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シャドウ+ワールド! -What a beautiful COLOR World!-  作者: †らみえる†
序章 貴方と共に、リスポーンDEATH!
2/4

→11_step!_Re:「セイバークエスト!~勇者と魔王と希望への道~」

 暗い闇の中、シドの意識は無かった。だが、強制的に脳内に情報が流し込まれる。未知への恐怖で叫びたいのに何故か無理やり心の平穏を保たれる。


 そしてシドの視界に広がったのは教会の中の様な、白すぎる空間だった。


 Now Loading…


 Now Loading……



 ◇



 おお マスターよ!

 しんでしまうとは なにごとですか!

 しかたのない ひとですね。

 マスターに もう いちど

 きかいを あたえましょう!

 たたかいで キズついたときは

 すぐに わたしを たよって

 キズをかいふくさせるのです。

 ふたたび このようなことが

 おこらないことを

 シャルドは いのっています!



 あいことば セイバーロード


 ぼうけんを さいかいする?


 YES ←

 YES


 Now Loading…



 ◇



 ──シドの意識が戻った先は、シスターに殺される前の燃え盛る小屋だった。シドは死から覚醒した後、そんなありえない状況に驚く。



「──ぁ、ぇッッ?!……ウグッ、おォえッ!!」



 熱さに加え、異常な気持ち悪さ。シドは死を経験した。常人では一度しか経験出来ないはずの『死』を、シドは経験してしまった。



「死んだ……シスターに()()、殺された……はず、なのになんで!?……()()、生きてる……!? さっきのは夢……? いや違う……確かに経験したはず……!!」



 シドは困惑する。確かに死から来る痛みも寒さも、死ぬ間際の意識が遠のく感覚も全て、この身で感じたはずなのだ。

 もう『死』を十分に堪能したはずなのだが、目の前のテーブルには先程と同じフルコースが並ばれていた。



「あ、さっきの……この子は、一体……?」



 頭痛で頭を抱えた後、目の前の存在に気づいた。

 その存在とは倒れている少女。それは先程と全く同じシチュエーションだった。

 そして、理由は分からないが、その少女は何かメッセージを示している様だった。

 だが、『何故分かったのか?』に対する根拠は何も無い。それは突然、シドの脳内に語りかけたのだ。


 それは一つの意味不明な単語。



「……セイバー、ロード」



 ふと、その単語が口に出た。シドはそれ(セイバーロード)によって戻って来た事を思い出す。すると目の前に倒れている少女が、その言葉に反応する様にビクッと動いた。



「……──はっ、マスター!?……逃げ、ましょう!」

「え!? 何!? う、動いた!!?」



 少女が目覚めて、焦った様に立ち上がる。黒髪はその勢いで揺れ、グレーの瞳からは真剣さが伝わった。

 シドは驚いて尻餅をつくが、少女はシドに右手を差し伸べた。その右手の甲には仄かに黄金に光る、タトゥーとはまた違う人工的な痣があった。



「あ、ありがとう……」

「ええ! 構いませんよ!」と少女は優しく微笑んだ。



 そうしてシドは立ち上がる過程で、もう一度、グレーの瞳を見た。瞳の奥には真剣ながらも、どこか優しく、何か特別な感情を感じた。

 それはまるで、シドと何度も会って、シドと共に苦難や修羅場を何度も潜り抜けた様な表情と、妙な説得力を作り上げていた。



「誰か分かんないけどっ!!……確かに、この状況は……!! でも、どうやって?!」



 先程と、ほぼ同じ状況。

 本当にこの窮地を脱する事が出来るのか?

 またあの狂気のシスターと神父に殺される?

 そんな不安が先程の感覚をまた思い出させてしまい、吐き気が再度、シドを襲う。



「マスター!大丈夫ですか?!」

「ぅぅ……あぁ、うん、大丈夫……君は一体……?」

(シャルド)の名前はシャルドです!そんな事より早く!!」



 シャルドと名乗る少女はどうやら一方的に、シドを知っている様だった。



「……──分かった……!」



 先程から「逃げましょう!」と言う為、シドは素直に従い、立ち上がった後に、小屋の外に出る。するとドアの前に立っていたシスターと鉢合わせ、そして()()()()



「あ、!?」

「おいおい何モンだ?このガキ……」



 言葉にならない程の痛みがシドを襲う。そして願った。──「これは夢だ」と。



「っ、マスター!!?」

「お前がゆーしゃ(勇者)かァ!!……いーぜ導ーてやるよォ……『オーダー』ァァッ!!!!……動くンじゃねー!!」



 失血多量で薄れ行く意識、薄れ行く視界で、『シャルド』の首が吹っ飛ぶのが見えた。狂人(シスター)()()()()()()()()()()()

 しかし、何も出来ず無力。視界はそのまま、黒く落ちる。



 ──シドは()()殺され(リスキルされ)てしまった!



