前兆
朝早くから山道を歩く。
森の泉に出たモンスター討伐するためだ。
山は木々に覆われているが、鬱蒼とはしていなく適度に風が通り心地よい。
昨日がピクニックなら今日はハイキングだ。
「リゼットこっち向いて」
不思議そうに俺の方を見る。
その隙に不意打ちでキス。
びっくりしていたが、すぐに受け入れてくれる。
激しく攻め立てたいという、気持ちを抑えながら少しずつ口の中に舌を差し込む。
昨日は躊躇していたが、少しなれたらしくおずおずと舌を絡ませた。
頭を撫でながら、その可愛らしい舌をなめまわし、口の中を堪能して顔を離す。
「リゼットの口は甘くて美味しいな」
俺はテイスティングのように、キスの後味をわざとらしく評価すると
「なにバカなこと言っているの」
と言いながら照れる。
フィーナを見ると唇に人差し指を当てて物欲しそうな顔をしている。
「どうしたの?」
キスして欲しいという気持ちを見透かしながらも、あえてわからないふりをする。
「なんでもないです……」
うーむ。この状況でも言わないか。
フィーナに自分から言ってもらう作戦は失敗だ。
可哀想だし、俺もしたいので耳元で囁く。
「キスして欲しいんじゃないの?」
「……はい」
照れながらも嬉しそうに答えると、目を閉じて顎を上げ俺を待つ。
その美味しそうな唇にしゃぶりつくと舌を入れる。
情熱的なキスにだいぶなれたフィーナは、最近は喜んで受け入れてくれる。
フィーナも俺の舌を味わい口の中を堪能する。
あまりの激しさにフィーナの鼻息は荒くなりヨダレが溢れている。
長くそれを堪能すると口を離すと、目をトロンとさせて顔を上気させている。
あぁ。
その表情やばいから。
誰に突っ込むでもなく心で思う。
激しくやり過ぎたせいで、すぐにでも押し倒したい気分になってしまった。
抑えろ俺。
さすがに外でやるのは俺的にアウトだ。
静まれ俺のファイアーソード。
我慢するのは想像以上に大変で、リゼットも少し呆れ顔をしている。
道すがら、そんな悪戯したり手を繋いだり頭をなでたりスキンシップする。
二人共、恥ずかしがりながらも嬉しそうに受け入れてくれる。
その笑顔を見ると抱きしめたい所だが、鎧を着ているため無理なのが残念だ。
俺は上機嫌で二人に話しかける。
「明日は、ギルドの依頼は受けずに一日デートをしようと思う。午前と午後に分けて二人っきりのデートをする」
「待っている間はどうしたらいいんですか?」
「お小遣いをあげるので、一人で街に出るなり家でゆっくりするなり好きにしたらいい」
「私は一人になるよりもご主人様と一緒にすごしたいです」
フィーナは懇願するような表情を俺に向けた。
喜ぶと思ってたけど、一人は嫌なのか……。
デートの目的は二人を喜ばせることなのに、嫌な思いをさせるなら意味が無い。
「リゼットはどう思う?」
「私も一人でいる時間よりご主人様とフィーナと一緒にいる方がいいわ」
二人とも一人の時間が長すぎたからみんなと一緒にいたいんだな。
たしかに、二人で出かけられて俺一人部屋に残されたら寂しくてふて寝しそうだ。
「わかった。予定を変更して三人でデートしよう。俺は行きたいところはあるので、二人とも希望があったら言ってくれ」
「私はご主人様と一緒ならどこでもいいです」
「あたしもすぐには思いつかないわね」
「そうか、希望がなければそれでもいい、俺が行きたいところに行くだけだ」
「それがいいと思います」
二人は普段からあまり主張はしない。
俺と一緒にいれば楽しいというのも本心からだろう。
ならば、俺が二人を楽しませるように、自分が愉しめばいい。
