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鏡の迷宮  作者: 憂月
第2部 クリスタル・オブ・シャドー
19/28

第6話 宿主の影

1.


2025年6月、潮見町の地下迷宮から脱出した葵、拓海、凛は、広場に集まる住民たちと再会した。光の柱は崩れ、結晶の灰が散らばるが、霧はまだ町を覆う。葵は傷だらけの肩を押さえ、息を切らす。


「宗一郎の魂…封じたと思ったのに…あの少女は?」


拓海が広場を見渡し、言う。

「新たな宿主…少女が結晶を拾った。あの子を追わないと、宗一郎の意志が復活する」


凛が祈祷の札を握り、目を閉じる。

「少女の気配…町の北、港の倉庫街に感じる。宗一郎の魂が、彼女の心を操ってる」


地上では、住民たちが団結し、結晶の破片を捨てたが、一部の者はまだ青い光に魅せられ、ささやく。


「楽園…楽園…」


町の建物は歪んだまま、道は迷路のように絡まる。潮見町は、宗一郎の呪いの最終段階に突入していた。


葵「みんな、持ちこたえて! 私たちが…少女を救う!」


港の倉庫街へ向かう途中、青い霧が濃くなる。宗一郎の声が響く。


「あおい…たくみ…りん…新たな宿主…私の楽園を…完成させる…」


2.

倉庫街の奥、錆びた倉庫の前で、3人は少女を見つける。12歳ほどの少女、名前は美海みうみ。彼女は青い結晶の破片を手に、目を青く光らせ、ささやく。


「楽園…私のもの…」


葵が近づき、叫ぶ。

「美海ちゃん! 結晶を捨てて! それ、危ないよ!」


美海が冷たい目で葵を見る。

「あなた…楽園を…邪魔する…」


彼女の手から青い光が溢れ、倉庫の壁が鏡のように輝く。


拓海が拳を握る。

「美海…宗一郎に操られてる。どうやって助ける?」


凛が祈祷を始め、ビジョンを見る。


美海の記憶:1か月前、港で結晶の破片を見つけ、拾った瞬間、宗一郎の声が響いた。

「お前は…私の宿主…」


美海の心は、家族との孤立感から宗一郎の呪いに飲み込まれた。


凛が言う。

「美海の心…宗一郎が隙をついた。私たちが、彼女の意志を呼び戻すの」


美海が結晶を掲げ、叫ぶ。「楽園…永遠に…!」。倉庫が揺れ、青い結晶の破片が浮かび、3人を襲う。


3.

倉庫の壁に、拓海が教団の紋章を見つける。

「また…記録だ」

彼は結晶に触れ、過去のビジョンを見る。


1945年、宗一郎は教団を設立し、鏡と結晶で心を操る技術を完成させた。1960年代、彼は自身の魂を結晶に封じ、死後も教団を導く計画を立てた。「私の魂…永遠に生きる…」


1980年代、由紀子と翔が宗一郎の遺志を継いだが、彼の魂は進化を続け、結晶を通じて世界中の心に影響を及ぼす力を持った。


1990年代、教団の残党は世界各地(アメリカ、ヨーロッパ、アジア)に結晶をばら撒き、宗一郎の魂を拡散。


「世界は…私の迷宮に…」


ビジョンが終わり、拓海が呟く。

「宗一郎の魂…世界中に広がってる? 潮見町は、ただの始まりだった…」


凛がビジョンを見る。宗一郎の姿:白いローブ、手に無数の結晶。


「私の楽園…人類の心を…飲み込む…」


彼女は言う。

「宗一郎の最終形態…美海を通じて、世界に拡散しようとしてる」


4.

美海の結晶が葵を襲う。彼女はナイフで防ぐが、腕を切り裂かれ、膝をつく。

「くっ…!」

美海の声に、宗一郎のささやきが重なる。


「あおい…お前の姉…私の楽園に…お前も…」


葵の前に、彩花の幻影。


「あおい…強くなって…」


葵「姞貴! 私、諦めない! 美海を救う!」


ビジョン:彩花は教団の儀式で魂を封じられたが、葵への愛で宗一郎の意志に抵抗した。


「あおい…私の光…」


葵が立ち上がり、言う。

「姞貴…ありがとう。美海、私が助ける!」。彼女は美海に近づき、手を伸ばす。


「美海ちゃん、怖くないよ。一緒に帰ろう!」

美海が震え、結晶を握り潰す。


「私…帰りたい…」


5.

