ハトの正体
よろしくお願いします!
「ふむ……では、早速なのだ。ハトが思い出すことのできる記憶と、自身に対する認識はどの程度なのだ?」
ショウは質問するにあたり、ハトがどれほどのことに答えられるか確認するためにハトの現在の状態を確認した。
「えっと……思い出せることはほとんどなくて名前くらい。あとは靄がかかってるイメージ、かな。きっかけがあれば思い出せるけどきっかけがない限り思い出せなさそう。自分の認識は……」
ハトは自身の記憶についてはすぐに答えたが、自分の認識の話となった途端に口を噤んだ。なかなか、話し出そうとしないハトに痺れを切らしたショウは再度問いかける。
「む?認識はどうなのだ?」
「……言っても笑わない?」
ハトは自分の認識が笑われないか気にしていた。誰が見ても明らかに鳥の姿なのだ。だというのに自分が人間だと言ってしまえばバカにされて当然だろうと考えられる。これに対してショウは、
「そんなの聞かないことにはわからないのだ。だが、馬鹿にはしないと約束するのだ」
と、答えた。その発言は笑わないとは断言しなかったが、無責任なことは言わないところにハトは好感を持った。
そして、躊躇いながらも自分が人間だということを告白した。
「……わかった。じゃあ言うけど……」
「うむ」
「……実は僕、人間だったような気がするんだ」
「……!」
「わかってる。見た目がこんなのなのに変なこと言ってるとは思うよ。けどさ……」
そのハトの発言に、ショウは少し驚いた様子を見せた。そして、黙ったまま何かを考え込んだ。
笑われはしなかったが黙りこくったショウに対してハトは不安になった。だが、無言の時間はそのまま続き、その時間が長くなるにつれてハトに段々と苛立ちの気持ちが湧いてきた。
せっかく答えづらい質問に答えたというのに、自分から質問しておいて黙りこくったまま放置されれば、さすがのハトも少し不愉快に思う。そして、ハトは少しだけ文句を言った。
「……ちょっと、何か言ってよ」
「む、すまないのだ。なるほど……ちょいと失礼するのだ」
しかし、ショウは謝るだけで何かを言うわけでもなく、どこかから取り出した眼鏡をかけてハトのことを見つめ出した。
「え、なになに急に?なにその眼鏡……」
「しー……」
困惑するハトに対してショウは静かにするように指示し、ジロジロと不躾に見続けてブツブツと何か呟いた後に、さらに質問を続けた。
「ふむ……やはりそうなのだ?いや、であれば代替わりして力を失うはず……ハト、お主は前の記憶で人並外れた才能を持ってたりしていたのだ?どんなだったかは思い出せるのだ?」
「……え?そんなことはなかった……はず。どんなって言われても……思い出せないよ。ねぇ、それほんとに何?何か内側を見られてるみたいで寒気がするんだけど……」
ハトは不満に思いながらも律儀に質問に答えるが、ショウは集中しているのか、ハトの疑問に答えようとしない。そのまま、思考の海に沈んでいった。
「ほう……では、違うのだ。……それと、ぼんやりはしているようだが、なんとなくで正誤くらいの質問には答えられるのだな。具体的なことは無理。だとすると……」
ぶつぶつと何かを呟きながら思考を整理し、何らかの結論に至ったらしく、やっと一度考えが止まった。しかし、すぐにまた新しいことに気づいたらしく考えに耽り始めた。
「あ、たしかにそうかも。けど、なにがきっかけになるか、質問されてみないとわからないよね。なんか厄介だなぁ」
ハトは未だに諦めず、もはや独り言のようなショウの発言にも相槌を打つようにして言葉を返す。しかし、その努力は虚しく、
「……記憶に関してはこの考えでよさそうなのだ。けど、本命の謎はそのまま、といったところなのだ。この霊力の質と多さはなんなのだ……?」
と、ショウはハトの発言に興味を示そうともしなかった。その態度はハトを不愉快にさせるのに十分だった。
「……ねぇ!無視しないでくれない!?結局なにがわかったのさ!」
ここまで会話を成り立たせようとしないショウに対してハトはその苛立ちを隠さず、棘のある口調でショウに文句を言う。
不死鳥の本気の苛立ちにショウも気づいたらしい。その表情はあ、やべっと言っているように見えるほど焦っており、慌てて謝罪の言葉を口にした。そして、わかったことを話し出した。
「む!?……す、すまなかったのだ。つい考え込む癖が出てしまったのだ。ちゃんと説明するから許してほしいのだ……こほんっ、まとめると、ハトは別の世界からの人間の転生者だと予測できたのだ」
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