そんな話をしていると、森の奥からガサガサと言う草木のざわめきと、豚の鳴き声のような唸り声のような音が聴こえた。
「オークね」
「またオークか」
「偵察してきましょうか?」
「お願いしよう。あまり無理はするな」
フィーナが音もなく森の奥に入っていく。
「数が多そうだがどうする?」
「ご主人様が一人で突撃しても勝てるんじゃない?」
「数が多いと攻撃を受けてしまう」
「ダメージほとんど受けないでしょ? ダメージが少ないなら攻撃を受けないのと同じよ。いずれ勝てるわ」
「毒やマヒなどになったら困る」
「ずいぶん慎重なのね。無謀よりいいことだけど」
「40匹以上のオークと5匹以上のオーガがいますね」
音もなく戻ってくると簡潔に報告してきた。
「まあ、私がやったほうが効率的ね。ネクロマンサーの戦い方を見せてあげる」
リゼットの戦いは単純だった。数の暴力である。
ゾンビ30体、スケルトン15体、ゴースト10体、ジャイアントスケルトン3体、ファイアーエレメンタル1体、ダークエレメンタル1体。
総計60体のモンスターを召喚し敵にぶつける。
ゾンビやスケルトンは弱い、オークやオーガに簡単に倒されてしまう。
しかし倒されても再度召喚する。
倒されても倒されても数は減らないのだ。
さらに、こちらが倒した敵はリアニメイトでゾンビとして復活する。
オークゾンビやオーガゾンビが味方になる。
死の軍団は敵を飲み込み雪崩のように進軍する。
戦いは加速度的に有利になり、敵の数が半分になるとあっという間に勝負はついた。
「死霊使いの名にふさわしい戦いだ」
「でも弱点は有るのよ? 一人の強者が居るだけで戦線は簡単に崩壊する」
「だから俺は勝てたのか」
「私が最も得意とするのは実力が拮抗した数の多い敵ね」
最も効率良く戦うにはどうしたらいいだろう?
多人数の敵が苦手だったからなんとかしようとしてたけど、
リゼットが得意なら俺が対策する必要ないなー。
うん。そうしよう。
「俺は個人としての強さを高めたほうが良いのかもしれない」
「どういうこと?」
「数の多い敵はリゼットが倒してくれる。ならば、俺がやるべきはリゼットが弱点とする強者を倒せる存在になることだ」
「そうね。ご主人様なら自己強化魔法の使える最強の戦士になれると思うわ。下手な召喚魔法を使うより絶対いいわね」
「俺の召喚魔法が下手か?」
「下手というか中途半端ね。あたしのネクロマンサーはアンデットの召喚に特化しているの、召喚魔法を短い時間で使えるのはジョブのおかげね。だから召喚魔法だけならご主人様にも負けないわ」
「リゼットは召喚のスペシャリストだったんだな」
「どう? あたしのこと見なおした?」
リゼットが腰に手を当てて無い胸を張った。
かわいらしい胸をなでなでしてあげる。
リゼットは素早く両手で胸を隠すと顔を赤くした。
「ご主人様はやらしいわね」
「リゼットがかわいいからな」
横でフィーナが胸を張っていた。
大きな胸がより前に突き出される。
「お前は何をしているんだ?」
「なっ、なんでもないです……」
フィーナは赤くなって小さくなってしまった。
もみしだきたい気持ちでいっぱいだが革の鎧を着ていては硬いだけだ。
仕方ないので頭をなでなでした。
フィーナはそれで満足したようだ。
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夕方近くに冒険者ギルドにつき、金貨3枚と銀貨60枚を受け取る。
なかなかの収入に満足していると、職員から待っているように言われる。
何の用だろう?
