう言ってタオルを渡す。
顔を拭くには両手を使う。
そうすれば、体を手で隠すことはできないはずだ。
しかも、顔を隠すから俺の視線を見られる心配もない。
顔を拭いている間は見放題だ。
ナイス俺。
しかし、彼女は手で隠したまま横を向いてしゃがむと体育ずわり様な格好になった。
そして、タオルを受け取ると顔をふき出した。
くそう、なんて固いガードだ。
あくまでも見せないつもりか。
しばらく拭くとタオルを返してきた。
「拭けました」
顔を見ると、まだ泥が残っていた。
「まだ泥がついているな」
顔の細かいところまで、丁寧に拭きとってやる。
拭くときには目をつぶっているが、邪な思いは抱かなかった。
せっかくのきれいな顔に泥が付いているのが許せなかったからだ。
「拭けたぞ」
目を開けると、俺の目をまっすぐ見つめる。
「やっぱり、ちゃんと拭くとよりかわいくなるな。……あ」
かわいいという言葉を聞くと顔を赤くして、膝に顔をうずめてしまった。
「体を拭くぞ」
思わず出てしまった言葉に気恥ずかしくなりながらごまかすように言う。
もちろん、拭くというのは体に触るための口実だ。
「ご主人様に拭いてもらうわけには行きません」
彼女はしばらく考えると突然そんなことを言い出した。
ご主人様と言ってくれるのは嬉しいが、俺が拭きたくて拭くんだから邪魔をしないでいただきたい。
「いや、俺が拭こう」
「ご主人様に拭いてもらうわけには行きません!」
さっきより強い口調だ。
強く言われると無理には言いにくい。
「自分で拭けますので、ご主人様は椅子に座っていてください」
「いやしかし、お前が逃げ出すとも限らないし……」
「逃げたしたりしません!」
さっきの話が本当なら逃げる理由はないだろう。
裸を見るのであれば、彼女の座っていた奥の席に座るという手段もあるが、いかにも見ますという感じで不自然か。
仕方なく、元いた席に座り壁のほうの見つめる。
俺の背中側にいるため顔を横に向けて覗くというのも難しい。
今回の夢はいつもと違う気がする。
いつもならば、すんなりと行為にいける。
しかし今回は違う。
現実の女性としての振る舞いをしている気がする。
女性と付き合ったことのないから、現実の女性のというのを知らないが。
「拭き終わりました」
真っ白い綺麗な服を着て明るい笑顔で立っていた。
服は村長が用意してくれたようだ。
「俺も体を拭くか……」
裸を見れなかったのが残念だ。
うなだれながら桶の近くに歩いて行くと、フィーナが俺の口に唇を重ねてきた。
「ごめんなさいご主人様。裸を見られるのはやっぱり恥ずかしいです」
舌をペロリと出して、ぎこちない笑いを浮かべている。
かわいい。
抱きしめると、今度は俺からキスを返した。
さっきより長いキスを終えて離れる。
「ご主人様がファーストキスの相手です」
照れながらも嬉しそうにそう宣言した。
「ファーストキス?」
不思議に思い、ついつい言葉にでてしまった。
それに、気づいた彼女は話し始めた。
「団長は私のことを暗殺者に育てたかったようです。
女性ならば警戒されにくいからでしょう。
だから、戦闘技術や暗殺に関する知識を叩き込んできたのです。
私も団長の寝首をかいてやろうと思っていたので懸命に訓練しました」
「なるほど」
「おかげで団長に気に入られて、男の相手をさせられることはありませんでした」
ということはやはり処女なのか。
俺は態度に出ないように心のなかで小躍りする。
「俺も体を拭くかな」
ごまかすように、わざとらしく言うとタオルを受け取ろうとした。
が、タオルを離さない。
「ご主人様の体は私が拭きます」
なぜか強い口調で言われた。
「いや、自分で拭けるから大丈夫だ」
なんか恥ずかしい気がする。
「ご主人様の体は私が拭きます!」
さっきより強く言われてしまった。
そこまで言われたら断る理由もないので、しぶしぶと服を脱いだ。
彼女は少し戸惑いながらも、俺の体を丁寧に拭いていく。
時折チラチラと俺の股間を見ている。
自分の裸は見せないくせに、人のは見るとはなんてやつだ。
しかも、チラチラ見られると余計に恥ずかしい。
「あー。俺も見られると恥ずかしいのだが……」
素直に言うと、顔を赤くしてうつむいてしまった。
うつむきながらも体を拭き続ける。
ひょっとして、気づかないと思っていたのだろうか?
そうだとしたら、かなりの間抜けだ。
いや、さっきまで同じ様なことをしていた俺もかなり間抜けだな。
「拭き終わりました」
「ありがとう」
俺は、そそくさと服を着て、深呼吸をした。
「さあ、もう夜も遅いし寝るか」
またも、わざとらしく宣言すると、ベットの方に歩いて行く。
おとなしくついてくる。
ベットに腰掛ける。
フィーナも俺の隣に腰掛けた。
なんだろうか?
さっきまでは、フィーナとエッチなことしようと頭がいっぱいだった。
しかし、キスをした後からは性欲よりも愛おしいという気持ちが強くなっていた。
一目惚れというやつかもしれない。
俺はどうしようかと悩みながら固まっていると、俺の肩に頭を預けてきた。
キスしたい。
両肩をつかむと、目をつぶって顔を上げてくれた。
ゆっくりと優しく長めにキスする。
口を離すと、うつむきながら顔を赤らめて言った。
「初めてなので優しくしてください」
俺は頷くとベッドに横になるように促した。
横になった彼女に再びキスをする。
そして、優しく激しく愛しあった。
今までの夢の中で体験したものとは全くの別物と言ってもいい行為。
ただ欲望を満たすだけではない、まさに愛しあうという行為を行った。
初めてだというので心配したが、体の相性が良かったらしい。
あまり痛がることもなく何度も体を震わせていた。
終わった後も優しくキスをする。
「痛くなかったか?」
「ご主人様はとっても上手ですね。痛くなかったです」
「それなら良かった」
「その……ご主人様は……私の体は……どうでしたか?」
すこし、不安そうに恥ずかしがりながら聞いてきた。
「ああ、とても良かったよ」
安心させようと頭をなでる。
さらさらの髪がとても心地よい。
そうして、髪を弄んでいると急激に睡魔が襲ってきた。
睡魔?
そこで変なことに気がついた。
夢のなかで眠くなるなんてことがあるのだろうか?
少なくとも俺の今までの夢のなかではそんなことは経験したことがなかった。
突然場面が変わったり、時間が飛ぶような感覚はあった。
しかし、眠くなるんなんてことは今までなかった。
夢の中ではないのだろうか?
そんな疑念を抱きながら睡魔に抗う事ができず深い眠りに落ちていった。