第48話 ワルド王国軍襲来
ユックリ増えるブックマークの数に嬉しさを噛み締めております。
皆様ありがとうございます。
夏の終わりに、その時がやって来た。
銀狼騎士団が言っていた通り、2ヶ月後にやって来たワルド軍は、ヨルドの町を占領してからユックリと戦をしようと気楽な気持ちでこちらに来ている。
まさか、自分たちの持ち歩く魔物避けの音がそのまま100メートル間隔に配置された虫の偵察部隊に自分たちの正確な位置を教えて居るとは気づかないようだ。
タンバが、
「出城の偵察部隊20番から敵に動き有りと報告。2キロ先を接近中!
別動の偵察部隊から敵兵士数、約5000!!」
と報告し、ヨルドの町と森の出城は戦闘体制に入った。
タンバが、
「では殿、我は先に出城の守りに向かいます。
出城にて、ほぼ敵軍を壊滅させてご覧にいれます。
ご期待を!!」
と言って出ていく。
俺は、絞り出す様に、
「気をつけて。」
と送りだすと、タンバはシュルシュルとうねりながら、出城に向かった。
タンバは、以前俺に合った時に、俺にチラリと見ただけで目線を外されて、『弱いと判断されて興味すら持ってすらもらえなかった。』と感じて武者修行の旅に出たらしい…
ガタ郎から、
『タンバは、ああ見えて繊細でやんすから、出来るだけアイツをしっかり見て会話してやって欲しいでやんす。』
と言われているが、未だに慣れない。
だって、怖いんだよ…タンバって俺と話すと興奮してジワジワ顔を寄せてくるんだ…真面目でいいヤツのなのだが、怖いものは怖いって…ポーカーフェイスの裏で散々ビビり散らかしながらも、何とかタンバを送り出し俺もザックさんとバリスタ運用部隊と一緒に出城を目指した。
ヨルドの町から直線で500メートル程先の出城だが、たどり着くには、隠し扉や隠し通路のある迷路の正しい道をたどるしかない。
おかげで、一キロメートル以上の移動距離となる。
やっと俺達が出城に到着した時には、タンバが、
「敵500メートル付近、をこちらに向かって接近中!
一番隊、正面で囮の任務にでろ!危なくなったら飛んで逃げろ。
城の正面に敵を誘導できたら、二番、三番、背後から敵を追いたてる様に進軍するので森の奥にて待機!」
と、出城で指示を出している。
ザックさんは2台のバリスタを運用する六名の兵士に、
「こっちも用意しろ!
一撃で魔物避けを撃ち抜いてやれ!!」
と指示を出す。
俺もミヤ子とマサヒロとクマ五郎とセミ千代にコブンを召喚し、
「皆は魔物避け破壊後に、
クマ五郎は、マサヒロとセミ千代にコブンと合体して、パーフェクトクマ五郎になって敵の後方に回り込み、最後尾をパニックボイスで撹乱して。
ミヤ子は、タンバの一番隊が避けたら先頭の部隊にパラパラっと、例の粉を撒いちゃって。」
と、遊撃部隊に指示をだした。
騎士団長のザックさんのアイデアで、出城の前はわざと陸上トラック程の開けた場所を作り、バリスタが狙いやすく成っている。
そして、魔物避けの音や匂いを我慢しながらタンバの配下の一番隊百匹が、毒液や魔法を敵の集団に当てながら飛び回り相手をイラつかせて出城の正面に誘導している。
虫魔物に対抗するために荷車に乗せた魔物避けを中心に数百の弓兵士と魔法兵士が、飛び回る虫ばかりに集中して、まんまと広場に誘き出された。
開けた場所に出て、戦い易くなったと陣形をととのえるワルドの遠距離部隊は、離脱していく虫の部隊を確認してようやく、
「罠だ!!」
と、気がつくが、既に遅い…
出城の上からバリスタがしなり、物干し竿ほどある矢が打ち出され、次の瞬間、高そうな魔道具はガラクタへと変貌する。
落胆するワルド軍の長距離部隊だが、本当の恐怖はこれからだ。
キラキラと輝く粉が降り注ぎ、見上げた空には告死蝶が舞っている…
叫び声と紫の煙を上げながら、後方に控えるワルド軍本体を目指す弓兵や、魔法兵達。
しかし、ワルド軍本体は、魔道具が破壊されたとたんに後方にから二番隊、三番隊とパーフェクトクマ五郎に追いたてられて、広場へと進軍してくる。
奇声を上げで突撃してくる敵兵士をみるに、指揮官が完全にセミ千代の餌食になり、パニック状態で突撃命令でも出しているようだ。
四千余りの兵士は目の前で紫の煙を上げながら溶け死ぬ味方を目の当たりにし、恐怖した上に、半狂乱の司令官からの命令で出城に向かい突撃をかける。