 ◇



 Now Loading…


 Now Loading……



「──はぁ、マスター……流石に死に過ぎです、()? まるでシャルドを縛る足枷じゃねーですか……」

「──(いや)3()()()()()()()()()()()マスターは『文字通り』必死に頑張っているんです!あなたは黙ってて下さい!!」



 シャルド(先程の少女)と同じ声が二つ、白すぎる空間で響き渡った。そして脳内に『前回までのループ』に関する全ての情報が流し込ま(ダウンロードさ)れる。その空間、及び教会でシドは全てを思い出した。



「あっ!……ああそうか、僕はまた……無力、だった」

「おー、マスターが思い出しやがりました!」



 その声の主は、選択を迫られた時に脳内に出現する天使と悪魔の様な2人。


 少し悪びれながらシドを『マスター』と呼び、『ですます口調』に『()』という絶対に相容れない、違和感まみれで取って付けた様な語尾の《《()()()()()()()()()()()》》。普通のシャルドより言動に少しトゲがある為、シドは彼女を『黒シャルド』と呼んでいる。


 また、天使と悪魔に当てはめるのなら、間違い無く『悪魔』なのが彼女だ。



「否、マスター!今度の『死罰』はどれにしますか?! ()()()()()()()()()()()()()()3()()()()言って下さい!」



 そしてシドに明るく優しく話しかけるのは、『否』が口癖の()()()()()()()()()()()。普通のシャルドよりもシドを全肯定してくれるので、シドは『白シャルド』と呼んでいるのが彼女だ。


 また、天使と悪魔に当てはめるのなら、間違い無く『天使』なのが彼女だ。



「んで、どうするんですかマスター!?行くなら早く行ってくださいよ!そしてもう|ココには来ねぇでください《死なねぇでください》!」



 まるで『シャルドの心情を表した天使と悪魔』の様な2人はこの白い教会、シャルドのPSY(スキル)である『転生(セーブ&ロード)』の管理者兼、能力を使用する人を案内するアシスタントだ。



「ちょっ、ちょっと待って!一旦整理したい!」



 だが思い出したとは言え、まだ心の整理が着いていない。そして一体どうすればこの『死のループ』から抜け出せるのかが分からない。



「セーブポイントは、何故か前回で変更されたから……、クソっ! 僕の記憶が、ラト姉とベルとの大切な記憶が、全部ウソだったなんて、どうして……っ!!」

「可哀想なマスター……、しかもその『事実』を死ぬ度に言い渡されるなんて……シャルド、見てられません……!!」



 白シャルドはトラウマを思い出したシドを優しく労る。しかし黒シャルドは不機嫌そうな顔をした。



「まぁ、マスターも可哀想ですが、シャルドも充分可哀想です、()? ()()なマスターのせいで、どんなに助けようとしても殺されるんです、()。 しかもマスターと違って『死罰』のペナルティがねぇです。つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 黒シャルドがシドを『無能』と言った瞬間、白シャルドの表情の雰囲気が変わる。

 シドはいつも優しい白シャルドが初めて見せた怒り、威圧的かつ圧倒的に強い魔素(マナ)を纏ったオーラに驚いた。



「否、今すぐ、撤回して下さい……!! マスターは必死に頑張っているんです!! 『死のループ』を完全に記憶しているシャルド達を救おうとして!!」



 白シャルドがシドを擁護した。そしてシドはしばらく俯き、沈黙した。



「……いいんだ白シャルド、僕は確かに『無能』だ……。でも!そうだったとしても!! 理由は分からないけど、自分の命を犠牲にしてでも、僕を必死に助けようとしてくれているシャルドを!! 僕は……助けたいんだ!!」



 何度目かのループを重ね、決意した思いはとても強かった。しかし、この『転生(セイバーロード)』には『死罰』という『《《死亡したら次のループでは3つの事柄しか覚えられない》》』というデメリットがある為、次のループではこの決意すら忘れてしまう。



「マスター、その決意は認めてやります、()。しかし、どうやってループ直後のリスポーンキル。初っ端から窮地ってのにあの状況を打開するんです? もう『策』なんてどうせねぇですよね? だってもう"10186回"も死んでんだ()

「──え?1()0()1()8()6()()……って、言った?」



 黒シャルドから告げられたのは、シドの『死亡回数』。それはシドが()()()()()()()()()()()()()の背景で、『自身が見知らぬ死を遂げている』という事実を意味していた。


