下等生物
本当にさ。
私からしたら、全員下等生物にしか見えなかったんです。いや、正確には貴君以外が。
だから、貴方が居なくなった世界でわざわざ下等生物と共に生きていく必要無いですよね。
私は机の脚にこびり付いた、赤黒い醜い血を撫でた。酷く気持ち悪いと感じたと同時に、快感がこみ上げて来た。
あぁ、やっちゃったぜ。
子供達の笑う声が膨らんで、私を押しつぶして。でも、それは叫び声に変った。私がそれを叫びに変えてやった。ざまぁみろ。私を不幸にした罰だ。
目の前に見えるウザくて醜い彼奴ら。
貴君に汚い手で触れ、貴方に汚らわしい声で話し掛ける彼奴ら、全員嫌いだった。でも、そんな日々は唐突に終わった。
貴君は死んだ。
自殺だった。
原因は分からない。それに、部屋で宙ぶらりんになっている所を母親が発見したことしか、私は知らない。
嗚呼……、何で助けられなかったんだろう。何でもっと話そうと思わなかったんだろう。何で……何で……何で好きだって言わなかったんだろう……。
不意になれたら良かった。だけど、無理だった。貴君のあの楽し気な表情が、まだ心臓に深く刺さって、抉っている。
座り込み、体の力が抜けたせいか涙が溢れた。
犯罪者の私が泣いている状況を考えると、少し笑いも零れた。何を被害者ぶっているのだろう。
それとも、私が殺したのかな。貴君を。
若しかしたら貴君は私の好意に気が付いていたの?それの重たさに押しつぶされてしまったの?それとも、気持ち悪さから?
でも、そんな中嬉しいと思う私も居た。これで自殺する口実が出来るって。自殺に踏み切れるようになるって思ってしまった。
多分、腐っているんだろうね、私って。
いや、もうそんな事どうでも良いか。
外から多数の走っている足音が聞こえてくる。誰だろう。先生?警察?
見つかる前にさっさと死のう。
自殺すると地獄に行くとか言われていたよね。それが本当なら良いな。貴君と地獄に堕ちたい。
絶対に地獄に堕ちてね、私と。