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命を

よろしくお願いします!

「っと、その前に自己紹介を忘れてたわ。私はラフォレ。この森に住んでいるエルフよ。よろしくね」



 いざ現状について、と二人が気構えた途端に話が急カーブをした。突然起こったラフォレによる寄り道だったが、確かに必然なもので、むしろ今まで発生しなかったことがおかしな会話である。


 そして、このことに突っ込みをいれるだろうショウはラフォレの発言のある部分に疑問を覚えたことでそうしなかった。



「エルフ……?」


「ほら、耳とかでわかるわよね?」



 ラフォレは自分の耳に手を当てて二人に見せつける。その横に少し長く尖った耳はピコピコと動いており、血の通った本物であろうことを感じさせる。



「わぁ!本当にエルフなんだー!よろしく!僕はハト、えっと……実は記憶喪失で、名前以外はあまり覚えてないんだ。だけど、あまり気にしないで」



 美しい姿と特徴的な耳からもしやあのエルフでは?と予想していたハトは、その予想が的中していたことで少し興奮して嬉しそうな様子を見せた。そして、その勢いのまま自己紹介を済ませた。その際に少し尻すぼみとなってしまったが、これは自身の記憶喪失についてどう話したものかと悩みながら話したためである。勢い任せにしたことで頭で内容を定めていなかったのだ。



「あら、そうなの?……何か困ったことがあったら相談してちょうだいね」



 いきなり記憶喪失だと告げられて内心驚いていたラフォレだったが、ハトの自分でもあまりわかっていないような困った表情を見たことで詳しく問い詰めるようなことはしなかった。ただ、力にはなってあげたいというそんな想いから優しくハトに声をかけた。


 あれ?我の番は……と、意気揚々と自己紹介する気満々だったショウは少ししんみりした空気に気後れしていた。ここは普通、流れで全員が一度自己紹介するものではないのか。そんな困惑がショウの表情からありありと伝わる。


 そして、その表情はラフォレに見惚れているハトに伝わることはなく、オロオロしているショウを目の端に捉えて気づいたラフォレが慌ててたずねた。



「……あ。あ、あなたは?」


「う、うむ、待ってたのだ!我の名はショウなのだ!訳あって世界中を旅しているのだ!よろしくなのだ!……それで、ここはどこなのだ?」



 そのラフォレの慌てた様子から自分が一瞬とはいえ忘れられていた事実に悲しくなりながら、ショウは震えた声を精一杯に張り上げて自己紹介、もとい自己主張をした。我はずっと順番を待っていたのだ!というか、我を起きるのを待ってたのではないのか!?と。


 ただ、それを声に出して言うことはない。なぜなら、もっと聞かなければならないことがいっぱいあるからだ。だから、ハトにジトッとした視線をくれてやるだけにとどめて、まず確認しなければならないことを質問した。目が覚めて、知らない場所にいたら真っ先に聞くこと、ここはどこなのかということを。



「ここ?ああ、そう言えば言ってなかったわね。ここは、私の家。そして、エルフの住む里よ。ようこそ、エルンへ!」



 そして、告げられた事実は、ここがエルフの隠れ里だということだった。





「ッ!?お主は、本当にエルフ……なのだな?」


「ええ、そうよ?」



 ショウは自身の心臓がドクン……ドクン……と、鼓動を少しずつ大きくし、速くなっていく感覚を覚えていた。それに伴って声も段々と大きくなっていく。



「そして、ここは!エルフの里、エルンなのだな!?」


「ええ、そう言っているじゃない」



 ここがエルフの里、エルンであることを再度確認しながら、ショウはウツワの姿を思い出していた。細身の体に尖った耳……そして金髪だと思っていたが、よく思い返すとその髪は確かに少し黄緑がかっていた。


 そして、ショウの中で点と点が繋がった。


 ラフォレはエルフであり、ウツワもその姿に酷似している。そして、ここはエルフの里だ。


 ブワッと、ショウの全身から冷や汗が噴き上がる。



「まさか、ウツワも!?ということは……お主もウツワの!?アホなのだ我は!ハトが懐いていて奴の霊力を感じないからって、てっきり……クソっ、ハト、今すぐここから……」


「ちょっと、ショウ!!」


「ハト、逃げなきゃなのだ!」


「ショウ!!!」



 驚愕の事実に気づいて、その事実から最悪の状況を予測したショウは錯乱したかのように騒ぎ立てた。こいつは、ラフォレはウツワの手先だと!そんなショウに対して、ハトは声を荒げて止めた。そして、真剣な表情でショウに語りかけた。



