金欠(後編)
「「「おかえりなさいませ。ご主人様」」」
三人のメイドが並んで声をそろえて出迎えてくれる。
三人とも笑顔でかわいい。
ずっと眺めていたい。
こうやって出迎えてもらえると、ご主人様という実感があるな。
「ああ、出迎えご苦労」
なんとなく雰囲気から、ご主人様らしい態度を強調してしまう。
「ティアーヌちょっとこっち来い」
「はい」
嬉しそうに耳をピンと立てて近くに来る。
メイド姿に猫耳と猫のしっぽ、コスプレではなく本物だ。
かわいすぎる。
猫好きの俺にたいして破壊力がありすぎだ。
まったく、けしからん。
「耳触ってもいいか?」
「どうぞにゃ」
俺に向けてきた耳をさわさわと触る。
ふかふかして、とってもいい感触だ。
調子にのって、こねくり回しているとティアーヌが身をくねらせる。
「くずぐったいにゃ」
「ああ、すまん」
耳から手を放すと、ティアーヌはまっすぐに姿勢を正す。
姿勢をよくすると、自然と突き出る大きな胸に目が行ってしまう。
メイド服は大きな胸を包み切れずに、ぱっつんぱつんになっていた。
前で止めているボタンは引っ張られてはじけてしまいそうだ。
布もピッチリと密着してしまい、胸の先端の形もはっきりとわかる。
はっきり言ってエロい。
見せるつもりもないが、到底他人に見せられる姿ではない。
「これでは胸が苦しいんじゃないか?」
「実はとっても苦しいにゃ」
「店に売っていたメイド服をそのまま買ったが、ティアーヌの胸じゃ無理があったか。明日にでもオーダーメイドしよう」
「ありがとうにゃ」
エロゲーのイラストが現実に飛び出したような姿を眺めていると、モヤモヤしたものが沸き上がってくる。
ティアーヌはしばらく鼻をヒクヒクさせると、急に抱きついて来た。
そして、頬を俺の胸にすりすりと擦り付ける。
「突然どうしたんだ?」
「ご主人様はにゃーのおっぱいを見て発情しちゃったかにゃ?」
顔をあげて嬉しそうに聞いてきた。
ばれてる。
そう言えば匂いで分かるんだった。
ティアーヌには隠す事ができないな。
見透かされてる様で恥ずかしい。
まあ、ばれてるなら取り繕ってもしょうがない。
初めからそのつもりだし。
「フィーナ、リゼット。すまないがティアーヌを借りていくぞ」
「はい。私たちは家事を続けます」
「ああ、たのむ」
ティアーヌの手を取って寝室に向かうと、しっぽを真っ直ぐに立てて付いてくる。
ベッドの前で改めて猫耳メイドの姿を眺める。
「にあうかにゃ?」
スカートの端を持ってお辞儀をする姿が愛らしい。
「ああ、とってもかわいい。ちょっと猫ポーズをしてくれないか?」
「猫のポーズ?」
「こうやって、手を頭にやるんだ」
招き猫の様なポーズをやって見せると、ティアーヌがまねする。
「このポーズがかわいいのかにゃ?」
弾けそうな大きな胸と、猫耳メイド姿と相まってかわいさが倍増される。
これはヤバイ。
抱き締めたい。
なでなでしたい。
勢いよく抱きしめると、柔らかい体と、大きな胸のふわっとした感触を感じる。
頭をなでると猫のように細い髪の毛のさらさらとした感触が心地よい。
「想像したよりかわいいぞ」
「ご主人様が喜ぶならいつでもやってあげるにゃ」
「人前ではやるなよ。見せていいのは俺だけだ」
こんな、かわいい姿を他人に見せるなんてとんでもない。
「わかったにゃ」
「胸が苦しいみたいだから緩めてやろう」
今にも弾け飛びそうなボタンをはずすと、ぶるんと勢いよく胸が飛び出す。
あっ、これはまずい。
それを見た瞬間、俺の中の何かが弾け飛んだ。
ベッドに勢いよく押し倒すと、突き出た大きな胸にむしゃぶりつく。
「ご主人様、強引だにゃー」
……
気がつくと、ティアーヌは体を痙攣させて横たわっていた。
やば、やり過ぎたか。
汗だくの体で冷静になると、酷いことをしたんじゃないかと不安な気持ちが押し寄せてきた。
「大丈夫か?」
「獣みたいで凄かったにゃ。おかしくなるかと思ったにゃ」
ティアーヌが肩で息をしながら答える。
汗でしっとりとした髪が顔に絡みついて色っぽい。
「すまない」
「とっても気持ちよかったにゃ。にゃーもあんなに感じるなんて思わなかったにゃ。ご主人様はすごく上手だにゃー」
嫌われたんじゃないかと心配したがよかった。
「ご主人様はいつもこんなに激しいのかにゃ?」
「ちょっと興奮しすぎた。喉が渇いたな」
軽く汗をふき服を着て、居間の椅子に座る。
ティアーヌはすぐに家事に戻るようだ。
あんなに疲れていたのに大丈夫かな?
