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迫り来る魔の手

よろしくお願いします!

「え、えぇぇぇ!!?やっぱり!!なんでぇぇぇぇぇ!!!??」



 湖のほとりに絶叫ともとれる高い叫び声が響き渡る。


 その瞬間、森がざわめき、虫が逃げだし、鳥の飛び立つ音が聞こえた。


 ハトにそんな周囲を気にする余裕はなく、頭の中は驚愕と困惑に支配されている。


 フェニックス、不死鳥、火の鳥、鳳凰、朱雀と呼び名は様々だが現実には存在しないはずの鳥が存在していて、不確かな記憶ではあれど人間だったはずの自分がそれになっている。


 驚愕に驚愕を重ねたそんな状態を、誰がすんなりと受け入れられるだろうか。


 少なくともハトは、思考が止まり呆然とその場に立ち尽くしていた。鳥なのに声が出たことにも気付かずに。


 しかし、状況はそんなハトを置いていき、移り変わる。



「対象に類似した霊力を観測!直ちに急行せよ!!」



 先程の叫び、それとも立ち上る水蒸気が原因となったのだろうか。遠くから聞こえる野太い声と共にガシャガシャといくつかの金属が擦れる音が高速で近づいてきていた。



「対象を確認!む……火の色が違う?いや、気にするな!奴が不死鳥であることに変わりはない!各自、準備に移れ!!」



 気づいたときにはすでに遅く、ハトは謎の鎧兜を着込んだ集団に囲まれていた。



「え、なになに?誰!?」



 驚愕して固まっていたところに突然現れた完全武装した人の集団に対して、ハトは慌てることしかできなかった。咄嗟にその集団に向けて疑問を投げかけるが、



「くっ、相変わらず強力な霊力だな……皆の者、こころしてかかれ!」



と、鎧兜の集団はハトの質問に答えることなく、むしろその警戒を強めたようにも感じられた。そして、その集団はリーダーと思われる人物の指示に従い、洗練された動きでハトを取り囲み、刀を突き立てた。


 次に、その刀に手が当てられるとハトの足元に魔法陣のようなものが浮かびあがり、その結果、ハトは立てられた刀で形作られた円から出られなくなった。



「え、何?なにこれ……!?」


「円結界、設置完了しました!」


「よし、これより霊力の抽出に取り掛かる!槍を持て!!」



 リーダーの合図で手の空いている者が、そのリーダーに槍を手渡す。その槍は石突きの部分から管が伸びてタンクのようなものに繋がっており、着込んでいる鎧兜に似つかわしくない機械式のものだった。


 その穂先がハトに向けて突きつけられる。



「え!?やめて!離して!」



 ハトはここにきてようやく相手が敵対していると理解した。なんとかして逃れようともがくが狭い円状の結界の中では満足に動けない。そして次の瞬間、鎧兜のリーダーによって槍が投擲されてハトの体に突き刺さった。



「うっ……!!あ、あぁぁあ!?」


「命中を確認!装置を起動しろ!!」


「了解!!」



 ハトに槍が突き立てられ、ハトはその瞬間、鋭い痛みを覚えた。その痛みに思わず声を上げて呻き声を出し、涙がこぼれるが、



「ふぐっ、うぅ……ぐすっ。ん?あれ?段々と痛みが……」



と、なぜか強くなるどころか引いていく痛みに疑問を覚えていた。


 だが、その間も鎧兜の者たちは次の行動へと移っており、槍から繋がるタンクのような装置を起動する。


 すると、ハトは全身から力が抜けて立つことすら叶わなくなった。



「えっ!?うわぁ……!か、体が動かない……!?」


「装置、正常に作動!」



 ハトが体を動かせなくなったことで、部隊の隊員らしき人物によって装置が正常に機能したと告げられる。それを確認した部隊のリーダーは満足げな顔で作戦の続行を言い放つ。



「よし、このまま続けろ!!」



 ここまで順調に進行し、成功と言ってもいい段階まで来ていた作戦だったが、突如として異常が発覚した。その異常は装置を見ていた隊員によって告げられた。



「予測終了時間、およそ……一時間!?何だこの霊力の量は!?今までの比じゃない!!装置からあふれて爆発するぞ!?」



 その異常とは予測される終了時間が長いことと、そこから導き出される霊力というものの量が多すぎることであり、そのあまりに規格外な数値にその隊員は口調が乱れてしまうほど驚き、慌てていた。これに対して、部隊のリーダーが、



「おい、落ち着け!霊力が多くてもこの結界があるだろう!それに、装置は本拠地に予備があったはずだ。至急連絡すれば、まだ間に合うだろう?」



と、なだめていた。


 その一方で、当の本人である槍を刺されたハトはその会話を聞く余裕すらないほどに倦怠感を覚えており、部隊の者以上に慌てていた。



「何なの、これ!?気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!」



 槍から何か大切なものが吸われていく感覚の気持ち悪さに吐き気を催したハトは何とか逃れようとしてもがくが、刺された槍によって力が体に力が入らず、どうすることも出来ずにいたのだ。


 そして、ハトにはこの感覚に似た経験を思い出した。靄のかかった記憶だが、それは実際の体験によって段々とはっきりしてくる。


 体から何か大切なものが抜けていき、段々と意識が遠ざかっていく。


 これは……死の感覚だ。

ありがとうございました!

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