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学園ユートピア  作者: リヴァイアサン
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第二十二話 操られし者

二週目のTR、行かせていただきます。


シュバルト達が向かったのは、入学式の会場となった大聖堂だった。

なぜそこにいると感じたのかは、彼自身も分からなかった。

だが、そこにいると言う直感が彼にはあった。

そして大聖堂の扉を開け中に入る。


「ああ、星がきれいだ」


そこにいたのは、小さな窓から夜空を見るモーリスの姿だった。

今の彼は、かなり無防備だ。

だからこそ、一気に不意打ちをかけて倒すことも可能であった。

だが、その場にいる者全員がそこを動けなかった。

それは、モーリスのその姿がまるで天使のごとく姿に見えたからかもしれない。


「こんなに夜空がきれいなのに、なぜこの世界は淀んでいるのであろうか。なぜ穢れているのであろうか?」

「モーリス」


モーリスの問いかけに、三人は答えることが出来ない。


「なあ、シュバルトよ。お前が望む未来は、穢れたこの世界をさらに澱ませる愚かなことだと気付かねえか?」

「そんなことは関係ない! 俺はここに住む人々を救うために戦うんだ! 世界のためじゃない」


モーリスの言葉に、シュバルトが反論する。

それを聞いたモーリスはゆっくりと、シュバルト達の方へと向いた。


「「「ッ!!」」」


その姿を見た瞬間、三人は息をのんだ。

それはモーリスの周囲に漂う気配が物語っていた。

その気配は、ひどく冷たくそして殺意に満ちていた。


「そうか。お前も所詮、穢れた人間だと言うわけか。いいことを教えてあげる」


モーリスはそう告げた。


「僕やイディア、ロイはやりたくてやっていたわけではない」

「なッ!!?」


驚きの言葉に、シュバルト達は驚きを隠せなかった。


「だったら、どうしてこんなことを」

「それはな。僕たちは動かされていたんだ」

「動かされてた?」


シュバルトは一瞬身震いをした。

まだいる黒幕の存在に。


「ああ、”世界”にな」

「世界……だと?」


ギオは、モーリスの言葉に驚きをあらわにした。


「この世界は穢れている。その穢れを取ることが、我が使命」


この時、シュバルトは考えていた。

これらの一連の騒動。

その背景にあるのは、人でもなく世界と言う枠。


「ああ、星がきれいだ。流れ星もすごい」


そしてまたモーリスは夜空を眺める。


「お前たち、頼みがある」

「何だ?」


ふと動きを止めたモーリスはシュバルト達に声をかける。

その声には、どこか柔らかさがった。


「シュバルト、もし僕を許してくれるのであれば、イディアに最後に掛けた技をやってくれ」

「あれを……か?」


シュバルトは、モーリスの突然の頼みに目を見開きながら答えた。


「ああ、あれの技であいつは心を取り戻した。だから、お前の技で僕の心を取り戻してほしい」


シュバルト達は頭の中がこんがらがった。


(一体なんなんだよ、こいつは)


「頼む。僕だって、世界を滅ぼすとかやりたくは――――――ッ!!!?」

「だ、大丈夫か!?」


やりたくないと言いかけたモーリスは突然苦しげな表情を浮かべて、うずくまった。

それを見たシュバルト達は思わずモーリスへと駆け寄寄ろうとした瞬間だった。


ブゥゥゥゥゥゥン!!


「な、何だ!?」


突然モーリスを中心に、白銀の魔法陣のようなものが展開された。


「あああああああああ!!!!!」


それに感化されるように、モーリスも苦しみだす。


「ぐ!!?なんだよ、この圧力は。今までの比ではない」


ギオが顔をしかめながら口にする。

そして、眩い閃光が周りを覆い尽くす。


「お前たち!!」

「学園長!? どうしてあなたが」


突然現れた学園長にリヒャルドが驚いた様子で問いかけた。


「あいつはどうなった!!」

「あいつは――――」


シュバルトが説明しようとした瞬間、光が一気にはじけた。

そして、そこにいたのは……。


「穢れた世界。壊す、壊す、壊す!!! あはははははは!!!」


いつにもなく不気味に笑うモーリスの姿だった。


「さあ、始めよう! 今こそ革命の時だ!!」


その瞬間、再びモーリスの足元に魔法陣が広がる。


ごぉぉぉぉぉぉぉ!!!


「こ、今度は何だ!?」

「これはいかん!!」


突然の異変に、慌てるシュバルト達だが、一人だけ顔を青ざめていた。


「どういうことだ」

「こいつは……まさか、原初物質化暴走プリマテリアライズ・オーバードライブだ」

「プリマ……なんだ?」


単語の意味が分からないシュバルトが、問いかける。


「プリマテリアライズ・オーバードライブ。世界の終焉の序章とも言われ、これが起これば世界は間違いなく破滅する」

「そんな……どうすれば」

「彼を倒せば、これは収まる可能性がある」

「だったら―――」


シュバルトの言葉を、学園長が遮った。


「しかし、彼自身はこの世界自体だ。そう簡単には倒れない。それに彼を倒しても、再び世界は新たな器を探し出すだろう」

「だけど、やるしかない。ロマンの為に、人々の為に」


シュバルトは、そう意気込む。


「そうか……ならば、90分だ。この世界が破滅するまで、90分はある。それまでに何とかしなければいけない」

「しかし、どうしてあなたがそんな事を知ってるんですか?」


リヒャルトが、学園長に尋ねた。

確かに、一人間がここまで詳しいのは不思議なものだ。


「それは、イディアが教えたのだよ。この後何が起ころうとしているのかを」

「イディアは、無事なんですか!?」

「ああ、今は寮で休んでおる」


学園長はそこまで言い切ると、モーリスの方を見た。


「うおおおおおおおおお!!!!」


モーリスの雄叫びに、周囲の雰囲気が震えた。

その姿は大きく変わっていた。

目は完全に白目になっていて、手の方も爪が異様に長かった。


「みんな! 行くぞ!!」

「「おう!」」

「世界には祝福を、愚かな物には永久の地獄を!!!」


そして、彼らの戦いは再び幕を開けた。

お次は柚乃 詩音様、よろしくお願いします。

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