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第三十一回 天馬に跨る影迫り 空飛ぶ石兵を弾き出せしこと

それは雷鳴のごとき羽音だった。朝霧の中、突然、空気を裂くような音が響いた。竜王城の天守を越えるような高度を、銀翼の軍馬が滑空し、深紅のマントを翻した影がこちらを睨み下ろしていた。


「……また来たか」


俺は唇を引き結んだ。以前、天馬に乗った勇者側の偵察が飛来したことを受けて監視塔を設けてはいたが、あれはあくまで目視による早期警戒のためのもの。空からの本格的な襲撃に対し、竜王城には今なお防備が不十分だった。


「迎撃の手段が、必要だな」


俺のつぶやきに、竜王が重々しく頷く。


「朕も、空を射抜く牙を欲しておった」


こうして俺たちは、空中からの侵入に対応するべく、ガーゴイルを射出するための巨大なカタパルト――飛石楼の建造に踏み切ることとなった。


飛行可能なガーゴイルたちに、迎撃機の役目を担わせる。だが、問題は多かった。彼らの滑空能力、身体強度、発射角度と速度の最適化――試験と改良の繰り返しが必要だった。


建造現場では、巨大な石材を吊るすために、ゴーレムが動員された。無口な彼らは、重厚なクレーン装置を支柱ごと担ぎ、支点に据えてゆく。軋む滑車の音と共に、巨大な梁がゆっくりと宙に浮かぶ。


「そっち、もう少し右だ! そう、そこで止めてくれ!」


俺の指示に、ゴーレムは淡く瞬く目を一度光らせ、寸分違わぬ位置に資材を収める。


「……すごい精度だな」


「彼奴ら、感覚ではなく、重さと角度で覚えておるのじゃ」


竜王が珍しく感心したような声を上げる。石造りの巨体による、無音の技巧。それが飛石楼の基盤を支えていた。


「三、二、一……放て!」


ミラの合図とともに、石の巨体が唸りを上げて天へと舞い上がる。ある時は高く飛びすぎて目標を逸れ、またある時は風に煽られ墜落した。


それでもガーゴイルたちは寡黙に、繰り返し打ち出され、滑空を試みた。その沈黙が、俺には何よりの信頼の証に思えた。


完成した四基の飛石楼は、竜王城の四方に据えられた。


「これぞ、空に睨みを利かせる覇道の礎ぞ」


満足げに竜王が告げる。


「……見せつけるんだ。俺たちに空を奪わせるなってな」


その言葉に、ガーゴイルたちの瞳がわずかに光を帯びたように見えた。



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