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第二十回 巣門に熱を通し 魔虫の暴走を鎮めしこと

「地下区画、侵入されました!熱源室が……魔虫で埋め尽くされてます!」


報告を聞いた俺は、図面を広げる。


「排熱経路の圧力が下がってるな。地熱の巡りが悪いせいで、あいつらの巣が冷えちまってる」


だが、これはあくまで仮説だ。俺は確信を得るため、まず現場を直接調査することにした。


ゴーレムとともに現場へ向かうと、通路の壁には奇妙な結露が広がり、床には乾ききらぬ粘液が残っていた。


「温度が不自然に低い。換気不良か……いや、それだけじゃない」


通気孔を確認すると、一部が崩れた岩で塞がれ、熱が上層に逃げずに滞っていた。排熱構造が機能不全を起こし、熱がこもっていないのだ。


「なるほど。上層拡張で配管が変わった影響か」


さらに、壁面に刻まれた微細な引っかき傷を見つけた俺は、それが魔虫の行動によるものであることを確認した。


「……こいつら、熱が欲しくて上がってきたんじゃねぇのか?」


ユースケなりの現場検証と図面の突き合わせで、魔虫たちの暴走が“熱源の喪失”によるものだと断定した。


「となれば……煙突塔だな。地上まで煙突を伸ばして、熱気を逃がす構造を作ろう」


俺は急遽、ゴーレムとモグラ族に地下熱源の調査を指示し、地上に排気塔を設置する準備を開始した。


工事が始まると、熱を失って苛立つ魔虫たちが作業現場に現れ、粘液を撒き散らしながら這い寄ってきた。


「応戦はするな!かえって刺激になる!」


そこで俺が頼ったのは、かつて温室建設を助けてくれた植物魔族——フローラン族だった。彼らの根からは魔虫を鎮める香気成分が出ることを思い出したのだ。


「根を煙突の内壁に這わせてくれ。あとは地熱を使って、香気ごと上に送る」


フローランたちは快く応じ、塔の内壁はまるで生きているかのように緑に覆われていった。


完成した塔は、熱と香りを帯びた空気をゆるやかに地上へと導く、魔界式温調タワーとなった。


地下に平穏が戻り、魔虫たちは巣に静かに戻っていった。


「香りと熱。お前ら、本当にうまくできてるな……」


俺がつぶやくと、塔の根元で咲いた花が、かすかに揺れたような気がした。


こうして地下の暴走は鎮められたが、俺の設計図には新たに一つ、「気候と魔族の共存」という項目が加わったのだった。



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