表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドウ+ワールド! -What a beautiful COLOR World!-  作者: †らみえる†
序章 貴方と共に、リスポーンDEATH!
3/4

→12_step!_Re:Re:「足枷よ、戦え」

「……っ、!? 確かに、僕は死んだは、ず……ぅおぇっ……!!」



 シドの意識が覚醒した。転生(セイバーロード)によって死に戻りしたのだ。

 しかし、『死罰(ペナルティ)』がある。

 あの空間(セイバーロード)で黒シャルド達と話した事はシドは一切覚えていない。

 ──だが、3()()()()覚えている事がある。それがシドの脳内に流れる。



「な、に?これ…… 僕は『シスターに、奇襲で殺された』?……そして『僕にPSY(のうりょく)がある』……は、?『戦え』?」



 シドにとっては、これらが一体なんの事なのか分からない。目の前で倒れている、手の甲に特徴的な痣がある少女(シャルド)も、一体誰なのか覚えていなかった。

 しかし何故か、この身がデジャブの様に『経験した事がある』と必死に主張している。


 なんとも不思議な感覚だった。

 そして、ふと呟く。

 それはゲームで()う所の『ふっかつのじゅもん』。



「セイバー、ロード……?」

「っ、アアアッ!!……戻って、きましたッ!!」



シドが『セイバーロード』と呟くことによって、シャルドの意識が突如戻る。無限に経験した痛みや、死の感覚も、自分に課した使命も、全てを背負って挫けることなく、生き返る。



「今度こそは、絶対ッ、死なせないですッ!!」



 そうしてシャルドは勢いよく立ち上がっては、シドの手を取り、身体を持ち上げて背負った。

 そして小屋を扉からではなく窓から抜け、現在進行形で炎に焼かれている村の中を駆ける。



「え!? な、なな何!?」

「今すぐ逃げないと、2人共々死にます!! だから逃げるんです!!」



 突然すぎる。だが、彼女の言うことには謎の説得力があった。

 それは、これから何が起こるかを知っている様な口ぶりで。



「死ぬ!?逃げる!? 確かに、炎が、ゴホッゴホッ、ヤバいけどっ……、一体どこに!?」

「……マスターと、この世の果てまで! 一緒に、永遠に暮らしましょう!!……いずれは……、結婚も視野に……」



 あまりにも突然の告白。『2人だけで燃え盛る村を駆けている』という現在の状況も相まって、よりロマンチックでインパクトのあるプロポーズとなる。



「え、初めて女の子に、ラト姉と会長以外に……まともな告白、されちゃった……」



 だが、意味不明な告白でも、シドは腐っても中学生(クソガキ)だった。こういったものにかなり弱い。

 しかしそれでも、やはり状況が状況だった。その突然のプロポーズを演出してくれたはずの『状況』が、シドを現実へと引き戻した。



「いや冷静に、なんだ、この状況……??」

「──マスター! 質問があります!」

「な、なに……!?」

「マスターが目覚めて、その時に思い出した事を3つ! 教えて下さい!!」



 シャルドからの『死罰』の確認。彼女(シャルド)は1万回を超えるループで、何故か()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からは、どんなに逃げても逃げられないという事が分かった。


 その為、このループでもいずれシスターと遭遇してしまうだろう。

 そしてシスターと交戦し勝利し、1万回のループから逃れるには、シドが選んだ『死罰』がシャルドにとって必要不可欠な情報であった。



「3つ……? もしかして、『シスターに奇襲で殺された』『僕に謎のPSY(のうりょく)がある』あとは……『戦え』……の事?」

「『戦え』……ですか。 あぁ……覚悟を、決めたのですね……。マスターの意思(かくご)、しかと受け取りました!! ……シャルドは今、感激しています……っ!!」



 彼女(シャルド)の顔からキラリと、風に乗って流れた。シドは彼女(シャルド)が泣いている事を察し、困惑した。いや、困惑するしか無かった。


「なんのこと!?」とシドは当然の答え。


 『前回までの死に戻りの記憶』を忘れてしまったシドの困惑は余計深まるばかり……。だがしかし、1万回にわたる前回までのループを経て、達したシドの覚悟(こたえ)は、現在(いま)のシドに分からずとも、全てのループを記憶しているシャルドにはかなりの影響を与えた。


