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第三十三回 廃屋に息吹を戻し 市の賑わいを再び起こせしこと

南門前に、市場があった。


いや――「かつて、市場であった場所」と言ったほうが正しい。木造の粗末な屋根は朽ちかけ、石畳は草に覆われ、骨組みだけが風雨に晒されていた。


その姿に、俺は「再生」を選んだ。


「壊すのは簡単だ。だが、残すべきものはある」


そう言った俺に、最初に反発したのは一人の老人だった。長い白髭を湛えた骨細の魔族で、かつてこの市場で野菜を売っていたという。


「若いの、あれはもう駄目じゃ。夢も終いじゃよ」


だが、その目には消えない灯があった。俺はそれを見逃さなかった。


――再生しよう。すべてを壊すんじゃない。


俺は古民家再生の技法を応用し、構造から見直した。梁や柱の芯を検査し、補強材を仕込み、湿気対策にスライム族を導入。ガーゴイルが屋根を補修し、ラダック族が石畳を掘り返す。


このとき、リリナが自ら動いた。


「ユースケ、屋台の配置、風通しと日当たりを考えて変えた方がいいわ。前は西日が強すぎて、夕方に誰も来なくなってたって記録があるの」


かつての市場の利用記録を調べ上げ、効率的な導線や陳列棚の高さ、客の滞在時間まで分析してきたのだ。


「ついでに、子ども向けの小さな見世物小屋も設けてみたの。退屈させないための仕掛けよ」


その意見を採用してからというもの、屋台の売り上げは日増しに伸び、市場に子どもたちの笑い声が響くようになった。


古びた屋台が一つ、また一つと再生され、やがて市場に人々が戻ってきた。


「……わしの店も、出してみるかの」


老人は笑った。その背中は、少しだけ若返ったように見えた。


「古きを温ね、新しきを知る」。建築とは、魂の継承でもあるのだ。


そうして、竜王城の南門に新たな市が生まれた。

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