創造神と転生少年
俺の名前は天音望偉。
高校二年、身長160センチ。顔はよく「女の子みたい」と言われる。……正直、褒められてる気はしない。
で、その俺は──死んだ。
信号無視のトラックに突っ込まれて、視界が真っ白。
次に気づいた時、俺は真っ白な空間に立っていた。
そこにいたのは、白銀の髭をたたえた威厳ある男。
瞳は湖のように澄み、声は不思議と胸に響く。
「……目を覚ましたか、人の子よ」
「……誰?」
「我は創造を司る神──イデアス」
創造神。肩書きからしてすでに怪しい。
イデアスは淡々と告げる。
「我ら神々は争っている。だが、神自らが戦えば《エルディア》そのものが滅ぶ。ゆえにそれは御法度。
だから我らは“駒”を選び、この世界へ送り込み、代理として戦わせる」
「……なるほど。俺がその駒ってわけか」
「そうだ。お前には我の権能──《創造》を授ける」
イデアスが手をかざすと、光が俺の体を包んだ。
「思い描いたものを形に変える力。
ただし“お前が知っているもの”だけだ。
見たことも聞いたこともないものは創れぬ。だが、詠唱も道具もいらぬ。ただ思えばよい」
俺は口角を上げた。
「……知ってるものなら何でも作れる、か。十分すぎるな」
イデアスは頷き、低い声で続ける。
「忘れるな。お前は我の駒だ。《エルディア》で勝ち残ることこそが役目だ」
──駒、ね。
俺は心の中で鼻で笑った。
「……駒のつもりはねぇ。利用するのは──俺の方だ」
光が弾け、意識は再び途切れた。
◇ ◇ ◇
「……おお、本当に草原だ」
目を開けると、青空とどこまでも広がる緑。
ここが、異世界。
ラノベで見飽きたはずの景色なのに、実際に立つと胸が高鳴る。
とりあえず試すか。
「……白米と味噌汁」
ポン、と現れた。湯気まで完璧。匂いも味も、俺が知ってる朝ごはんそのまま。
「……マジで出た。イデアス、グッジョブ」
椅子、机、果物ジュース、焚き火セット。
次々と作っては消し、また別の物を試す。
時間を忘れて没頭しているうちに、太陽は傾き、草原の影は長く伸びていた。
「……楽しくて時間忘れてたわ」
このまま制服で歩くのは怪しまれる。
俺は黒いローブを創造した。深いフード付きで顔まで隠れる仕様。
「これなら冒険者っぽい。怪しさは二倍だけど」
さらに布団を出して横になる。
星空を見上げ、小さく呟いた。
「……明日から異世界ライフ開始、っと」
こうして俺は、創造神イデアスに送り込まれた世界──《エルディア》での二度目の人生を歩み始めた。