拓海が美海を守るため、結晶の破片を蹴散らす。


「美海、俺たちがついてる!」


宗一郎の声が響く。

「たくみ…お前の裏切り…私の楽園に…」


悠斗の幻影が現れる。「たくみ…信じて…」


拓海が叫ぶ

「悠斗! 俺、やり直す! 美海も、町も救う!」


ビジョン:悠斗は教団の呪いに飲み込まれたが、拓海への信頼を最後まで失わなかった。

「たくみ…真実を…」


拓海が美海を抱き、言う。

「美海、俺を信じろ! 宗一郎の嘘に負けるな!」


美海の目から涙が溢れる。

「お兄ちゃん…助けて…」


6.

凛が祈祷を続け、美海の心に呼びかける。

「美海、戻って! あなたの心は自由よ!」


宗一郎が嘲笑う

「霊能者…お前の力も…私の楽園に…」


美津子の幻影が現れる

「りん…私の力…」


凛が叫ぶ

「おばあちゃん! 私、やり遂げる!」


ビジョン:美津子は宗一郎の意志に抵抗し、潮見町を守った。彼女の祈祷は凛に受け継がれた。

「りん…お前なら…」


凛が新たな祈祷を唱える。「美海の心、解放せよ!」

美海の結晶が揺らぎ、青い光が弱まる。


7.

広場では、住民たちが霧に立ち向かう。子供が叫ぶ


「家に帰りたい!」


商人が叫ぶ「町は俺たちのものだ!」


葵の声が倉庫から響く

「みんな、力を貸して! 美海を救うよ!」


拓海が拡声器で叫ぶ

「潮見町、負けるな! 宗一郎を終わらせる!」


凛が祈祷を広場に伝える

「心を一つに! 呪いを断ち切る!」


住民が結晶の破片を踏み潰し、声を上げる

「自由だ! 自由だ!」


学校の生徒、神社の参拝者、港の漁師が団結し、霧が薄れる。


宗一郎の魂が咆哮する

「私の楽園…お前たちの心…!」だが、住民の意志が倉庫を揺らし、美海の結晶がひび割れる


8.

倉庫の中心で、美海が結晶を握り、叫ぶ。

「私ノ…楽園…!」宗一郎の魂が彼女を包む。


「新たな宿主…私の楽園を…完成…」


葵が美海の手を握る

「美海、君は一人じゃない! 私たちがいる!」


拓海が美海の肩を抱く

「俺たち、絶対に守る! 信じろ!」


凛が祈祷の札を美海の額に当てる

「美海、戻って! 宗一郎の呪い、破ろ!」


3人の絆が美海の心に響き、結晶が光を失う。


美海が泣き叫ぶ

「お母さん…お父さん…帰りたい!」


宗一郎の魂が悲鳴を上げる

「私の楽園…!」


葵がナイフで結晶を叩き割る

「宗一郎! 終わりだ!」


拓海が叫ぶ

「町は自由だ!」


凛が最後の祈祷を唱える

「光の集団よ、永遠に消えなさい!」


結晶が爆発し、倉庫が光に包まれる。宗一郎の魂が砕け、霧が消える。


9.

光が収まり、3人と美海は倉庫に倒れていた。結晶は灰と化し、ささやきは消える。美海が葵に抱きつき、泣く。

「ありがとう…お姉ちゃん…」


葵が微笑む「美海、よかった…」


拓海が広場に戻り、住民に叫ぶ。

「終わった! 町は自由だ!」


住民が歓声を上げる。

凛が祈祷の札を握り、言う

「宗一郎の魂…消えたはず…」


だが、倉庫の隅で、青い霧が立ち昇り宗一郎の声が響く。


「私の楽園…世界に…拡散する…」


遠く、ニューヨークの路地で、少年が青い結晶の破片を拾う。東京のオフィスで、女性が鏡に青い光を見る。ロンドンの地下鉄で、老人がささやく。

「楽園…私のもの…」


葵が震える

「世界に…? 宗一郎の呪い、終わってない!?」


凛が叫ぶ「新たな宿主が…世界中に!?」


拓海が拳を握る「なら、俺たちが追う! どこまでも!」


霧が町を離れ、世界へ広がる。ささやきが響く。


「新たな宿主…見つけた…」

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