表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

【短編小説】アナル・ウヰスキー

掲載日:2026/04/07

 ここ最近なんとなく不調だったセクサロイドが動きを完全に停止した。

 もうちょいだったのに。

 腰を引くと乱春色の人造陰部から、まだ少し名残惜しそうな春劣が出てきた。白いオイルが垂れて布団を汚す。春劣がひとつ、頷くように拍子を打ってそのシミに頭をつけた。

 どうしたものか。

 セクサロイドはまるで現代アートのような姿勢で眠っている。白めに調整された皮膚は柔らかいが、春事の姿勢を保持した関節だけが固まっていた。


 おれはセクサロイドの乳首を指で弾いてみたが、やはり反応しないので髪を撫でてベッドを降りた。

 このままと言う訳にはいかない。買い替え時なのは分かっていた。それに、専用の名前を付けて呼ぶほど可愛がっていた訳でも無い。

 だが細かい産毛の光る滑らかな肌も、張りと抵抗が柔らかい肉質にも慣れ親しんでしまったのでまた修理を呼ぶだろう。

 それでも度々止まるようじゃ仕方が無いなと思いながら、修理と下取りを同時に調べて買い替えを視野に入れ始めた。


 

 昼過ぎに来た修理屋は意外にも女だった。モニター越しにそれを確認したおれは、やや億劫な気持ちで部屋着を羽織った。

 前回まで修理に来ていた若い男はどうしたのだろうか。仕事を辞めたのか、転勤になったのか。

 考えても仕方のないことを想像しながらドアを開けると、モニターで見た時と同じ姿勢で修理屋の女が立っている。

 胸元が閉まりきっていない作業着はシミひとつなく綺麗だったが、首元の汗が急いで来ただろう事を想起させた。


「お待たせしました」

 ややつり目気味だが大きな目を一瞬外して修理屋の女が頭を下げた。作業着の胸元が開き、谷間から細かい鎖のチョーカーが垂れて微かな音を立てる。

「どうぞ」

 ドアを開けて招き入れると、修理屋の女は「失礼します」と小さな声で言っておれの傍を通り抜けた。

 厭味の無い程度に漂う琥珀系の香水と甘めの体臭が疲労や緊張と混ざった匂いに、軽い眩暈を憶える。


 相変わらずベッドで寝たままのセクサロイドと、それを覗き込むように見ている修理屋の女に後ろから声をかけた。

「少し古いタイプなんでね、修理効きますか」

 修理屋の女はセクサロイドをあちこち見て触りながら「まぁ、たぶん大丈夫です」と言って作業を始めた。

 緩めの作業着越しにも分かる女の細い背中は、それでも美しさが見てとれた。

 首筋から覗く肌も質感が良さそうで、きっと背中越しに胸を揉んでも心地よいだろう。沈み込むようでいて芯の方にある硬さを愉しみながら細い首筋を食む。青白い嬌声を聞きながら突起を指で弄ぶ。胸から臍へ、臍から下腹部に指を滑らせて陰部に指を……。


 途端におれは考えるのを止めた。

 そこにいる作業着の女はセクサロイドじゃない。人間の女だ。人造じゃない陰部がそこにあるし、体毛だってあるかも知れない。

 そこに触れるだって?

 冗談じゃない。人体から出る体液でお互いの指や春劣を汚し合うなんて不潔だ。そんな事をするくらいならケツの穴でウイスキーでも飲んだ方がマシだ。


「これ、だいぶ古いタイプですね」

 修理屋の女が振り向いた。いつの間にか起立していた春劣を一瞬だけ見て、またおれに視線を戻すと「何回か修理してますよね。中のパーツもかなり新しいのに変わってますし」と言った。

 修理屋の女もおれと同じ事を考えただろう。おれと春を交える?冗談じゃない。あんな手入れの行き届かないものを体内に?それならウイスキーを……。


「断線箇所のケーブルと接続端子、センサーは交換しておきました」

 これで中身だけはほぼ最新型ですね、と修理屋の女が笑った。その顔に春劣を寄せて白濁で飾る想像をしてみたが、やはり生きている人間は汚いので不愉快になってやめた。

「次は買い替えますよ」

 あんたに似ているタイプの型番はあるのかい?と訊こうか迷って、曖昧に笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