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第四十五回 風音を裂きて声を通し 遠望の塔より火光を交すこと

地下の備えが整う一方で、地上の連絡系統にも課題が残っていた。

特に外縁の監視塔との通信は、霧や岩山のせいで声が届かず、伝令を走らせるにも時間がかかる。


「戦になる前に、何とかしときてえな」

俺はそう呟き、監視塔の改修に乗り出した。


「声を飛ばすのなら、風の通り道を利用するがよい」

グリムリッチが魔術師たちの記録から古い技術を引っ張り出してきた。

魔界ではかつて“風導管”と呼ばれる魔力管を通じて、遠距離の音声を伝える仕組みがあったという。


「これを塔に組み込む?」

「いや、地形に沿って。岩場の隙間と谷筋に音管を這わせ、風の力で声を運ぶのです」


俺はその仕組みに感心しつつ、現代で言えば“音響ホーン”のような構造を監視塔の各所に取りつけた。

魔力石で調律された管は、低く籠った声も遠くへ届かせる。


同時に、夜間の合図として“火光の術”も準備した。

塔の上に設置した小型の魔導灯に、三種の発光パターンを設定する。


 ― 一閃:敵影を認めた合図

 ― 二閃:地下への異変

 ― 点滅:味方の巡回


この光は、他の塔の灯火管制と連動し、遠く離れた地点にも伝えられるよう調整された。


「言葉は風に乗せ、光は闇を裂いて知らせる。これで、伝令よりも早く意志が届くようになります」


「古いもんも、手入れすりゃ立派な武器になるもんだな」

俺は満足げに言った。


こうして、監視塔はただの見張り場ではなくなった。

塔と塔とを結ぶ風と光の網は、魔王軍の神経ともいえる役割を果たしはじめていた。


風音が伝う。

光が走る。

まだ誰も傷ついてはいないが、確かに、戦の輪郭がそこに現れつつあった。



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