トモ変身する
うちの三人兄弟は仮面ライ〇ーが大好きだ。
新番組が始まると同じ話を何回もエンドレスして一週間を過ごす。そう、毎日、毎日とにかく録画を飽きもせずに見まくるのだ。お蔭でごっこ遊びもボキャブラリーが増えてますます混沌としている。
ミチ 「ぱいぱーキック!ヤー!」
ヒロ 「おまえら、てだしするんじゃねぇ。アクアフォームトリュネード~!!」
トモ 「ダ~ッ!」
ヒロ 「くっそう、ほかのヤ〇ー(悪役の名前)まででてきたな。」
ミチ 「ジェット〇*%&#$~~~~!!!!」
トモ 「テ~テーテー!!」
母 「あれ!?今、トモが……変身した!?今の変身音だよね!?」
ヒロ 「うん!スゲッ。トモ、もう一回へんしんして?」
トモ 「テ~テーテー!!」
ミチ 「ウワッ!ほんとだ~!」
トモ 「テ~テーテー!!」
……その日から得意げにトモの変身音(声)が我が家に聞こえるようになった。
~~~~数日後~~~~~
いつもはどんなに殴られようがあらゆる理不尽なことも”自分より小さい子には手を出してはいけない”との我が家の家訓(BY鬼母)を守って我慢している上の二人。そのせいなのかトモの傍若無人ぶりには目に余るものがあるようになってきた。思い通りにならない事が起きると「ただ叩く」のではなく、自分の体が小さいのを考慮してか腕をめいっぱい振りかぶってから叩いてくる。当然、大人の私でも痛い。ヒロはまだトモに「敵わない」と思われているからかそんなに被害はないが、すぐ上のにいちゃんミチはライバルであるがために容赦がなく、一番の被害者になっていた。そんなミチに「お兄ちゃんなんだから、怒ってもいいよ。でも、叩き返すならお尻にしてね。」と私は言った。泣き虫ミチよ、トモなんぞに負けてはいかん。そして、その日、ミチは奮い立ったのだ。
ミチ 「トモ!やめて!やめってたらぁ!」
トモ 「か~し~てぇ~!」
ミチが遊んでいたオモチャをトモが貸して欲しいと詰め寄る。
ミチ 「これはミチのなの~!」
トモ 「か~し~てぇ~!」
その瞬間、バチンとトモが手をあげる。が、いつも黙っているミチが反撃した。
バチン!
黙って成り行きを眺めていた私と明人さんは当然、兄ちゃんにやられたトモが泣くであろうと予想した。
……しかし
トモ 「テ~テーテー!!」
トモが走り込んでいつもより勢いをつけてミチを叩いた……。
ミチ 「ウエ~~~~~~~~~~~~ン!!」
……結局大泣きしたのはミチ(4歳)で……。
母 「何、今の!?」
父 「変身したよ、トモのやつ。」
母 「気持ちを奮い立たせたのかな……。」
父 「……。」
母 「……。」
父;母 「「ぶっ……。」」
大泣きするミチの頭を諌めながら、私と明人さんは笑いをこらえるのに必死で肩を震わせた。