 二人はそんな会話を経て、走る。

 ──しかしまた突然、声がした。



「──『オーダー』だ……オイ、動くな」

「ッ、!?」



 前方から声がした途端、走るシャルドの足が止まる。

 シドは「なんだろう?」と前方の炎を見た。揺らめく空気と炎の中に、2()()()()()が見えた。



「シスター……!? 『シスターに、殺される』って……もしかして!?」



 シドは理解した。そして同時に()()が現実になるのではないか、というさっきまでの不安が、最高値を記録する。

 だが無慈悲にも、だんだんと人影は濃くなっていき、炎はより明瞭に()()を照らした。



「いーじゃねーか、テメーは偉い。制約(オーダー)を『守った』──けどなぁ、ンでテメェらは小屋ン中に居なかったンだ?……そのせいでよォ!手間かかったンだよォッ!!」



 炎を掻き分け現れたのは、レイピアを持ったシスターと背の高い黒人の神父だった。



「さあどーすんだ?……()るか? ゆーしゃ(勇者)サマよぉ……、待ってたんだぜ、運命を、テメーを天国に導く日をぉ……!?」

「……『勇者』、ですか…… その意味の無い称号(のうりょく)の為に、()()()()()()()()()()()()()()……ッ!!」



 両者は対面する。しかしシドはどこか置いていかれている様で、またもや不安が最高値を更新した。

 しかし不安が最高値を更新した要因はそれだけでは無かった。



「なんだ、アイツ……?」

「…………ュぅ」



 それはシスターの背後で微動だにしない無言の神父。呼吸音以外に何も言葉を発さず、黒いサングラスには炎の赤が映り、特徴的なモノクロのドレッドは熱風で(なび)いていた。


