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学園ユートピア  作者: リヴァイアサン
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第九話 終局へのプレリュード

聖騎士です。拙い文章ですが、よろしくお願いいたします。

 連続して放電する稲光が夜の街を青白くフラッシュさせる。シュバルトのいる位置からははっきりとは見て取れないが、全身を切り刻まれる二人の姿が想像される。

「ああ、そんな」

 シュバルトの口から絶望の呻き声が漏れる。イティアは稲光を纏った輝く剣を、何度も勢いよく振り下ろす。その度に甲高い破裂音が周囲に反響し、シュバルトは肩を竦める。

 希望を持って入学したはずの同級生たちが殺し合っている。シュバルトはその現実に身を震わせると同時に、どこか冷静に状況を分析している。

 イティアは何か目的があって学園を潰そうと入学してきた。しかし自分たちに友情を感じてくれてもいるようだ。

 彼女から感じられるのは大いなる陰謀と無邪気な好奇心。明と暗の混在するイティアは、どこか狂気じみた異形の存在に思える。

「くそ、だれだ」

 一際高い音を立てて雷の刃が振り下ろされる。しかしその刃はなんと、金色に光る半透明の膜によって弾き返されている。キラとアヤナはその膜の内側で気を失って倒れている。

「ずいぶんと派手に楽しんでるねえ」

 癖のある黒髪を靡かせて、黒ずくめの長身が空から降りてくる。その男もイティアと同じく、MIDを使わずに魔法を使用できるようだ。

 胸を大きくはだけさせた白いシャツに黒いジャケット。細めの黒いスーツパンツに黒の革靴と、その姿は夜の闇の中から抜け出してきたかのように思える。

 シュバルトは「真実の魔法」を使える者がまだいたのかと一瞬驚くが、どうやらこの男は魔法を使っているようではない。どこがどうとは上手く言えないが、魔法というよりは超能力に近いのではないかと思ったのだ。

「僕はサヲングォン。君の先輩だよ」

 金色の膜に包まれたキラとアヤナを間に挟んで、サヲングォンはイティアと対峙する。

「先輩って、あんたみたいな先輩知らない」

「そりゃそうさ、今日戻ってきたばかりだからね」

「戻ってきた?」

 イティアは手のひらに、燃えさかる火球を練り込み始めている。獲物を狩る邪魔をしたサヲングォンを、敵だと認識しているのだろう。

「もしかしてあなた“欠席番号”生徒?」

「さぁ?」

 サヲングォンは肩を竦めて微笑む。

「でも、キミが教えてくれたら僕も教えるよ」

「何を?」

 イティアの火球は、コマのように激しく回転し始める。ほんの少し手首を返すだけで、それは弾丸のように飛んで相手を打ちのめすだろう。

「キミはどこの国のスパイなんだい?」

「それは……」

 イティアが夜空を見上げる。サヲングォンが釣られて見上げると、直後火球が闇を切り裂いて飛翔していく。

「あぶない!」

 思わずシュバルトは叫んでしまう。まだあの黒ずくめの先輩が、味方などとは決まっていないのに。

 サヲングォンが視線を戻すと、すでに目の前には火球が唸りを上げて迫っていた。

「山陰千奥義・滅」

 まるで夏の夜の花火のように、火球はサヲングォンの目の前で爆発四散する。

「ちっ!」

 イティアは黒煙と火の粉に紛れて、音もなく夜空へと浮かび上がる。サヲングォンはまるでそれが見えていたかのように、イティアを追って飛び上がる。

「わははは、死ね」

 イティアは逃げるつもりだったのではなく、攻撃のために距離を取ったらしい。もしかしたらシュバルトを巻き込みたくなかったのかもしれない。

 イティアは右腕を頭上に伸ばし、手のひらを真上に向ける。左手は右の手首を掴み、かなりのエネルギーが集束していくのがわかる。

「これは…… ヤバい!」

 思うより早く、シュバルトは駆け出していた。金色の膜はすでに消え去り、キラとアヤナは折り重なるように道に倒れている。シュバルトは渾身の力で二人を両脇に抱え、なるべくその場から離れようと走り出した。

「くっそ、重ぇ」

 ふらつきながら通りを一目散に駆け出す。その背後ではイティアの頭上に光り輝く球体が出現していた。

「ライトニングボルトか!」

 球体は四方八方に放電し、小型の稲光が町を明滅させる。建物の屋根や街灯などに落雷し、白煙を上げて次々と破壊されていく。

「逃げられないよぉ!」

 エビ反りになったイティアは、反動をつけて電撃の塊を投げつける。イティアが放った瞬間、その球体は投網のように爆発的に拡散した。

「山陰千奥義・合!」

 放射状に広がる電撃の網にその身をさらけ出すようにすると、サヲングォンは両手を真横に広げる。拡散した電撃の触手は、その手のひらに吸い込まれるように消えていく。

 吸収されなかった分の電撃は周囲の建物に落ち、屋根や壁に次々と穴を穿っていく。シュバルトの周囲には瓦礫が降り注ぎ、中には頭ほどの大きさの破片も落ちてきて石畳には蜘蛛の巣状にひびが入る。

「うわっ、ちょ、まじかよ」

 通りを百メートルほど離れると、シュバルトは後ろを振り返る。暗い夜空に二つの光源が膨れあがっていく。それは夜空を焦がし、街の中心街は真昼のような明るさで照らされる。多くの人々が、その異様な光景を目撃した。

「お返しだ」

 サヲングォンは両手を交差させるように振り切る。二つのまばゆい光球は、絡み合いながらうねるように飛び、黄金の膜を張ったイティアの直前で爆発した。

 

 一瞬視界が真っ白になり、直後シュバルトの聴覚は高い耳鳴りを残してその機能を放棄する。両腕に抱えたキラとアヤナの身体が強い力でもぎ取られる。シュバルトの身体は巻き起こる暴風の中、錐もみしながら吹き飛ばされていった。


 街の中心に光のドームが形成され、地を揺るがす轟音と共に衝撃波が幾重にも折り重なって街を襲う。

 一際大きく膨れあがった光のドームが、高めた内圧を抑えきれなかったかのように弾けて消える。

 超高圧縮された衝撃と震動が周囲の建物群を一瞬にして砂へと変え、人々は苦痛を感じる間もなく気化していった。

次回は暇零さんですね。丸投げすみません>< よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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