表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/51

相馬⑥

 その日、またしても自宅近くで待ち構えていた相馬のもとに、服部がやってきた。

「どうも」

 彼の姿を見た相馬は、お決まりのように笑みを浮かべて頭を下げた。

 すると服部はしゃべりだした。

「なあ、その基金ってやつ、たしかそれぞれの会社で正社員だったら手に入れられるぶんのカネを援助してやるって話だったが、いっそのこと正社員を上回る金額をもらえるようにしたほうが、世間に与えるインパクトは大きいし、逆に損する羽目になる正社員たちが不満を持つだろうことで、雇用の法律なんかの改善につながるんじゃないか?」

「そうですねえ。でも、その不満が非正規の人たちに向いて、正規対不正規という対立を招いたら困るので、やめときます」

「だけどよ、その仕組みだと、非正規以上に経営者の奴らに好都合になっちまうんじゃねえか? 本当は給料とかをもっと与えられるのにただ与えない、悪質な経営者なら特によ」

「確かに。ですけど、この基金の一番の狙いは、そういういわゆるブラック企業を退職できるようにすることなんです。次の仕事の当てがなく、路頭に迷いかねないから、ひどい扱いをされててもその職場で働き続けている非正規の人たちに、辞めても大丈夫なよう貯えられるようにというのと、これに関しては正社員以上の、失業手当を提供するってやり方でね。ただ、その手当てが充実し過ぎて働く気をなくされたりしたら困るので、ほどよい期間の設定や、次は良いところに勤められるようサポートするなんてのを考えてもいます。でも、いいっすね。そうやって意見があるなら、ぜひどんどん言ってくださいよ。ところで、稼ぐ協力のほうはしていただけるんですか?」

「ああ。とりあえずどんなもんかやってみるってのでもいいんならだがな。俺はかなりの人間不信だからよ」

「結構ですよ。だけどその前に、あなたがギャンブル中毒じゃないことを医者にチェックしてもらって確かめさせていただきたいんですけど、いいですか?」

「チッ」

 面倒そうに嫌な顔をした服部だったが、すぐに、いつ以来か本人も思いだせないくらい久しぶりの笑顔になって、言った。

「しゃーねえな」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