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鏡の迷宮  作者: 憂月
第2部 クリスタル・オブ・シャドー
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第1話 結晶の拡散

1.

潮見町の港で由紀子の魂を封じた夜から1週間。


葵はアパートの部屋で、眠れぬ夜を過ごしていた。洗面所の鏡は取り外したが、部屋の隅に青い光が揺れる気がする。


「あおい…新たな宿主…見つけた…」


ささやきが耳に響き、彼女は枕で耳を塞ぐ。

「もう…終わったはずなのに…」


葵の脳裏に、姉・彩花の笑顔。5年前、葵が高校生の時、彩花は海辺の事故で亡くなった。

「あおい…助けて…」


葵は目を閉じ、呟く。


「ごめん…姉貴…」


スマートフォンに、拓海からの着信。


「葵、町でまた変なことが起きてる。住民が結晶の破片を集めてるって。すぐ来て!」


葵は震える手で返信。


「今行く」


だが、心の奥で恐怖が膨らむ。由紀子の魂は消えたはずなのに、なぜ? 呪いは潮見町に根を張っている。


同じ頃、凛は神社の裏庭で祈祷中、青い結晶の破片を見つける。触れると、冷たい感触と共にビジョンが


「新たな指導者…楽園を…完成…」


彼女は呟く。「まだ…終わってない…」

拓海は新聞社のオフィスで、町の怪奇事件の資料を整理する。


住民の目撃情報:「結晶が光る」「影が動く」「ささやきが聞こえる」


彼の背後に、亡魂の声

「たくみ…お前が…裏切った…」


潮見町の夜、霧が濃くなる。住民のささやきが響く。「楽園…新たな宿主…」


2.

翌朝、葵、拓海、凛は潮見町の旧市街のカフェで落ち合う。拓海が地図を広げ、言う。


「結晶の破片が町中に散らばってる。港、市場、学校…住民が破片を手に、奇妙な行動を取ってる」


葵が震える。「私の部屋でも…光が見えた。結晶が…まだ生きてるの?」


凛が結晶の破片を手に、言う。


「由紀子の魂は消えたけど、教団の呪いは結晶を通じて広がってる。新たな指導者が、破片を使って町を支配しようとしてる」


拓海が拳を握る。「なら、破片を全部集める。指導者を見つけて、叩く」


3人は町を巡り、結晶の破片を追う。市場で、魚売りの老人が破片を手にささやく。「楽園…私のもの…」


学校の教室で、生徒たちが破片を囲み、目を光らせる。「新たな宿主…見つけた…」


葵が叫ぶ。「みんな…どうしちゃったの!?」


凛が言う。

「結晶が心を操ってる。教団の意志が、住民を迷宮に引き込む」


3.

潮見町の図書館で、拓海は1970年代の教団の記録を発見。


過去編:1975年、由紀子の儀式の失敗後、彼女の弟子・翔(しょう、30歳)が教団の残党を率いた。翔は由紀子の遺志を継ぎ、影の結晶を町中にばら撒き、「町を迷宮に変える」計画を立てた。

「由紀子様の楽園…私が完成させる…」


1980年、翔は町の地下に「結晶の炉」を建設。結晶の破片を融合させ、教団の魂を町全体に拡散する装置だった。しかし、儀式は未完に終わり、翔の魂は炉に封じられた。


記録には、「新たな指導者が炉を目覚めさせる」と記されている。


拓海が呟く。「翔…彼の魂が、新たな指導者か?」

凛がビジョンを見る。翔の姿:黒いローブ、青い目。「私の楽園…町は私のもの…」


彼女は言う。「翔の魂が、結晶を通じて復活した。町を迷宮に変えるために」


4.

葵たちは市場の裏路地で、結晶の破片を持つ少女を見つける。少女が葵を見る。


「あおい…彩花は…海で…」


葵が硬直する。「姉貴の名前…なんで!?」


少女が破片を握り、ささやく。「彩花…教団の犠牲…」


葵の記憶が蘇る。5年前、彩花は潮見町の海辺で溺れた。葵は助けられず、罪悪感に苛まれていた。だが、少女の言葉で新たな事実が…


「彩花は…教団の儀式に…巻き込まれた…」


凛が少女の手から破片を取り、ビジョンを見る。1975年の海辺:彩花(当時18歳)が、教団の残党に拉致され、結晶の儀式の供物にされた。「彼女の魂…結晶に…」


葵が泣き叫ぶ。

「姉貴が…教団のせいで!? そんな…嘘だ!」


拓海が葵を抱きしめる。

「落ち着け! 彩花の仇、俺たちが討つ!」


5.

拓海の脳裏に、亡魂の声。3年前、拓海は同僚の記者・悠斗ゆうとを裏切った。怪奇事件の取材中、悠斗が教団の残党に襲われたが、拓海は恐怖で逃げ出した。悠斗は行方不明に。

「たくみ…なぜ…見捨てた…?」


市場の裏路地で、結晶が光り、悠斗の幻影が現れる。「お前が…俺を殺した…」


拓海が叫ぶ

「違う! 俺は…怖かっただけだ!」


凛「結晶が、罪悪感を増幅してる。拓海、過去と向き合って!」


拓海が拳を握る。

「悠斗…ごめん。俺は…もう逃げない!」


悠斗の幻影が消え、拓海の目が決意に燃える。



6.

凛は神社の裏庭で、結晶の破片を見つける。触れると、祖母・美津子の記憶が。

「りん…呪いから…逃げなさい…」


1975年、美津子は潮見町の霊能者だった。教団の残党の儀式を阻止しようとしたが、由紀子に敗れ、結晶の呪いを受けた。美津子は凛を守るため、呪いを封じる祈祷を施したが、命を落とした。

「りん…私の力…受け継いで…」


凛が涙を流す。

「おばあちゃん…私、負けないよ!」

結晶が光り、由紀子の声。

「霊能者…お前の力も…私のもの…」


凛「絶対に…渡さない!」


7.

夜、潮見町の霧が濃くなる。住民が結晶を手に、町を徘徊。


「楽園…楽園…」建物が歪み、道が迷路のように変化。


拓海が叫ぶ

「町が…迷宮になってる!」


3人は町の中心の広場へ。そこに、黒いローブの男・翔の幻影。


「私は…新たな指導者…町は私の迷宮…お前たちの魂…私のもの…」


葵「翔! 姉貴を殺した呪い、終わらせる!」


凛「結晶の破片を全部集め、翔の魂を封じなきゃ」


拓海が地図を握る。

「破片の気配…町の地下に集中してる」


3人は地下へ続く古い下水道へ。霧が濃く、ささやきが響く。「新たな宿主…見つけた…」


8.

下水道の奥に、巨大な石の祭壇。中央に、青い光を放つ「結晶の炉」。無数の破片が融合し、脈打つ。

「私の楽園…完成…」


翔の幻影が笑う。

「結晶の炉…町を迷宮に変える…お前たちの心…私のもの…」


葵がナイフを握る。「こんなの…壊す!」


凛が叫ぶ。「待って! 炉を壊すには、翔の魂を封じなきゃ!」


拓海が拳を握る。「なら、方法を見つける。絶対に終わらせる!」


炉が光り、町が揺れる。住民のささやきが響く。「楽園…楽園…」


葵、拓海、凛は炉を見つめ、決意する。

「次は…ここで決着だ」

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