最後に笑うのは誰だ的婚約破棄
「オリヴィア・フェルゼン公爵令嬢、君との婚約は解消したい」
王立学園の卒業パーティー。私は第一王女であり、王族として参加している。
王太子であるレイナード兄様が、婚約者であるオリヴィア様に向かって言い放つと、会場がしんと静まり返った。
「なぜなら、私は君より好きな人ができてしまったからだ。君と別れてここにいるセシリアと婚約したい!」
隣にいるピンク頭のセシリア様をぐいと引き寄せる。
要するに浮気してたってことだろうに、よくもまあ堂々と言えるものね。
「オリヴィア様、ごめんなさい……。でも私も殿下が好きなんです……」
さすがは婚約者がいる王太子に近づいた女。上目遣いにオリヴィア様を見ながら、いけしゃあしゃあと言う。
「あらおかしいわね、セシリア様はクロード王弟殿下がお好きだったはずでは?」
「なんだと」
「なんですって」
オリヴィア様の言葉に、兄様とセシリア様が顔色を変える。
「調べはついているんですのよ。あなたが王太子を誘惑したのはクロード様の命令なんでしょ? うまく婚約破棄をさせたらクロード様と結婚できるとか言い含められて」
「セシリア?」
まさかという顔でセシリア様を見る兄様。
「嘘よ! でまかせよ! レイナード様、私を信じてください!」
「そうだ! でたらめだ! 名誉毀損で訴えるぞ!」
セシリア様もクロード叔父様もあわてて否定する。
そこにさらにオリヴィア様が微笑みながら宣う。
「でも王太子を誘惑した子爵令嬢なんかと、王弟殿下が結婚するわけないじゃない。バカすぎて笑えるわ」
「え……」
「とにかく私はすでに、きっとこのまま廃嫡されるだろうレイナード様には見切りをつけて、第二王子のエリオット様との婚約を打診してるからどうでもいいけど」
「廃嫡……」
青くなる兄様。
「そっちこそバカじゃないの?」
対照的に、オリヴィア様を睨みつけるセシリア様。
「エリオット様が好きなのはベアトリス男爵令嬢よ! 身分的に一緒になれないけど、妻はお飾りにして公務だけをやらせて、ベアトリス様だけを愛すって言ってたわ!」
思わぬ反撃を受けてよろけるオリヴィア様と、勝ち誇るセシリア様。
「う……嘘よそんな」
「本当よ、ベアトリスから直接聞いたもの!」
その話を聞いていた国王陛下が、側に立つ第二王子エリオットを振り返る。
「そうなのかエリオット」
「いやその……あれですよ、行き違いがあるのかも……」
「行き違いですって!?」
会場の中からベアトリス様らしき令嬢が声を上げる。
「一生君だけを愛すって言ったくせに! 私のお腹には子供もいるのに!」
子供!?
会場がざわつく。婚約もしてないのに男爵令嬢との子供がいる?
エリオット兄様、何やってんの……。非難の目が、いっせいにエリオット兄様に向けられる。
「俺を裏切ってたのかベアトリス!」
ざわつく会場の中から別の声が上がる。
「俺の子だって言ったじゃないか! だから俺は、君のためになんでもしてきたのに!」
「ルーカス!? なんでいるの!?」
ええ~~~。ベアトリス様、ルーカスって男と第二王子と、二股かけてたの?
どっちの子なんだよ恐ろしいな!
騒然となった会場に、さらに別の令嬢がつかつかと進み出てきて言う。
「やっぱり浮気してたんですねルーカス様。病気の幼馴染の見舞いにいくとかいって、婚約者の私をないがしろにして……」
な、なんだって~~~! 婚約者がいるのに、ベアトリスと子供作ってたのかよルーカス!
ベアトリスに向いていた非難の目が、ルーカスに移る。
ええ~~~、なにこのカオス!
「でもそういうクロエ様も、アルゼル様を何度も呼び出して会ってたわよね?」
別の令嬢が進み出る。
また出た新キャラ! 新しく名前が出てきたアルゼル様って誰?!
そんでもって、ルーカスの婚約者はクロエっていうのか! 紹介乙!
「ルーカス様に冷遇されてることを、相談しただけよ! 文句を言われる筋合いはないわ!」
「私はアルゼル様の婚約者ですから、文句を言っても許されるのでは? なぜ婚約者のいるアルゼル様に相談を?」
なるほど、新キャラはアルゼル様の婚約者だったのね。でも彼女の名前はまだわからない!
「それは……」
「まあまあ、他に頼る人がいなかったんだろ。シャルロットもそんなに目くじらたてるなよ」
シャルロット! アルゼル様らしき人が、なだめに来てるから、きっとそう! 新キャラの名前はシャルロット!
「こんな女をかばうような男をうちの婿にはできませんわ。婚約はなかったことにして下さいませ」
「なんだそれ! そういうシャルロットこそ、騎士団長への推し活に夢中で、俺のことをないがしろにしてたくせに!」
「そ、それは! 騎士団長が悪いんです!」
え? なんとここで、愛妻家で有名な騎士団長の登場?!
王族の後ろに並ぶ騎士団長に注目が集まる。
「え? お、俺は、何も悪いことしてないよね?」
急に振られた騎士団長が動揺して、隣に並ぶ奥様の顔色を伺う。
シャルロットがあわてて弁解する。
「あまりにも魅力的だから! つい応援にいっちゃうけど! でもこれは浮気じゃないから!」
それを受けてアルゼルも弁解する。
「俺だって、相談にのってるだけで浮気じゃない!」
どうすんのこれ、という空気の中、騎士団長がおずおずと提案する。
「あの、じゃあ、似た者どうしってことで、ここは仲直りでいいんじゃない?」
あ、他は修羅場になりそうだけど、なんとなくこの2人は仲直りできそう、というほっとした空気が流れる。
そこで騎士団長の奥様がぼそりとつぶやく。
「そういうあなただって、自称サバサバ女と仲良くしてるくせに」
ほっとした空気が一気に不穏に!
「してないよ!」
「あらそう? いつも腕にべったりくっつかれて、にやにやしてたくせに」
「そんなわけないだろ! あんな色魔を相手にするほど愚かじゃないよ!」
「色魔?」
出た。騎士団の中から中央に進み出る新キャラ。これが自称サバサバ女かしら?
「私は男同士のつきあいのほうが楽なだけで、色魔じゃない!」
「だったら胸しまえ!」
大きすぎる胸を強調するように上着のボタンを外していた女性騎士は、すごすごと引き下がった。
何しに出てきたんだ。
「ええと、何の話してたんだっけ」
国王の声に、王妃が答える。
「とにかく、うちの息子2人はどっちもバカで、王弟であるクロード様も信用できないことがわかりましたわ」
よくわからないけど、第一王女の私が次期女王になることに決まったらしい。
漁夫の利っていうのかしらこれ。うふ。
10月23日 [日間]コメディー〔文芸〕 - 短編
で3位になってました! わーいありがとうございますー!(*'▽')
10月24日 [日間]コメディー〔文芸〕 - すべて
で1位になってました~! ほええ嬉しいです! ありがとうございます!( ;∀;)