 ──まるで、死体(ゾンビ)の様だ。


 しかし、シドの不安を慰める様に、断ち切る様に、シャルドは鋭くも優しい声で、シドに話しかけた。



「早速ですがマスター、戦闘です。……申し訳ありませんが『影』を出す準備をして下さい。先制します」

「『影』……?」

「マスターのPSY(スキル)です。強く念じれば出せるはずです……!!」



 シャルドは何かを狙っている様だった。

 この状況を打開、または戦闘を有利にする『策』を持っているかの様に。

 そして両者、動かず沈黙の時間が暫く続いた。



「──……このまま炎で、どっちが早く死ぬか競ってもいいが……、でもつまんねーよな?……だから『解除』だ」

「マスター!!今です!!」



 シスターは指を鳴らし何かを解除した。シャルドが叫んだという事は恐らくタイミングはココしかない。

 しかし本当に出来るか分からない。それは正に賭けだった。シャルドの急な掛け声にシドは焦り、強く脳内でイメージをした。



「ッッ、やるしかないッ!!来いっ『影』ェェッ!!」



 シドがそう叫んだ瞬間、何かが出た。それは黒く、磁性流体の様に粘性的な見た目の何か(ヴォイド)だった。

 それは弾丸並の速度で、シスターに向かって飛んでいく。



「出た……、これが僕の……」

「──掴まってて下さい、マスター!!」



 シドを背負いながらシャルドは突如、二つの大剣をそれぞれの手から顕現させて、影で死角を作り真っ直ぐシスターへ追撃に向かう。



「いーね!!……ンでも、ガキが邪魔なんだよ!!──オーダー!!『降りろ』」

「すみませんマスター!!今すぐ降りて下さい!!」

「ええッッ!? ちょっ、」



 シャルドにそう言われ、シドは背中から『降りる』。──と言うよりはシャルドに『捨てられる』に近かった。

 そうしてシドは思いっきり転ぶ。



「痛ったい……うぅ、ひ、酷い……」



 仕方がないとは言え、少しシャルドに不満を漏らす。そしてシドは大剣(シャルドの剣)細剣(シスターのレイピア)が交わり、鉄の音が響く中で考えた。



「このPSY(のうりょく)で何をどうする……!? どうしたらあの子──、シャルドをサポート出来る……!? 考えろ……!!」



 安易に影をシスターに出してしまえば、シャルドの邪魔になりかねない。かと言ってこのサポートに適したPSY(のうりょく)で何もしなければ、ただの無能になってしまう。



「──マスター!!シャルドは構いません!!思うがままに!!」



 シドの思いを尊重する様に、シスターと激しく交戦しているシャルドがそう叫んだ。しかしそれにしても激しい闘いで、シドがギリギリ目で追える程度。

 そんな闘いに素人が茶々を入れる隙など当然ゼロに等しかった。


 それでもシャルドは「撃って下さい!!」と叫ぶ。



「……『シスターに殺される』『2人共々殺される』……つまり『打たないと死ぬ』……ラト姉ならどうする……? ラト姉なら──『助ける為には、迷わず打つ』!!」



 ──目標(ねらい)はシスターの足元。

 そうして撃ったシドの影は狙い通り、シスターの足元を『掴む』。



「は……? ッ──!! ヤベっ、なんだコレッ!?」

「!! マスターの影が、『()()()()()()』!?」



 それはシド以外の全ての思惑を凌駕した。

 ループを経て、シドの能力を知っていたシャルドも、今まで見たことの無い事象に驚く。



「コレで隙が……!! ありがとうございますマスター!!」



 ようやく出来た隙、この隙でシャルドはシスターを2本の大剣で斬った。



 ──筈だった。



「──バーカ!!痛くねーよ!!」

「なんでッ、手応えは確かにあったハズ……!? やはり、(シャルド)が感じていた()()()()()()()()()……ッ!!」



 シスターの身体からは血が一切出ていない。それどころか、斬った痕跡すら見当たらなかった。

 その異常事態にシドは辺りを見渡す。



「あれは──ッ!? シャルド!!アイツだ!!」

「──!? まさか、攻撃を代わりに引き受けている!?」



 2人が見たのは、『神父』が顔色一つ変えず、腹部から大量の血が出ている姿を──見た。



「おーい! 隙、あり過ぎだろ!?」

「ッ、しまっ──!!」

「させないッ!!」



 シドは思わず反射で走り出した。そして影を出す。



「バカかよ。──オーダーだ、『動くな』」

「ぁッ────」



 シドの首が吹っ飛び、即死。

 首のない死体は直立しながら、噴水の様に血を浴びた。その光景は、悪質なコメディ映画よりも滑稽な光景だ。



「あ、あぁ……また……っ マスターが!!ます──」



 この世界は、絶望に打ちひしがれる希望の少女(ゆうしゃ)の声で──終わった。



 ◇



 Now Loading…


 Now Loading……



 「はぁ……『戻って来るな』と(シャルド)はあれ程言ったハズです、()?」

「はい……すいません……」

「否、気にする必要はありません!!マスターは最善を尽くしました!!」



 黒シャルドの冷たさと白シャルドの温かさが、同時にシドの心に突き刺さる。



「僕のせいだ……。なんであそこで動いたんだ、僕……シスターのPSY(のうりょく)は完全に分かった訳では無かったけど、何となく勘づいていたハズだったのに……」



 シドは5歳児の駄々を捏ねる時の様に、「アイツらの初見殺しズルすぎる!!」と言った後、ため息をついた。

 しかし初見では無いが……。



「しかもです、()、マスター。貴方(アンタ)が終わらせたループはよりにもよって、シャルドが最高のタイミング、最高のシチュエーション、そしてやっと勇気を振り絞ってマスターに()()()告白したループなんです、()? なのに……貴方(アンタ)という人は……」


「ぐふっ……!」と声がした。


「確かに、あれはないです」と白シャルドが珍しく黒シャルドに同調し、初めてシドを言葉で刺した。


 また「ぐふっ……!!?」と声がした。



「う、うわああああああああああごめんなさいいいいいいいいいい!!!!!!」



『ループの記憶が無い』とは言え、あれが素のシドなのだ。

 ()()()()()()()()で、そして()()()()()()()()()()()()、『それじゃあ体力(フィジカル)は!?』と言えばそれすらよわよわ。


 ……何も出来ない。



「いや、ちょっ、でもさぁ!!今までで一番、良かったよね!?」

「まぁ、そうですね。……──否、そうですよ!!言われてみれば……!! あともう少しですよ、マスター!!」と褒める部分を見失っていた白シャルドは褒める部分を見つけて、褒める。



