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第八回 沼魔の請願に応じて 湿地を改め暮し易くすること

戦の翌日、俺が図面と格闘していると、ひとりの魔物が控えの間に訪ねてきた。


ぬるり、とした足音と共に現れたのは、全身を苔むした泥人形のような魔物――ヌメルだった。


「ユースケさま……お話、あるです……」


「ん? ヌメルか。何か困りごとか?」


ヌメルたち“沼の民”は、竜王城の北側の低湿地に集落を持っているが、常に湿気と腐臭に悩まされていた。


「我らの棲み処……足元ぐじゅぐじゅで……子供たち、病なる……」


「なるほどな。排水がうまくいってないのか」


俺は早速、グロズとバンデンを連れて現地調査に向かった。


「うへえ……これはひどい」


リリナも顔をしかめる。足元の泥は膝まで埋まりそうな粘土質で、雨が降ればすぐ水没する状態だ。


「勾配がないんだ。水が溜まるのは当然だな」


俺は持参した竹竿で仮の水準器を作り、数ヶ所の高低差を調べた。


「やはり地形が完全に盆地状になってる……。排水路を掘って、外の川まで導こう」


バンデンの魔法で土地を切り開き、さらに川の魔物リュガの協力で堤を作って排水を導く。


「ユースケさま……こんなにも……」


ヌメルが感極まって言葉を詰まらせる。


「これで風通しもよくなる。仮設の住居も高床式に建て替えよう。材料は……グロズ、頼む」


「おう、木材のストックを持ってくる!」


二日後、ヌメルたちの集落は見違えるように清潔になった。


「おらぁ、沼の底が見えるなんて初めてだぁ……」


子供たちが泥ではなく木の床の上で遊んでいる。


「これで一つ、“人が暮らせる町”になったな」


ヌメルはぺこりと深く頭を下げた。


「ユースケさま……我ら、今後も力尽くして恩返し……する、です」


「いや、力は借りるさ。ここに暮らす皆が、守り手であり、造り手なんだ」


築くのは、ただの城ではない。


――魔物たちが、共に生きる世界そのものだ。

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