「だとしてもだよ。僕らは負けたんだ。そして、助けてもらったんだよラフォレさんに。命を」



 ハトは……とっくに気づいていたのだ。ショウより早く起きていたこともあるが、そうでなくても気づいていただろう。気づいた上でラフォレに対して感謝していたのだ。


 命を。


 ショウはそう言われたことで、落ち着きを取り戻すとともに自分が死にかけていたことを思い出し、あの状況から今自分が生きている理由を考えて謝罪を口にした。



「……あぅ……すまなかったのだ」


「ふふ。いいえ、あなたの懸念はもっともだもの。彼……ウツワもエルフの姿をしているものね。正直、今更とも思ったけど、ふふふふ!気にしないでいいのよ?」



 ラフォレからすれば、え?今更そこ?と、思わないでもなく、笑いが抑えきれていなかった。一応、ショウの考えが及ばなかった理由に心当たりはあるが、微笑ましくて笑い飛ばしていた。



「ねぇ、ラフォレ。ウツワは今どこに?この村に来るの?」



 ただ、ウツワの動向が気になることは確かであり、しょんもりとしているショウの変わりにハトがたずねた。



「いいえ。彼は里に住んでいないもの。基本的にこの森のどこかを一人で行動しているわ。今は……きっと森中を探し回っているわよ」


「それならバレるのも時間の問題だと思うのだが……やはり逃げた方がいいのだ?」


「逃げてもいいけどどこに逃げるのかしら?この森において彼が探知しない場所なんて限られてるわよ?ちなみに、こうして人の住む場所とその一定の周囲がその一つ。だって、プライバシーの侵害だもの」



 ラフォレの返答には懸念点が存在した。しょんもりしていたショウだったが、さすがに聞き逃すことができずに指摘するが、それもラフォレが考えあってこの里に連れてきたことの証拠になるだけだった。



「なるほど……灯台下暗しなのだ。ふむ、この森にいくつ里があるのだ?エルンの名前だけは世界でも知られているのだが……あと他にいくつかさとがある以外は知らないのだ」



 これによってようやくこの村に連れてきた理由が腑に落ちたショウはやっと調子を取り戻してきた。率直に言うと、知的探究心が湧いて出てきたのだ。



「いくつだったかしら……?エルラン、エルリン、エルロン……」


「随分と似た名前だね……」



 出てきた名前がエルンによく似た名前であることにハトはつい呆れた声が出てしまう。



「六つね」


「それ、あとはエルルンとエルレンなのだ?」


「あら、よくわかったわね。そうよ!」


「そうよ!じゃないのだ!?単純すぎるのだ!?」



 そして、数がわかればその里の名前は容易に予想できた。あまりに単純すぎる命名にショウはしょんもりとしていたことも忘れて、つい突っ込みを入れてしまう。



「あはは!まぁまぁ、いいじゃない。気にしないで?とにかく、その六つの村の中ではウツワの探知に引っかからないから安心していいわよ」



 その突っ込みは空を切ったかのようにあっさりと流された。そして、ラフォレはやや強引に話をまとめにかかる。



「そっか、よかったぁ……ありがとう!」


「ひとまず、理解はしたのだ。助かるのだ……けど、少し疑問が残るのだ」



 確かに、ラフォレがそうしたようにウツワが二人を探知できるかという話はまとまった。しかし、ショウには一番初めからずっと疑問に思っていたことがあったのだ。



「あら、何かしら?」


「ラフォレ、お主は本当にエルフなのだ?ウツワもなのだが……その、我の知るエルフとは随分と異なるのだ。だから、お主が名乗るまでエルフだとは思わなかったし、ウツワがエルフだとは思いもしなかったのだ」


「え?どういうことなの、ショウ。ラフォレさんはこれぞエルフって姿じゃない?」



 その疑問とは……ラフォレとウツワがエルフであるのかということだ。そもそも、長い時間を生きたショウがエルフを知らないはずがないのだ。だというのに、ラフォレとウツワがエルフと思いもしなかったのだ。それは……いささかおかしいだろう。


 そして、その疑問は当の本人から肯定された。



「ふふふ……ハト、さんはいらないわよ。それと、ショウの言うことも確かなのよ」


「えぇ!?」


「厳密にはショウの知っているエルフ……人前に姿を現すエルフと姿を現さないエルフで違いがあるのよ」



 ラフォレの肯定につい驚きの声をあげるハト。しかし、いかにもエルフの姿をしているラフォレ以外のエルフの姿があると聞けば仕方ないというものだろう。



「ということは、ラフォレさ……じゃなかった。ラフォレは姿を現さないエルフなの?」


「ええ」


「どうしてそんな違いが出たのだ?」


「それは……話が長くなるけど聞く?」


「ハト……」



 ショウは乞うように上目遣いをした目をハトに向ける。



「いいよ、聞きたいんでしょ?ラフォレお願いできる?」


「わかったわ」



 こうしてエルフの昔話が始まった。

ハトは一度死んだ記憶があることから、命さえ助かればいいと思っている節があります。


ありがとうございました!

もし、面白いと感じたり、これからも読みたいと思ったりしていただけましたら、ぜひこの下にある☆評価やブックマークなどで応援していただけると嬉しいです!

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