敵方に連携や作戦など有ったものではない…
無策のワルド軍の先頭集団から、落とし穴の罠にはまり、姿を消して行き、その間もバリスタは唸り続け、さらなるパニックを生んでいる。
ワルド軍は仲間の尊い犠牲で罠の位置を判別し、数を減らしながらも出城に接近し、バリスタが運用出来ない距離まで近づいたので、ザックさん達は次の作戦へと移る。
俺の元にミヤ子も帰って、
『王様、あまりにも手応えが有りませんわ。』
と不満そうなので、俺は、
「クマ五郎と、合流して、偉そうなヤツと指示を出してるヤツにパラパラしたら皆で帰って来て。」
と彼女に指示をだすと、ミヤ子は再びルンルンで戦場へと飛び立った。
出城の足元にワルド軍が集まり始めて、
「梯子隊前へ!中から門を開けろ!」
と叫んでいる。
その声を聞き、タンバは、
「城蟻部隊、壁上部より蟻酸攻撃よ~い!」
と、言うと真珠の色の蟻が壁の上にビッチリ並び、そして、
「放てぇぇぇ!!」
と言う、タンバの合図で尻から酸を吹きかける。
酸を食らったワルド軍が騒ぎ、梯子を守ろうと盾を持った重装兵が盾を頭上に掲げて密集し始め、空堀の中の人口が一定量を超えた時にザックさん考案の二重床トラップが発動し空堀内の敵兵士全員がドスンと床ごと落ち込み、千人近くを離脱させた…
一緒に落ちた梯子を立てて、ワルド軍は穴から出ようとしたが、〈蟻酸〉を食らった梯子は脆くなり、鎧を纏った兵士に耐えられずに崩れていく。
もう、敵軍は残り千人前後…
普通ならば敵方は撤退一択たが、ミヤ子とクマ五郎達がこちらに向かってきているのが見えて、
『あー、溶けちゃったか…司令官…』
と、俺は理解した。
そして、クマ五郎達と合流したら、俺の最後のお仕事を始める。
クマ五郎と一緒に出城の門を少しだけ開ける。
ちなみに、出城の門に入っても、直接出城の指令室には来れない。
残念ながら門の先には迷路が広がるのみだ。
これはアリスの指示のもと、城蟻が壁を増設し、敵を分断させる出口の無いトラップ迷路に、我が軍で暴れ足りないヤツが配置されているエリアに敵を割り振るための大掛かりな罠である。
突き当たりの広場にザックさん率いるフェルド騎士団が待ち構えていたり、タンバと斬首カマキリの軍団の徘徊する人工高難易度ダンジョンや、ガタ郎が影を移動して暗殺を繰り返す首チョンパ逃走中エリアなど…
なんだか本当にワルドの方々が可哀想に思えてきた…
そして、数時間後…
一方的な戦は終わり、我が軍は、怪我人と怪我虫が出ただけだが、ワルド軍は半数が倒され、半数が捕虜に成っている。
現在いくつもの穴をピットホールで空けて、ドノバン様達が中心となり人物鑑定持ちが、
「兵士、兵士、貴族、兵士」
と鑑定して、捕虜を割り振っている。
「はい、兵士は右の穴、
貴族は、左!
アイテムボックス持ちは、中身提出してから奥の穴!!」
と、何時間もかけて、罠から助け、パンイチひんむいて、鑑定してから穴に放り込む…
鑑定スキル持ちの宰相のドノバン様も死んだ目をしながら、
「兵士、兵士、アイテムボックス、貴族…」
と割り振りつづけて、
騎士団長のザックさんのみ
「パンイチ祭り、再びだな!!」
と喜んでいる。
それからも2000人近くの捕虜の仕分け作業は続き、ドノバン様は休みなしで働き続け、
「はいはい、女性兵士は左奥だよ、穴に入る時には食事出すから。
はい次、兵士、兵士、近衛騎士、王子…王子?!!」
と、騒ぎだした。
どうやら敵国さんはワルド軍がヨルドの町などあっという間に落として、フェルド軍を城から引っ張りだし銀狼騎士団が裏から城を襲い、完全勝利して第一王子に手柄を立てさせる予定だったようだ。
『罠で王子様が死んでなくて良かった…』
と焦る俺だが、ドノバン様も想定外だったらしく、働き詰めで回らない頭でオロオロしている。
しかし、王子が居るなら今後の話が変わる…
フェルド王に連絡をドノバン様が入れて、数日は返事待ちとなる…
することもないし、帰ってしまうには関わり過ぎた俺は、手持ち無沙汰で、特別の牢獄に入っている王子に話をしに行った。
俺が、
「はじめまして王子。」
と言うと、王子は、
「私の処刑が決まったのか?」
と聞いてくる。
俺は、
「いえいえ、俺は、ただの冒険者ですよ。
王子様とお話したくて、暇潰し…というか?
