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果てしない旅   作者: San


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果てしない旅 1

宇宙には、風がない。


それでも、流されている感覚はある。


私は今、星と星のあいだを漂っている。

身体は凍りついているはずなのに、意識だけが沈まない。凍結した皮膚の下で、時間だけがゆっくりと進んでいる。


どれくらい経ったのかは分からない。

千年か、百万年か。あるいは、その何倍か。


私は死なない。


それだけは知っている。

どうして死なないのかは知らない。

なぜ宇宙にいるのかも知らない。


ただ――地球を探している。


なぜ探しているのかは、思い出せない。



最初に辿り着いた惑星は、青くなかった。


灰色の雲に覆われた、分厚い大気の星だった。

私は重力に引かれ、長い漂流の末にその星へ落ちた。


衝突の瞬間、身体は砕け散った。骨も、臓器も、意味をなさないほどに。

けれど、私は目を開けた。


地面は柔らかい泥のような物質で、足を沈めると、ゆっくりと戻ってくる。空は低く、雲は絶えず流れ、雷が静かに光る。音はくぐもり、世界は常に湿っていた。


生物はいた。


透明な膜のようなものが地面を滑り、互いに触れ合い、光を発していた。争いはなく、捕食もない。ただ、増え、重なり、溶け合い、分かれる。


私はその中を歩いた。

彼らは私を避けもしなければ、迎えもしない。ただ存在を許した。


長い時間をそこで過ごした。

この星の時間の単位がどれほどかは分からないが、雲の動きが少しずつ遅くなっていくのを感じた。


やがて、空が薄くなった。


大気が宇宙へと逃げていったのだ。

雷は消え、膜の生物たちは乾き、動きを止めた。


私は最後までそこにいた。

ひび割れた大地の上で、空が完全に黒へ変わる瞬間を見た。


星は冷え、静まり、やがて隕石に削られ、砕け、輪になった。


私はその輪の中を、また流されていった。


悲しかった。


なぜかは分からない。

この星は地球ではなかったのに。



次に辿り着いたのは、光の多い星だった。


巨大な恒星の近くを公転するその惑星は、昼が長く、夜が短い。地面は赤く、空は金色に揺らいでいた。


そこには文明があった。


塔のような構造物が並び、空を滑る乗り物が行き交い、意志を持つ存在たちが声を交わしていた。

彼らは二足で立ち、硬い外殻に包まれた身体を持ち、目は三つあった。


私は彼らに見つかった。


彼らは私を研究した。

刃物で切り、火で焼き、深くまで分解した。


私は死ななかった。


彼らは恐れた。

そして崇めた。


私は彼らの神になった。望んでいないのに。


広場に立たされ、問いを投げられた。


「どこから来たのか」

「何のために存在するのか」


私は答えられなかった。


ただ一つ、口にした言葉があった。


「地球を探している」


それが何なのかも分からないのに。


彼らはその言葉を神託として受け取り、空へ向けて巨大な観測装置を作った。

私と共に、地球を探そうとした。


長い時間が流れた。


文明は発展し、やがて分裂した。

私を神とする派と、危険な異物とする派。


争いが始まった。


塔は崩れ、空は煙で覆われ、赤い地面はさらに濃く染まった。


私は戦場の中心で立ち尽くしていた。

何も止められなかった。


やがて恒星が不安定になった。

巨大なフレアが惑星を焼き払った。


都市も、思想も、三つの目も、すべてが蒸発した。


私は焼ける地表に横たわり、星の表面が溶けていくのを見た。


熱が消え、星がただの黒い岩になった後、私はまた宇宙へ放り出された。


私は神ではなかった。


ただ、残された。



何度も、何度も、繰り返した。


氷に覆われた静かな星。

内部が液体金属で満たされた重い星。

常に嵐が吹き荒れるガスの海の星。

植物だけが支配する緑の星。


私はそこに落ち、歩き、見守り、そして見送った。


星は必ず終わる。


衝突で砕けるもの。

恒星に呑まれるもの。

内部から崩壊するもの。

静かに冷えていくもの。


私はすべてを見た。


時間は積み重なり、感情は薄れていった。

悲しみはやがて鈍くなり、驚きは減り、期待は小さくなった。


それでも――


どこかで、青い星を探している。


なぜ青なのかは分からない。

なぜ懐かしいのかも分からない。


ただ、探している。



あるとき、私は恒星の爆発に巻き込まれた。


超新星の光が、宇宙を白く染めた。


衝撃波に弾き飛ばされ、私は氷塊の中に閉じ込められた。

身体は完全に凍結し、意識もほとんど閉ざされた。


それでも、消えなかった。


氷は彗星となり、何億年もかけて銀河を横切った。


そのあいだ、私はほとんど眠っていた。

夢も見ず、ただ、遠くに微かな青を思い浮かべながら。


なぜ青なのだろう。


それは空の色だろうか。

それとも海だろうか。


海。


その言葉が、かすかに胸に残った。



やがて彗星は、ひとつの恒星系に捕らえられた。


私は再び落ちる。


大気圏に突入する熱。

氷が砕け、私は炎の中を通り抜けた。


下には――


青があった。


広大な水。

白い雲。

緑と茶の大地。


鼓動のような何かが、胸の奥で鳴った。


私は海に落ちた。


塩の味。

波の揺れ。

太陽の反射。


涙のような感覚があった。

それが涙なのかどうかも分からない。


ここが地球なのか。


確信はない。

名前を思い出せない。


ただ、懐かしい。

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