第三十九回 軍師謀を巡らせて補給を整え 倉を築きて戦備を支うこと
魔王軍の兵力が増し、遠征部隊や見張りの数も拡充されるなかで、補給路の整備と物資管理が急務となった。
「いざ戦となれば、矢も兵糧もあっという間に尽きる。戦は兵の数だけじゃ勝てぬ」
そう言ったのはグリムリッチだ。珍しく自ら提案を持って現れた。
「補給庫を築きましょう。城内と、谷を越えた麓の数か所に分散して。敵の襲来や略奪に備え、経路も複数整えておくべきです」
「なるほどな。分散すりゃ一つ潰されても致命傷にはならねえ。だが山道を通すとなると、橋と舗装もいるぞ」
俺は風雨に耐える魔石ブロックの舗装と、ゴーレムが運搬できる幅の木橋を設計した。橋脚は地元の石工魔族たちが担い、道の舗装はグリムリッチが管理する小鬼たちが分担。
さらに、グリムリッチは物流を円滑にするために「補給部隊」の結成を提案した。各地の魔物たちに役割を振り分け、空輸に長けたハーピー族、地中輸送を担うモグラ族、重量物を運ぶゴーレムなど、特徴を活かした編成がなされた。
「この者たちに補給任務を教えよ。戦は、戦場に着く前から始まっておる」
その言葉通り、部隊は次第に自発的な工夫と連携を見せはじめ、補給は単なる物資の移動ではなく、戦の根幹としての重みを帯びていった。
建設が進むにつれ、各地の魔物たちが自ら食糧や資材を搬入するようになり、補給庫は単なる倉庫ではなく、交流と協力の拠点となっていった。
「貯えは力なり、物流は命なり。これぞ影の軍略というやつだ」
グリムリッチが小さく笑い、俺も頷いた。
「剣や魔法だけじゃ勝てねえ。兵が腹を空かせりゃ士気も落ちる。こいつは、勝ちへの礎ってやつだ」
こうして、竜王軍はただ戦うだけではなく、備えを重ねる力を得ていった。