心配して見ていると、フィーナがお茶を出してくれる。
「ご主人様、どうぞ」
「ありがとう。気が利くな」
疲れたのでゆっくりとお茶を飲むと、フィーナが俺の後ろにずっと立っていた。
「ん? すぐ飲んだほうがいいか?」
「いえ、そういうわけではないです」
「どうかしたのか?」
態度が変だ。
何かを待ってるように見えるが気のせいだろうか?
「ご主人様はお疲れですか?」
「領主との面会もあったし妙に疲れたな」
「そうですか」
「お茶、美味しかったぞ」
フィーナはコップを受け取るととぼとぼと台所に戻っていった。
なんか、いつもと様子が違う。
こんなに元気のないフィーナは初めてだ。
心配して様子をうかがう。
「フィーナはご主人様にエッチしてほしいにゃ」
ティアーヌの一言にハッとするが、同時にリゼットが激怒する。
「ティアーヌ!」
「いや、まて。ティアーヌを叱るな。気づかなかった俺が悪い」
「ご主人様は悪く無いです。お疲れのご様子ですし」
「そう言う問題ではない。よし、寝室に行くぞ」
「いえ、疲れてるなら大丈夫です」
手をバタバタさせて遠慮しているが、フィーナのいじらしい態度にむしろ元気になってしまった。
「ほら。行くぞ」
「ご主人様に無理はさせられないです」
どうしても拒否するなら強硬手段だ。
素早く膝の下に手を通すと、お姫様抱っこでフィーナをかつぐ。
「キャッ」
フィーナは少し驚いた顔をしたが、すぐに首に手を回し俺の胸に顔をうずめた。
「二人共あとは頼む」
「リゼットごめんね」
「いいからさっさと行きなさい」
リゼットは呆れ顔で手を振る。
リゼットの言葉に甘え寝室のベッドの近くまで行くと、抱いたままキスをする。
「ご主人様、大好きです」
今度はフィーナからキスしてくる。
長く熱いキスを終えたあと、静かにベッドに寝かせると優しく服を脱がせた。
……
「ご主人様、いつもより優しかったです」
「激しいのと、どっちが好きだ」
「ご主人様かしたいほうでいいです。
でも、ご主人様でいっぱい感じたいからもっと激しい方が嬉しいです」
恥ずかしそうに、小さい声になりながら俺の胸にすがり付いて答える。
「そうか、ならいつも通りにするか」
「いつも私たちを気遣ってくれて、ありがとうございます」
「お前たちには、いつも助けられてるからな」
「それは私の方ですよ。あっ、夕飯の支度しなきゃ」
気づくと締め切った窓の隙間から差し込んでくる光が薄暗くなっていた。
「夕飯は二人にまかせて、ゆっくりしたらいいんじゃないか?」
「私もご主人様に手料理を食べさせたいです。
それに、今日はティアーヌの初めてのエプロンですよ。
ご主人様は見たいんじゃ無いですか?」
フィーナが照れながらもクスクスと笑う。
初めてのエプロンとは、もちろん裸エプロンの事だろう。
見たいに決まっている。
あの、大きな胸を隠しきれないだろうエプロンを想像し、自然と顔がにやけてしまう。
「そうだな。見てやらないとな。フィーナのエプロン姿も久しぶりに見たいしな」
「私もご主人様に見てもらいたいです」
フィーナは照れて、またも俺の胸に顔を埋める。
そのしぐさが可愛くて頭をなでる。
「じゃあ、見に行くか」
「私は着替えてから行きます」
着替えると言っても、既に裸だからエプロンを着けるだけだ。
