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第三十二回 偽報の灯に惑い 誤報にて夜を駆けしこと

深夜、竜王城の西の空に火の粉のような閃光が走った。


「狼煙だ! 西の監視塔から!」


警鐘が打ち鳴らされ、魔物たちが寝所から飛び起きた。城内は一瞬で混乱に包まれた。急報を受けて俺も現場に駆けつける。


「ユースケ様、敵襲かと……」


報せに来たのはミラだった。その額には薄く汗が浮かび、声も震えている。


「……おそらく違う」


俺は塔の方向を見据えた。昼間、ガーゴイルたちの飛行訓練が行われていたのが、まさにその区域だった。


「リリナ、昼の訓練で旧式の火符、使ってたよな?」


「ええ。魔力制御の補助に一時的に……まさか、それが……?」


「引火した可能性が高い。あれは炎系魔法に過敏に反応するんだ」


翌朝、調査によって真相が明らかになった。飛行訓練中のガーゴイルが着地の際に魔力を誤って噴出し、旧式の火符に干渉。誤って狼煙信号を発してしまったのだった。


「まったく……紛らわしいわね」


リリナが怒るのも無理はない。だが、これは俺の落ち度でもある。情報伝達系の整備が甘かった。


「ならば、管制塔を作ろう」


俺はその場で設計案を練り始めた。狼煙・合図灯・音鐘などを統一管理し、誤報を防ぐ情報制御塔――名付けて「警戒管制塔」だ。


竜王もこれに同意した。


「朕が望むのは、混乱なき守りぞ」


数日後、警戒管制塔の建設が始まった。視界の開ける高台に据えられたその塔は、昼夜を問わず連携魔法によって情報の送受信を行える仕組みだ。灯火の色、音の種類、さらには専用の使い魔を使った伝令ルートの整備も含まれた。


「これなら、誤報は格段に減るだろう」


完成式典の夜、リリナと並んで空を見上げた。


「……でも、見て」


空の彼方に、光点がひとつ、遠くに揺れていた。


「あれも、訓練か?」


「……わからない。でも、今度は――本物かもね」


その言葉は、静かに闇夜へと溶けていった。



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