表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/46

第四十六回 崖を穿ちて道を繕い 風穴を通して機を伺うこと

北東の監視塔より報せあり。

「崖下の旧道、先日より岩崩れにて通行困難なまま。敵が偵察を試みた痕跡もあるため、再整備の必要あり」と。


あの崖道は、地形の妙で風の通りが読めず、音も届きにくい。

だからこそ、俺は手を入れるのを後回しにしていたが、ここに来て“放置”が危険と化した。


「崖に張りつくように道を穿つのは、そう簡単ではないが……」

「むしろそれが利点になるやもしれぬ」

グリムリッチが地形図を指でなぞる。

「敵が通るには厳しく、味方が通れば速やか。一方通行の細道こそ、備えとなる」


俺は崖面に沿うかたちで、魔石ブロックを段状に組む「蛇腹道」の構想を立てた。

足場を狭くし、万一の際には橋脚ごと崩せるようにする。

通路の裏には風穴を通し、風の流れで敵の接近を“風音”として察知できるよう仕組んだ。


「風が変われば、敵が近い。それを感じられるよう、通路に“耳”をつけようぜ」


小鬼たちが、通路の途中にくぼみを彫り、“風鳴り窓”と呼ばれる魔道板を設置する。

ここを風が通ると、鳴管が低く唸る仕組みだ。

それは音ではなく“兆し”だった。


「耳で聞くのではなく、肌で読む。魔界の戦術は、五感すべてで成り立つのですな」

グリムリッチが感心して呟く。


崖道の修復には、岩族の魔物たちも協力した。

地脈を読み、落石の危険を避けながら施工は数日で完了。


出来上がった道は、見る者に「ここは通りたくない」と思わせるほどの切り立った構造だった。

だがそれこそが、防衛線の真価だった。


「ここを敵が越えるときは──戦の口火が切られる時だ」

俺は風穴から抜ける冷気を手のひらで感じながら、そう呟いた。


崖は静かだ。

だが、吹き抜ける風の中に、微かな戦の気配が混じりはじめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