第四回 若輩術士城に遣わされ 祖父の呪を受け継ぐこと
崩れた城壁の修復が一段落したころ、竜王城に新たな客人が現れた。
「そなたが、現場の工師か。ユースケと申すな?」
声をかけてきたのは、薄緑のローブをまとった十代半ばの少女だった。背丈は小柄、だがその瞳には妙に老成した光がある。
「君は……?」
「わたくしはリリナ。ザイゴルフの孫です」
その名を聞いた瞬間、周囲の魔物たちがざわついた。ザイゴルフ──かつて竜王に仕えた古の呪術師。その名は、この地でも伝説として残っているらしい。
「祖父はもう、体が利かぬゆえ。わたくしが代理として参りました」
「なるほどな……でも、君、けっこう若──」
「技術に年齢は関係ありません」
ピシャリと言われて俺は苦笑いする。
リリナは祖父譲りの霊視の力を持っており、地脈の流れや魔力の歪みを直感的に読み取ることができた。
「ここ、魔力の流れが渦を巻いてます。塔を建てるなら、もう少し東の台地のほうが良いでしょう」
俺は驚かされた。リリナの指摘は、俺が魔力探査と観測に苦戦していた箇所と、ぴたり一致していた。
「すごいな……まるでMRIみたいな感覚か」
「えむあー……なんですって?」
「いや、なんでもない」
この少女は、確かに使える──いや、いっしょにやるべき仲間だと、俺は感じた。
そして、次なる段階へと踏み出す。