 黒シャルドはため息をつきながら「……はぁ、マスターは呑気すぎます、()……」と、いつもの様に呆れた。


 そしてシドは次のループに備えて、次の『死罰』の考察をする。



「1万回やってるけど、あのシスターのPSY(のうりょく)……あそこまでハッキリとPSY(のうりょく)を出したのは2回くらいなんだよね……」



 他のループでは、いきなり奇襲してきて殺されたり、シャルドが先に死んでしまって、何も出来ず殺されたりなどで、ありえないと思うが、それで1万回死亡した。


 ──『シドが弱いから1万回死んだ』……とも言い換える事が出来る。



「でも、ようやく分かった!! あのシスターのPSY(のうりょく)!!」

「で、どんなPSY(スキル)なんですか……?」と黒シャルドが聞いた。



「あのシスターのPSY(のうりょく)は多分だけど、『制約』だと思う。『動くな』とか言ってたし、実際それを破ったら死んだ。こっからは予想だけど『制約』が簡単な程、破った時の……えーとシスターだから、かっこいい言い方……そう!『天罰』が大きくなる!!」

「是。そうです、()マスター!!……まぁ、シャルドはもうとっくに気づいてますが……」

「うぅ、なんで言わないの……」

「否、確証が持てなかったからですよマスター!『ハッキリとPSY(スキル)を出したのは2回くらい』とさっきマスターも言っていたじゃないですか!」



「ま、まあそうだけど……」とシドは呟き、再度考察する。



「……次のループで持っていく『死罰』だけど、今回のおかげで結構絞れた気がする!」

「否、どの記憶を持っていきますか!?」と白シャルドが問う。



「えーとねー、まずは……あ、そういえば僕のPSY(のうりょく)……何故か()()()()()()()()()()()()……」

「……マスターのPSY(スキル)の事ですか?」

「え、うん。何か知ってるの?」



 少し沈黙してから白シャルドは答えた。



「……否、……正直に言うと『はい(YES)』知っています……。シャルドたちって()()()()()()()()()()()()()なので……」

「え!?!?!?早く言って!?!?!?僕『10187回』死んでるんですけど!?!?!?」



 なんでもっと早く言ってくれなかったのか……?と、シドは「それを知ってればこんなに死なないで済んだのにー!!!!」と明らかに不満を漏らす。



「すまねぇです、()マスター。貴方(アンタ)に『死罰』というルールがある様に、セイバーロード支配人(こっち)にもこっちなりのルールがあるんです、()マスター」

「否、そういう事です。ですが、シャルドはもうマスターには死んで欲しくないので、本当は教えてあげたい所ですが……教えると世界のルールに反して『矛盾(パラドックス)』が起こって大変なので……すみません!!」



 シドは『パラドックス』という映画やアニメなどで聞いた事のある単語が気になりつつも、「へー、支配人も意外と大変なんだなー……」と受け流した。

 そして脱線した話を戻す。



「次の『死罰』だけど、一つ目は『シスターに奇襲で殺される』。これ、意外と役に立ったんだよね。あの状態でもこれから誰と戦うかが分かるから、奇襲も回避出来て、かつシスターに遭遇するまでがスムーズになる上、無駄死にするリスクを減らせる」



 これが一つ目、『シスターに奇襲で殺される』。

 そして二つ目……。



「是、是非二つ目を教えて下さい。マスター。」

「二つ目は『無駄な事はせず、影でサポートに徹しろ』。前回は僕がシャルドを守ろうとして死んだ。だからコレを次の僕に徹底させる」



 これが二つ目、『無駄な事はせず、影でサポートに徹しろ』

 そして最後の『死罰』……。



「否、そして最後はなんですか!!」

「最後は『戦え』。シャルドに『僕の戦う意思は変わってない』という事を伝えたいんだ。どうしてもシャルドを死のループから救いたい、あと僕ももう死ぬの嫌だし……!!」



 シドの覚悟は1万回死亡しても変わらなかった。シャルドの告白を無為にしてはならないという意思も加わって、正に『最強』だ。



「マスターらしいです!!マスターは最高です!!かっこいいし可愛いです!!」

「分かりました、()。その覚悟が変わらないと言うのなら、何億回でも死んで下さいマスター!!」

「……それ、褒めてるの?」



 黒シャルドの褒めてるのか分からない励ましに、シドは苦笑いするが、黒シャルドは「もちろんです、()」と笑った。


 そして──。



「死んで来ます!!……死にたくないけど……」

「否、生きて下さい!!」

「是、メメントモリ(死なねぇで下さい)です、()!!」



 白シャルドと黒シャルドが微笑みながら、シドは白い光に包まれた。



 Now Loading…


 Now Loading……


 あいことば セイバーロード


 ぼうけんを さいかいする?


 YES ←

 YES


 Now Loading…


 ---


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