第2話 炉の鼓動
1.
潮見町の地下下水道、結晶の炉の前に立つ葵、拓海、凛。
青い光を放つ炉は、脈打つように揺れ、ささやきが響く。
「あおい…たくみ…りん…私の楽園…完成する…」
葵はナイフを握り、震える。
「この炉…壊せば、全部終わるよね?」
拓海が拳を握り、言う。
「翔の魂が炉を動かしてる。壊すだけじゃ足りない。魂を封じなきゃ」
凛が結晶の破片を手に、目を閉じる。
「炉は…町全体の心と繋がってる。住民の意志が、翔の力になってる」
町の上空では、霧が渦を巻き、住民のささやきが響く。
「楽園…楽園…」
学校の生徒、市場の商人、神社の参拝者たちが、結晶の破片を手に町を徘徊。建物が歪み、道が迷路のように変化。潮見町は、迷宮と化していた。
葵が叫ぶ
「みんな…操られてる! 早く止めなきゃ!」
下水道の壁が揺れ、青い光が強まる。
翔の幻影が現れる。
黒いローブ、青い目。
「私の楽園…お前たちの魂…私のもの…」
2.
結晶の炉が光り、翔の魂が実体化。巨大な影となり、3人を包む。
「由紀子の失敗…私が正す…潮見町は…永遠の迷宮…」
葵がナイフを振り上げる
「彩花を殺した呪い、終わらせる!」
翔の笑い声が響く
「愚かな…お前の姉は…私の楽園の礎…お前も…同じだ…」
拓海が叫ぶ
「黙れ! 俺たちは町を救う!」
凛が祈祷の札を掲げ、言う。「翔! あなたの魂、封じる!」
炉が脈打ち、青い結晶の破片が浮かび上がる。
破片が刃のように3人を襲う。
葵が腕をかすめられ、血が滴る。
「くっ…!」
翔が嘲笑う
「血…魂…私のもの…」
凛が叫ぶ。「葵、負けないで! 結晶は心を操る! 自分の意志を信じて!」
3.
拓海が下水道の壁に刻まれた教団の紋章を見つける。
「これ…記録だ」
彼は懐中電灯で照らし、過去のビジョンを見る。
1980年、翔は潮見町の地下で結晶の炉を完成させた。教団の残党を集め、由紀子の遺志を継ぐ。
「鏡は失敗だった…結晶こそ…楽園の鍵…」
彼は住民の心を操る儀式を計画。町の水道に結晶の粉末を混ぜ、住民の無意識に呪いを植え付けた。
「潮見町…私の迷宮…」
しかし、翔の儀式は未完に。町の霊能者・美津子(凛の祖母)が炉に封印を施し、翔の魂を閉じ込めた。
「この町…守る…!」
美津子は命を落とし、炉は沈黙した。
ビジョンが終わり、拓海が呟く。
「翔は…町全体を迷宮にするつもりだった。美津子さんが止めたけど…今、復活したんだ」
凛が涙を流す
「おばあちゃん…あなたの犠牲、無駄にしない!」
4.
炉の光が強まり、葵の前に彩花の幻影が現れる。
「あおい…なぜ…私を…」
葵が叫ぶ
「姉貴、ごめん! でも…教団のせいだったんだよね!?」
翔の声が響く
「彩花…私の供物…彼女の魂…結晶に…」
凛が葵の手を握り、ビジョンを見せる。1975年、彩花は教団の残党に拉致され、結晶の儀式に捧げられた。彼女は抵抗したが、結晶の力に飲み込まれ、魂が炉に封じられた。
「あおい…逃げて…」
葵が泣き叫ぶ
「姉貴…助けられなかった…でも、絶対に終わらせる!」
彩花の幻影が微笑む
「あおい…強く…生きて…」
幻影が消え、葵の目が決意に燃える。
5.
拓海の前に、悠斗の幻影
「たくみ…お前が…俺を…」
拓海が叫ぶ
「悠斗、ごめん! 俺は…逃げた…」
ビジョン:3年前、悠斗は教団の残党の隠れ家を取材中、結晶の呪いに襲われた。拓海は恐怖で逃げ、悠斗は結晶に魂を奪われた。
「たくみ…なぜ…」
拓海が拳を握る。
「悠斗…俺はもう逃げない! お前の分まで戦う!」
悠斗の幻影が消え、拓海が葵に言う。
「俺のせいで…仲間を失った。今度は、町を守る」
6.
凛の前に、美津子の幻影
「りん…呪いを…断ち切って…」
凛が叫ぶ
「おばあちゃん! 私、やってみる!」
ビジョン:美津子は翔の儀式を阻止するため、結晶の炉に封印を施した。彼女の祈祷は炉を沈黙させたが、完全には破壊できなかった。
「りん…私の力…受け継いで…」
凛が祈祷の札を握り、言う
「おばあちゃんの遺志…私が引き継ぐ!」
翔が嘲笑う
「霊能者…お前の力も…私の楽園に…」
7.
町の広場では、住民たちが結晶の破片を手に集まる。
「楽園…楽園…」
葵「みんな、目を覚まして! 教団の嘘に騙されないで!」
拓海「潮見町は俺たちの町だ! 呪いに負けるな!」
凛が祈祷を始め、住民に訴える。
「心を一つに! 自由を取り戻す!」
一部の住民が破片を捨て、目を覚ます。
「楽園なんていらない!」
だが、翔の魂が咆哮し、結晶の炉が光を増す。
「私の楽園…完成…!」
町がさらに歪み、建物が崩れ、道が迷宮化。
住民の一部はまだ操られ、ささやく。
「新たな宿主…見つけた…」
8.
炉の前で、翔の魂が3人を襲う。
「お前たちの心…私のもの…」
葵「彩花の仇、討つ!」
彼女はナイフで炉を叩くが、結晶の破片が反撃し、葵の肩を切り裂く。
「うっ…!」
拓海が葵を支え、言う。
「一緒に戦うよ! 悠斗の分も!」
彼は結晶の破片を蹴散らし、炉に近づく。
凛が祈祷を続ける。
「翔の魂、封じる! おばあちゃん、力を貸して!」
翔が笑う
「絆? 無意味だ…お前たちの心…私の迷宮に…」
葵が拓海と凛の手を握る
「私たち…負けない! 姉貴も、悠斗さんも、おばあちゃんも…一緒にいる!」
3人の意志が一つになり、炉の光が揺らぐ。翔が叫ぶ。
「やめなさい…私の楽園が…!」
9.
凛が最後の祈祷を唱える。
「光の集団よ、闇に還れ!」
葵がナイフを炉に突き刺す。
「彩花の魂、解放する!」
拓海が叫ぶ。
「町は俺たちのものだ!」
炉が光を放ち、爆発。結晶の破片が砕け、翔の魂が悲鳴を上げる。
「私の…楽園…!」
光が収まり、3人は下水道に倒れていた。炉は静かになるが、奥の壁が崩れ、隠された扉が現れる。扉の向こうに、青い光と無数のささやき
「永遠の迷宮…完成…」
凛が震える
「これは…教団の最終計画…」
拓海が拳を握る
「永遠の迷宮? なんだそれ…」
葵が立ち上がり、言う。
「まだ終わってない…次は、ここで決着だ」
町の霧が深まり、ささやきが響く。
「新たな宿主…見つけた…」