俺は早く家に帰って三人でスキンシップしたいのに。
帰り道もキスのいたずらをしたら二人とも朝より積極的になって大変だった。
俺のグングニルの槍に限界が近い。
「ユウキ様ですね?」
「そうですが何でしょうか?」
「領主様があなたに会いたいそうです」
「領主様が?」
早くイチャイチャしたいが、断ることもできずに衛兵についていく。
街の中心部にある大きな館に連れてこられる。
赤い絨毯の上を歩き、2メートルほどの両開きの豪華な扉の前につく。
「領主様、ユウキ様をお連れしました」
「入れ」
その声とともにドアが開けられ中へ入るように促された。
部屋は執務室らしく奥の机に男が座っていた。
男の斜め後ろには、ゆったりとした紫の刺繍が施されたローブを着たふっくらとした優しい顔の男が立っていた。
座っていた男が立ち上がると両手を広げて出迎えた。
「ようこそ来られた」
短い黒髪で身長175センチほどの、すっきりとした筋肉を持つ目つきの鋭い男で、金の装飾を施したベストを着て、白いズボンに長いブーツを履いおり、腰には剣をさしている。
「オレは領主のカシードだ」
「はじめまして、ユウキです」
なるべく丁寧になるように頭を下げる。
「彼は魔術師であり俺の右腕のシトだ」
にこやかな笑顔でお辞儀をしてくる。
俺も合わせてお辞儀をする。
「まあ、そんなに固くなるな。とりあえず座ってくれ」
カシードはそう言いながらテーブルの椅子に座る。
促されて俺も対面の細かな装飾のしてある綺麗なソファーの真ん中に座る。
フィーナとリゼットは俺の後ろに立って並んだ。
「オレは強い冒険者が大好きでな、オレの街に回復魔法と召喚魔法の使える剣士が現れたという噂を聞いて、見たくなったのだ」
「噂ですか?」
俺が知らない間に有名になっていたらしい。
噂を流したのは、ドラゴンファングか風の射手の面々だろう。
「ドガルナバ盗賊団を全滅させ、高位の死霊使いを倒したそうじゃないか」
そういいながらリゼットを一瞥する。
盗賊団もリゼットのことも把握済みってことか。
なかなかのくせ者だな。
リゼットも表情はにこやかだが、警戒心を強めたようだ。
「冒険者の方々に協力してもらって勝てただけです」
「そう謙遜するな。最近やたらとオークの出現報告がふえてな。警戒している最中なのだ」
「私も昨日、今日とオークの群れを倒したところです。妙に数が多かったですね」
「そうなのだ。こんなにオークがたくさん湧くことは初めてだ。
近いうちに何らかの対策をとる必要が出てくるだろう。その時にはおぬしのような力のある冒険者に協力を願いたい」
なるほど、オーク対策の人員が欲しかったのか。
「いえ、私のような若輩者がお力になれるとは思えません」
やんわりと断っておく。
「謙遜するなと言っておるだろうが。
もし何かあったらおぬしの家に使いをよこす。その時にはよろしくな」
俺の家を知っているのか?
ああ、冒険者ギルドで借りたから筒抜けなのか。
つまりこういうことだ、お前の家は知っているから逃げることはできないぞ、と。
強引な男だ。
「それほどに言うのであれば、微力ならがお手伝いさせていただきます」
無理に断って、敵にすることもないだろう。
恩を売っておけばいいことがあるかもしれないしな。
「ふむ。冒険者と思えない話しぶりだな。冒険者は腹を割って話せるから好きなのだが」
俺が了承したので納得したらしい。
しかし、腹を割って話せるというのは半分は本当だろうが、半分は嘘だな。
この男は、そういった駆け引きも楽しむタイプだ。
「さて、折角なのでちょっと隣の部屋に来てくれないか」
「カシード様、またお戯れを」
ずっと黙っていた男が呆れた表情で咎めた。
「まあ良いではないか、オレの唯一の楽しみだ」
なんだかよくわからないが、あまり楽しいことではなさそうだ。
仕方なく隣の部屋についていく。
ああ、早く帰って二人にスリスリしたい。
隣は様々な武器や防具が置いてる道場のような部屋だった。
カシードはその中から木製の剣を2本取り出し俺に放ってよこした。
「少し手合わせを願いたい」
うーん、どうしよう。
俺は相手の力量を読むことができない。
剣の技術はこの世界に来た時に手に入れた物だ。
知識があるわけではなく体が勝手に動く感じだ。
下手に勝ってしまっても困るし、かと言って弱すぎると評価されるのも損だ。
あまり悩んでもしかた無いしそこそこの力でやるか。
自信があるみたいだし弱くはないのだろう。
「よろしくお願いします」
俺は剣道のように頭を下げてから構える。
「行きます」
そう言って打ち込む。
が、あっさりと受けられた。
本気で打ち込んでみる。
やはり軽々と受けられる。
ムキになって連撃を入れるが、すべて受けられた。
「本気を出せ」
そう言われるが、俺は本気だ。
さっきより気合を入れて打ち込む。
今度は受け流され俺の体勢が崩れたところで、喉元に木製の剣を突きつけられる。
「おぬしひょっとしてスキルが使えないのか?」
そういえば、魔法ばかり覚えてスキルについて勉強するのを忘れていた。
「はい、スキルは全く使えません」
ウソを付いてもしょうが無いので正直に話す。
「ふむ。魔法も使えるんだったな? 見せてもらえるか」
何を使おうか悩んだが、見た目がわかりやすいウィルオーウィスプにした。
「ほう、こんな大きなウィルオーウィスプはなかなか見ないですね」
魔術師のシトが興味深げに言った。
「ということは本職は魔法使いなのか?」
「そうです。魔法を重点的に覚えて剣技は基礎を学んだだけです」
この世界に来て短い間の話だが嘘は言ってない。
「基礎というレベルにしては高過ぎるがな。
しかし、もったいない。おぬしほどの力量ならファイターのスキルもすぐに覚えられるだろう。ちょっと待っておれ」
そういうと執務室の方に行ってしまった。
暫し待つ。
あー、早くフィーナとリゼットにやらしいことをしたい。
すぐに、一枚の紙をもってカシードが戻ってきた。
「これを持って、レナルヴェの元に行くが良い。有名だし場所は誰でも知ってるであろう」
「ありがとうございます」
紹介状か?
