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果てしない旅   作者: San


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10/15

果てしない旅 10

海から離れ、内陸へ向かって歩き続けた。


 森は深くなり、やがて岩山が現れる。


 その山肌に、裂け目のような影があった。


 洞窟。


 口を開けたまま、何も語らない黒。


 私は立ち止まる。


 この星の内部を、まだほとんど知らない。


 ただ、それだけの理由で中へ入った。



 最初は、光が背中にあった。


 足元は湿っている。

 水が滴り、一定の間隔で音を刻む。


 奥へ進むほど、外の音は消える。


 風も、葉の擦れる音もない。


 あるのは、自分の足音だけ。


 やがて分岐が現れる。


 右。

 左。

 下へ続く傾斜。


 私は迷わず左へ進む。


 理由はない。



 どれほど歩いただろう。


 時間は測れない。


 洞窟は広がり、天井は高くなり、巨大な空間へと変わる。


 地面には白い石柱が林立し、天井からは無数の鍾乳石が垂れている。


 地下の大聖堂のようだ。


 私は中央まで歩く。


 音が反響する。


 わずかな動きが、何倍にもなって返る。


 孤独が、増幅される。



 戻ろうと振り返る。


 来た道が、分からない。


 同じような岩壁。

 同じような影。

 同じ湿り気。


 目印はない。


 私は別の通路へ進む。


 また分岐。


 また広間。


 似たような景色が続く。



 やがて、完全な闇に包まれる。


 外の光は届かない。


 私は立ち止まる。


 暗闇は、宇宙とは違う。


 宇宙は広い。

 だがここは、狭い。


 圧迫する闇。


 空気はある。

 重力もある。


 だが出口がない。



 私は歩き続ける。


 疲れは意味を持たない。

 飢えも、渇きも、時間と共に再生する。


 だが、方向感覚は再生しない。


 同じ場所を回っている気がする。


 足元に、自分の足跡を見つける。


 乾いた泥に刻まれた、同じ形。


 私は円を描いていた。



 座る。


 闇の中で。


 目を閉じても、開けても同じだ。


 音だけがある。


 滴る水。

 遠くで崩れる石。


 この星の内部は、静かに動いている。


 私は動かない。



 どれほどの時間が過ぎたか分からない。


 洞窟の中で、季節は感じられない。


 外の進化も、海の変化も、ここからは見えない。


 私は、初めて「見守れない」場所にいる。


 それが、奇妙だった。



 あるとき、足元に微かな光を見つける。


 苔のようなものが、淡く発光している。


 私はその光を辿る。


 壁にも、天井にも、点々と灯りがある。


 地下の星空。


 それを目印に、進む。



 通路は狭くなり、やがて水の流れる音が強くなる。


 地下河川。


 黒い水が、一定の方向へ流れている。


 私は流れに沿って歩く。


 水は外へ向かうはずだ。


 そうであってほしい、というだけだ。



 何度も転び、

 何度も壁にぶつかり、

 それでも歩く。


 やがて、空気が変わる。


 わずかに、風。


 冷たい外気。


 前方に、薄い灰色。


 光。



 洞窟を抜けたとき、私は眩しさに目を細める。


 空がある。


 雲が流れている。


 風が、頬を撫でる。


 私は振り返る。


 山は何も語らない。


 中で迷っていた時間が、どれほどだったのか分からない。


 だが森は少し変わっている。

 木々は高くなり、見慣れない植物が増えている。


 星は、私がいないあいだも進んでいた。



 閉じ込められても、終わらない。


 出られなくても、時間は止まらない。


 私はまた歩く。


 この星の内部も、外部も、すべてが通過点だ。


 迷うことも、この長い旅の一部に過ぎない。


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