すぐにすむと思うが気持ちの問題なのだろう。
居間に行くと、裸エプロン姿の二人が鼻唄混じりに料理をしていた。
背を向けているため、ぷりんとしたお尻が露になっている。
料理をしていると、かわいいお尻がふりふりと動く。
二人は俺が部屋から出たことに気づくと、すぐに近くによってきた。
「どうかにゃ?」
「すごくかわいいぞ」
「こんな格好初めてしたにゃ。すーすーするし隠せてないし、はずかしいにゃ」
赤い顔でもじもじしながら、胸を隠そうと生地を引っ張っている。
明らかに生地が足りてなく無駄な努力となっていた。
想像通り、いや想像以上にティアーヌのエプロン姿は色っぽかった。
リゼットの場合には、幼い姿とエプロンがすっぽりと覆っているため、かわいらしいという印象が強い。
それに比べ、ティアーヌは大きい胸が横からはみ出しているし、大きめのお尻も隠しきれていなくエロい。
フィーナとしたばかりなのに、また元気になってしまう。
ティアーヌは鼻をヒクヒクさせると笑顔になった。
「ご主人様が喜んでいるなら、恥ずかしくても大丈夫にゃ」
「お待たせしました」
フィーナもエプロン姿で部屋から出てくる。
その姿は若妻のようなかわいらしさと色気がある。
それぞれのエプロン姿を堪能して満足する。
「じゃあ、俺は寝室で休んでるから夕飯の支度頼むな」
「もっと見にゃいのかにゃ?」
「後ろ姿は恥ずかしいからいいんです。それに、お疲れなんですからしっかり休んでいただかないと」
「あー、後ろは丸見えだにゃー」
体をひねって自分のお尻を見ている。
「すまないな。また夜にしっかり見てやるから」
言い残して寝室に戻りベッドに横たわる。
メイドとエプロンの姿を思い出して一人でニヤニヤしてしまう。
三人にはとても見せられない表情をしていることだろう。
……
「ご主人様、夕飯の用意ができました」
ベッドの上で疲れを取りながらニヤニヤしていると、ドアの外から呼ぶ声が聞こえる。
「今行く」
テーブルには豪華な食事が並んでいた。
「すごいな。これはティアーヌが作ったのか?」
「そうだにゃ。ご主人様に喜ばれるために腕によりをかけたにゃ」
「私の料理がみすぼらしく感じちゃいますね」
「そうね。あたしの料理も貧相に感じるわ」
フィーナは盗賊暮らしが長いせいで、食材をごった煮にした鍋物しか作れない。
しかし、味付けはシンプルながら食材の味を上手に引き出し美味しかった。
リゼットの作るものは、田舎の味という感じで、素朴ながら飽きることがない安心できる美味しさだ。
「そんなことはないぞ。俺は二人の料理も大好きだ。しかし、量が多いな」
「ちょっと張りきりすぎちゃったわね」
そんなリゼットの心配を余所に、料理は残さず食べられた。
フィーナもティアーヌもよく食べるし、疲れていた俺も食欲は存分にあり、いつもより多く食べれた。
「三人ともすごい食べっぷりね」
「美味しいからどんどん食べれたな」
「ティアーヌの料理は、すごい美味しかったです」
「フィーナとリゼットの料理もおいしかったにゃ」
みんな満足した顔だ。
「後片付けは私達がするので、ご主人様は休んで下さい」
「俺も手伝おう」
リゼットが俺の手を掴んで引き止める。
