第三十八回 竜王城下に衛所を設け 乱雑なる治安を正すこと
竜王城の復興とともに城下町にも活気が戻ってきた。各地から魔物たちが集まり、物資と労働力が流れ込み、露天や遊芸もにぎわいを見せていた。だがその反動で、喧嘩や盗難、縄張り争いといった騒ぎも急増していた。
「ユースケ様、さきほどもゴブリン二匹が角付き合いを……もう手に負えませんわ!」
リリナが青い顔で訴えてくる。俺は頭を掻いた。
「そりゃまあ、人も魔物も増えりゃ、揉め事も起きる。なら、ちゃんと治安を守る場所をつくるしかねえな」
とはいえ、今から立派な詰所を建てる余裕はない。資材も人手も足りないし、何より時間がねえ。考えた末に、俺は現代日本の工事現場で見慣れたものを思い出した。
「プレハブだ。あれなら骨組みと板材だけで一日で建つ。臨時の衛所にはうってつけだ」
最初に選ばれたのは、城下の中央通り沿い、かつて井戸番小屋のあった場所。ゴーレムたちに骨組みを組ませ、妖術師の補助で屋根と壁を瞬時に設置。床には防湿処理を施し、戸口には見張り役のオークを配置した。
「なんだこりゃ、紙の箱か?」「いや、すぐ壊れるぞ」「でも中は意外とあったかいな……」
集まってきた魔物たちは最初こそ疑念を抱いていたが、簡素ながらしっかりした造りと、夜でも明かりが灯る利便性に驚いていた。
やがて衛所には日替わりで見回り担当が詰め、簡易な牢も設置された。コボルト族の若者たちが訓練を受け、街の巡回にも乗り出すようになると、喧嘩の数もぐっと減った。
「魔物だからって好き勝手していいわけじゃねえ。住むってのは、守るってことでもあるんだよ」
そう呟いた俺の背中を、通りすがりのリリナがぽんと叩いた。
「なんだか、ほんとうに町らしくなってきましたわね」
俺はちょっとだけ胸を張って答えた。
「まだ始まったばかりだ。これから、もっと良くなる」




