「罰の部屋ってギャグかよ」
初めての試みで、物語の入り口からちょっとギャグすぎる罰の部屋パートを描いてしまいました。読んでてどう感じたか、正直な意見を聞かせてもらえると嬉しいです。これからも笑いと緊張を織り交ぜて頑張ります!
「さ、立花くん……“罰の部屋”に行こうか?」
笑顔でそう言ったのは、お面の男ではなく、謎の全身黒タイツに仮面の“ゲームマスター”。名前すら教えてくれない、急に出てきたヤバい奴である。
……え? 俺? え? なに? 何した俺!?
「処刑されなかったからだよ」
ゲームマスターは言葉をつづけた。
「初回から処刑はゲーム性が終わっていると僕はおもうんだよね」
投票で一番得票が多かったワースト一位は“処刑”される。
ワースト二位は“罰の部屋”に送られる。
つまり、最下位は処刑、次に悪い成績は罰の部屋行きだ。
「だから立花くん、おまえは疑われてはいたけど処刑は免れた。けど“罰”を受けることになったわけさ」
俺は頭を抱えた。
「……はあ、そんなルール、まずさルールブックとかないの……?」
「そこはもう、細かいことは気にしないでほしいな」
黒タイツの仮面男は薄笑いを浮かべた。
こうして俺の“罰の部屋”行きが決まった。
【罰の部屋】
“処刑”には至らなかったが、複数人に疑われた者には“罰”が与えられます。
生き延びたければ、全身で反省せよ!
反省ってなんだよ……!
黒タイツに連れられて、ホテルのエレベーターに乗る。行き先のボタンは「B4」――地下一体どこまであるんだよこのホテル。ていうかそんな階、さっきの案内図になかったぞ。
で、着いた先は……想像の100倍ヤバい空間だった。
■“罰の部屋” in 地下B4
真っ白な部屋。床も壁も天井も、なんか蛍光灯的な光源も、全部まっしろ。目がチカチカする。
「立花ユウトくん、反省タイムの始まりです」
仮面男がそう言ったかと思うと、天井からスピーカー音声が響く。
「初回の罰ゲームは~~全身こんにゃく地獄!!」
「……え?」
ぐにゅっ。
床が突然波打ち、足元がぬるっと滑った。
「うわっ!?」
転んだ。痛くはない。柔らかい。……こんにゃくだ。
見渡せば、床一面がトランポリンみたいなこんにゃく素材になってる。いや意味わかんない。なんだこれ。どんな予算だよ。
「全身で、ぬるぬるしていただきます」
「だれ得だよ!!!!」
しかもこれ、ビチャビチャにぬるぬるしてるだけじゃなくて、なんか香りつき。レモンミントみたいな香り。え、ちょっとさわやか……いや違う、そんな問題じゃない。
転がって、滑って、転んで、ぬるぬるになって、床に顔をこすりつけたら、そこにLEDで文字が浮かんだ。
【恥をかいて、己を知れ】
「誰がうまいこと言えって言ったよ!!!」
全身どころか、精神までぬるぬるになった俺は、白い部屋の隅っこで体育座りしたまま、しばらく天井を見ていた。
人生って、なんだろうな。
* * *
翌朝。
俺はスッキリした顔で、クラスに戻ってきた。
いや、ほんとは疲労困憊だったし、全身がまだレモンミントの香りに包まれてたんだけど、ここで弱みを見せたら食われる。モブは笑ってごまかすしかないのだ。
「おはようございまーす! 立花ユウト、帰還しました〜!」
数人がチラ見して、あとは無関心。
モブがモブらしく帰ってきても、世界は優しくない。
でもなぜか、その中に“本来の主人公ポジ”――神城蓮がいた。
「よォ、こんにゃく野郎」
「いやその呼び方やめて!? 定着したら卒業まで残るやつだよそれ!?」
「別に気にすんなよ。透明感出てきたじゃん、おまえ」
……おまえにだけは言われたくなかった。
この神城蓮。顔よし、運動神経よし、成績よし、女子にモテモテ、でも性格最悪っていう、テンプレみたいな“主人公ポジ”。何かと俺のことをイジってくるくせに、絶妙に教師の前では猫をかぶる小悪党だ。
「で? どうだった罰の部屋?」
「ぬるぬるしてた」
「へえ、やっぱド変態なんだなおまえ」
「誤解の上に偏見を重ねるなよ!!」
* * *
そんな感じで朝のホームルームが始まり……るかと思ったら、またあの黒タイツが出てきやがった。
担任すら存在感を消して、タイツに場を譲る始末。どんだけ支配力あるんだよ。
「おはよう、2年C組のみんな」
スピーカーから、女とも男ともつかない機械音声。
そして、例によって例のごとく……“第1ゲーム”の時間がやってきた。
立花くん、ついに罰の部屋へ。モブの宿命とはいえ、罰ゲームのセンスだけは最高ですよね。次回から本格的にデスゲームが始まるので、どうかお付き合いください!よろしくお願いします。