 その事実は『シド』という存在の全てを否定しており、彼の心を二つに折った。



「……ぁあ、僕の記憶は偽りで……! 僕が生きてきた1週間さえも……死ぬ為に生きてきた……!?」



 辛い。悲しい。絶望に満ちている。だが、この状況に向き合わなければ、希望は見えない。

 そして、シャルドを助ける為には、それは必要な事。



「……策はもう尽きてる。逃げようとしても、村に放たれた炎が邪魔をして、どうしてもアイツら(シスターと神父)に遭遇してしまう。シャルドと一緒に戦おうとしても、勝てなかった……あのシスターが強すぎる」



 思い返せば様々な死に方をした。シャルドを守ろうとして刺され、炎に焼かれ、心臓を貫かれ、首は吹っ飛び、逃げても見つかり、炎が逃げ道を阻み、追いつかれ殺される。



「というか、あの状況で『策』なんて思い浮かぶ訳が無い。今『策』を考えたとしても『どうやって死んだか』『殺された相手』『自分に影の様な謎のPSY(のうりょく)がある』この3つの重要な死罰にリソースを割いているから、上手くいくか分からない『策』なんていう不確定要素にリソースを今更割けない……!」



 そして出た、シドの結論は──



「戦う、しか……ない……っ」

「正気でいやがりますか!?」

「本気ですか!?」



 策も何も無い事に、2人のシャルドは「とうとう死に過ぎて私達のマスターがおかしくなった」と言う様に、同時に驚いた。


 だが2人のシャルドの驚きは間違ってはいない。シドは既に、度重なる死と出来事によりイカれていた。



「ちょっ、その本心を聞かせてくれないです、()

「まず……僕は、無力だ」



 シドがこの結論に至った要因。1つはシドの頭ではこの空間(セイバーロード)でどれだけ時間を使っても結局『策』なんて思い付かない。



「……あと、僕の影の能力」



 そして2つ目は、シドが忘れていた『謎のPSY(シャドウエディタ)』。『謎の影を操る』という能力という事は幾度かのループで判明したが、まだ沢山の性質がありそうだった。なのでこれがどういった能力なのかは、正確には分からない。だが、期待値は高い。



「……僕が弱いなら、シャルドを頼ればいい」



 そして3つ目、『シャルドの戦闘力』。シドがループを繰り返していく中で、思い出した事があった。

 それは『シャルドはものすごく強い』という事。シドが見た限りでは、本来は1人1個の筈のPSY(のうりょく)を、シャルドは複数のPSY(のうりょく)で、どのループでもシスターと神父に善戦していた。しかも一人で、だ。



「あとは試行回数を稼ぐ、だけ……その結果が、『10186回』……か、……ッ!!どうすればいい!! シャルドを助けるには!?」



『あとは試行回数を稼ぐだけ』と思ったシドだったが、ここに来て『10186回』という事実が決意の邪魔をする。



「ぁ──ラト姉だったら、どうしているんだろうか?」



 ふと、自身が目指す『理想(憧れの背中)』の姿が頭に浮かぶ。《《偽り》》の記憶だったとしても、その記憶の中で見た憧れの背中、姉に対するシドの思いは真実だった。



「っ……ラト姉っ……!! 会いたいよぉ……!!」

「子供っぽく泣かねぇで下さいマスター、これからマスターは戦うんです、()?」

「否、マスター。シャルド《《達》》が付いてます!どんなに死んでも励ましてあげますよ!」



 その白シャルドのシドへの励ましに黒シャルドは「それはねぇ()……」と言った感じで、もうシドには死んで欲しくない様子だった。



「……ラト姉だったら、こんな時は──」



 シドの決意は確固たるモノへ──。



「笑って立ち向かってるハズ!!」

「その意気です、()マスター!!」

「否、頑張ってください!」



 現在、シドの心情はグチャグチャだった。

 自身が『生後1週間のクローン』と告げられ、今までの思い出は全て偽りだった事が分かり、母親代わり(ベル)恩師(サラ先生)は目の前で殺され、訳の分からない場所に転移して(飛ばされて)、挙句の果てには、そこで瞬殺される。



「こんな事言ったけどやっぱり辛いよ…………でも、生きてる。まぁいっぱい死んでるんだけどね……。でも『命以外』は大丈夫、精神とかは折れてないし、死んでない。ラト姉のおかげだ!!」



 ()()()中学生が背負っている。何故か、背負い切れている、だが本当はもう限界なのかもしれない。

 コレを小説として出版したら、きっとベストセラー間違いなしだろう。



「よし!一か八か!それを『無限』に繰り返せば、どんなに『最弱』でも、『最強』だよね!」



 ぼうけんを さいかいする?


 YES ←

 YES


 Now Loading…



 そうして少年は、少女と共に、10186回の『セイバーロード(セーブ&ロード)』を再度、歩き出した。


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