ところで…何で攻めて来たの?」
というと、王子様は、
「ただの冒険者ね…
ムカデの大将が言っていたよ、
我らが王がこの戦に参加を決めた時点で、そちらに勝ちの目はなくなった。
とね…王子ぐらいでは、王には勝てなかったかね…虫達の王様…」
と、寂しそうに笑う。
俺は、
「ワルド王国だって、先の戦争で兵士を失っているのに、なんで直ぐに攻めてきたの?
確かにフェルド王国もガタガタだったが、無理に攻めて長引いたら、勝ったとしてもワルドにもダメージがあるだろうに…」
と質問すると、王子様は、
「後がなかったのだよ…ワルドには…」
とポツリポツリとワルド王国の厳しい現状を話し始めた…
ワルド王国の更に北の地に〈魔族〉の領土があり、
三百年前に勇者一向に極北の地に追いやられた魔族が、暖かく実り有る大地を求めて南下をしているらしい…
魔族って居たんだね…まぁ、勇者が居たらしいから、魔族が居てもおかしくないが…と思う俺だったが、その後も、何だか面倒臭いワードが次から次へと王子からでてくる。
王子はうつむきながら、
「魔族の力が強くなり、方々の国がジワジワと領土をもぎ取られているらしく、
皆、口を揃えて魔王が復活したのだと怯えだし、ワルドは退路を求めて南を目指し、フェルド王国を手に入れて、人と食糧をワルドへと送らねば、北の大地のワルドでは…もう…」
と…俺は、呆れて、
「全くもってアホだな…ワルド王国は…」
と言うと、王子は、
「なぜです!」
と少し怒るが、俺は続けて、
「魔族で困ってるなら、そう言って助けを頼めば、例え帝国の仲間でなくても助けてくれる国も有ったろうに…
仮にフェルドと戦ってフラフラになったワルド王国が、攻め滅ぼされたフェルドを統合しても、直ぐに食糧を生産したり兵士を用意できる訳ないでしょ?
農家も農夫にもダメージを与えて、騎士団が殺し合って…
さぁ、魔族と戦うぞ!とはならないでしょ?!」
と言ってやったら、王子もはじめは、
「ぐぬぬぬ!」
と、成っていたが、次第に力が抜けて、最後にはガックリと肩を落としていた。
王子は、
「では、我々はどうすれば…」
と聞くが、
「知らん知らん、自分で考えろ!」
と俺は冷たく言い放つ。
ここで俺の意見を採用して動いても言われたからになる。
自分で考えるしかないのだが、しかし、王子は、
「どうか、虫の王よお知恵を…」
と頭を下げる。
俺は、やれやれと、ため息を吐きながら、
「王子はワルド王国の皆をどうしたいの?あと、魔族達をどうしたいの?」
と意見をまとめ易いようにヒントをだす。
王子は、
「ワルドの国には魔族と交流のある村や、魔族にルーツを持つ人間も少数おります。
魔族が全て敵ではないのは理解しておりますが、魔王が、復活し魔王軍となれば話しは変わり、我々は魔王軍の敵となり領土を守る為に戦わなければなりません…」
と、考えながら話す王子に、俺は、
「じゃあ、ワルド王国に本当に必要なのは?
嫌々にでも従う兵隊?
それとも、仲間を助ける為に鼻息荒く馳せ参じる友達?」
と聞いてやった。
すると、王子は、
「私の従者を一名解き放っていただけませんか?!本国に手紙を出しましす。
フェルド王国に謝罪を先ずしなければワルド王国の民に未来はない…どうか、どうか、フェルド王国側にお口添えをお願い致します。
虫の王よ!!」
と、土下座をする王子に、俺は、
「伝えてはみるけど、あとは自分で頑張りな、あと、ポルタだから、虫の王って呼ばないで。」
と言って牢屋をあとにする。
背中で、
「感謝いたします。
ポルタ殿!私はリード、リードです。!!」
との王子の自己紹介を聞きながら…
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