スキルを無料で教えてくれるなら儲けものだ。
「うむ。おぬしはせっかく強いのだ。もっと強くなってもらえれば街の安全も高まるだろう」
「は! 尽力いたします」
「今日は時間をとってもらって悪かったな。オレもこれで忙しい。帰っていいぞ」
忙しいなら剣なんて振ってる暇はないだろう。
本当に自分勝手な男らしい。
だが、俺の草薙の剣も自分勝手に暴れる寸前だ。
おとなしく帰ろう。
早く帰ろう。
すぐ帰ろう。
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家に着くとすぐにフィーナとリゼットが俺の装備を外す。
心なしかフィーナもリゼットも急いでいるように感じた。
そして、外すな否やリゼットに抱きつく。
フィーナは鎧を着ているため脱ぐのに時間が掛かるが、リゼットはローブとロッドを持っているだけなので、時間がかからない。
リゼットにキスする。
リゼットはすぐに舌を入れてきた。
四度目ともなればすでになれたのだろう。
俺は片手でおしりを撫で回し、もう片方の手をパンツの中に入れた。
濡れている。しかもかなりだ。
リゼットはあまり感度が良くなかった。
体のせいか長年一人だったせいかは分からない。
しかし、今日はいつもとだいぶ違った。
「すごく濡れてるな」
「だって、ご主人様が朝からエッチなことばっかするから……」
顔を真っ赤にして涙目で訴えてきた。
俺は指を這わせて愛撫する。
腰が砕けそうになるのを必死に俺にしがみついて耐えている。
「リゼットばっかりズルいです」
フィーナが俺に抱きついてキスしてきた。
フィーナは情熱的ではある。
でも、自分から来ることは朝のキスぐらいだ。
それにしても俺がしてと言ったからしている。
ましてや、ズルいとは普段なら絶対言わない。
それほどまでにフィーナも追い詰められていたと言うことなのだろう。
予想外ではあったが俺の朝の試みは達成された。
フィーナを受け入れると、リゼットに愛撫しながら、フィーナの胸を揉みしだく。
実はフィーナは胸が一番弱い。
こねるように撫で回しすと口がふさがっているため鼻息が荒くなった。
口を離して胸を舐める。
体を拭いてないので汗の味がするが、今の俺にとっては蜜のようなものだ。
舌で汗を拭うように舐めまわす。
「ご主人様、汚いです」
それに気づいたフィーナは恥ずかしがりながら言った。
「フィーナなら汚くないよ」
そう言いながら、汗の匂いの強い部分、胸の下の方を舐める。
フィーナは愛撫されている気持ちよさと恥ずかしさの間で震えている。
更に、匂いの強いところを探し舌がさまよう。
さまよった末に行き着いたのは脇だった。
腕を掴み手を挙げさせると脇を舐める。
「ご主人様! そこはダメです」
腕をおろそうとするが、しっかりと掴む。
フィーナはくすぐったさと恥ずかしさと快感で体を震えわせながら耐えている。
フィーナを攻めていると今度はリゼットが我慢できなくなったようだ。
「あたしにももっとして」
リゼットも普段なら絶対言わないような甘えた声を出して、俺を無理やりフィーナから引き剥がすとキスをしてきた。
三人とも限界の状態を超えてしまいおかしくなっている。
リゼットを抱えてフィーナを連れて急いでベットに向かう。
明日をデートの日にしたのは幸運だった、
今日はいくら遅く寝ても大丈夫だ。