「ご主人様は休んで下さい。片付けが終わったら、もっと美味しいものを頂いて貰わないといけないので」
「もっと美味しいものかにゃ?」
ティアーヌが不思議そうな顔で小首をかしげる。
ティアーヌ自信のことでもあるんだぞ、と心のなかで突っ込む。
それにしても、リゼットがそんなことを言うとは思わなかった。
無理して自分の気持ちを表現しているのかもしれない。
その気持ちに答えてあげないと。
「そうか、なら期待して待ってよう」
わくわくしながら寝室のベッドの上で待つ。
暫くすると、後片付けを終えたエプロン姿の三人が部屋に入ってくる。
三人は並んで立つと声をそろえて言う。
「「「ご主人様。どうぞ私達をお召し上がり下さい」」」
これは何度聞いても最高なセリフだ。
この後は、語るまでもないだろう。
三人とも隅から隅まで味わい堪能させてもらった。
……
おいしい食事で回復した体力ゲージも黄色くなるぐらい使い果たした俺は心地よい疲れの中でまどろむ。
「ご主人様はお休みしたみたいですね」
フィーナが小声で話しながら、俺の汗をタオルで優しく拭いてくれる。
「心配してたけど杞憂だったわね」
「何を心配してたにゃ?」
「もう少し声を落として。ご主人様が起きちゃうでしょ?」
少しトーンの高い声をだしたティアーヌをリゼットが窘める。
「ごめんにゃ」
「ティアーヌが仲間になったことで、ご主人様と愛し合う回数が減っちゃうかと思ってたの」
「それが全員を二回も相手するとはね」
三人ともクスクスと笑う。
「今日のご主人様はすごかったにゃー」
「あなたの声が大きかったから、居間にまで聞こえたわよ」
「はずかしいにゃ。でも、あんなにされたら声が出ちゃうにゃ」
「あまりにもすごい声出すからからこっちまで変な気分になっちゃたわよ」
「お昼はごめんね。私とティアーヌだけ相手してもらって」
「あたしは朝に相手してもらったからいいの。でも、ティアーヌに来てもらってよかったわ」
「なんでにゃ?」
「ティアーヌが素直なおかげで私達が言えなかった事が、言えるようになったし、ご主人様もそれで喜んでるみたい」
「にゃーは思ったことを言っているだけだにゃ」
「そういう事も必要なのね。勉強になったわ」
「それに、ティアーヌのおかげでご主人様のエッチさが増したみたい」
「これのせいね」
「変なところを突かないでほしいにゃ」
「ごめんね。でも、大きな胸で羨ましいわね。私は何もないからご主人様をあんなにエッチにさせるなんてできないわ」
「でも、リゼットはご主人様にすごく信頼されてるにゃ。いつもリゼットに相談してばっかりにゃ」
「私も頑張らなきゃ」
「何言っているの、あなたが一番ご主人様に愛されてるじゃない」
「そんなことないです」
「いいえ、いつも一番最初だし、一番心配されてるじゃない」
「そうだにゃ。うらやましいにゃ」
少しの静寂の後、小さな笑い声が響き渡る。
「みんな愛されてますね」
「そうだにゃ。仲間になったばかりのにゃーにもとってもやさしいにゃ」
「そうね。ご主人様は誰にでもやさしいわね」
すごく評価されているのは嬉しいが、聞いていて恥ずかしくなる。
なんにせよ、二人がティアーヌを受け入れてくれてよかった。
安心した俺は、これ以上盗み聞きするのは良くないと思い睡魔にまかせて眠りに落ちた。