霊術戦
遅くなってしまい、申し訳ありません。よろしくお願いします!
今回の戦闘において、ハトとショウはウツワに対して純粋に霊術で打ち勝つことは、まず叶わないだろう。片や神獣に次ぐほどの実力と霊力を持つ世界最強の霊術使い。片や神獣になりたてでまともに霊術を制御できない元人間と技術と知識こそあれど保有霊力は全く二者に及ばない喋るレッサーパンダ。
ハトがいる限りどちらも死に至ることはないと考えられるが、捕縛されてしまえばそこまでである。捕縛を解いている間に、新たに霊術を掛けられることが容易に想像できるからだ。また、世界樹にハトが触れただけでその事実を知り世界樹の側に姿を現してきたことから、離れた場所から何かが起きたことを察知できる何らかの術を使える可能性もある。
よって、ハトとショウの敗北条件は動きを止められる、ひいては捕まること。
では、勝利条件は何であろうか。先ほどの条件を聞くと勝ち目はほぼないようにも思える。
例えば、逃げてもウツワは転移を使うことから逃げきれない。他にも、真正面から霊術で戦った場合、捕まらなかったとしても膠着状態に持ち込むのが精々な可能性が高く、勝ちの目は見えない。
「ショウ!何か考えがあるんでしょ!なら、僕はそれに従うよ!だから、勝とう!」
それでもハトはショウに何らかの考えがあると信じて疑わなかった。自分では決して勝つことは想像できないが、ショウの未来を見据えるような目を見て少なくとも何かがあることはわかったのだ。であれば、もうそれに賭けるしかない。疑う暇すらないのだから。
「お主、ヤケクソになってるのだ!?」
「僕は本気だよ!!もう後がないんだ!腹を括ったって言ってよ!!」
「それをヤケクソって言うのだ!?」
ショウの言う通り、ハトは半ばヤケクソな考えをしている。しかし、
「この状況にしたのはショウでしょ!付き合ってあげるって言ってるの!!責任とって何とかしてよ!!」
と、それでも逃げるという選択肢はとらなかったのだ。メンヘラのような発言こそしているが、本当ならば怖くてたまらないはず。実際、言葉は少し震えており、それでも逃げないということは、つまり、そこにはショウへの確かな信頼があるのだろう。
「……もちろんなのだ!」
そこまで覚悟を決めてくれているのであれば、ショウはこれ以上ごちゃごちゃ言わなかった。すぐさま、戦闘の指示へと移る。
「ハト、霊術とは言葉が大事なのだ!自身の炎を言葉に意思をのせて操るのだ!」
「……わかった!けど、霊術の言葉知らないよ!?」
霊術の肝は言葉である。神は言葉を巧みに操りこの世界を創造した。まさに神業である。そして、そんな神の創造した世界では言葉に力が宿った。それこそが霊術である。適性こそあるが、それでも言葉を操るものが霊術を使えないことはない。
では、言葉とは何か。それは意思をのせた音である。つまり、究極的には、そうしたいと願い、自分望んで声を発すればその願いは叶えられるのだ。ただ、その願いを全て叶えられるからこそ神であり、できないからこそ生物だ。そして、そのできるできないことを適性である。
話を戻そう。では、霊術には決まった言葉が必要であろうか。答えは否である。
「あんなもん、誰もが扱いやすくするための汎用性を重視したものなのだ!熟練した霊術使いは皆、自らの言葉による霊術を持ってるのだ!何より、ハトのその炎はハトだけのものなのだ!規格に当てはめることなどできないのだ!!」
あんなもん、とショウは言うが、実のところ、ウツワが世界に提示した霊術の規格は当時では革命と囃し立てられたほどであった。というのも、その当時までは各々が思いのままに言葉を発して霊術を操っていたのだが、基本的に一人につき一つの属性までしか使えなかった。
それが、霊術の規格が世界単位で設定されたことにより、世界における統一された認識として意思が形成されやすくなり、生活に使える程度とはいえ、様々な属性を誰しもが使えるようになったのだ。また、霊術を齧った程度の人でも自身の適性であれば、その威力すらも向上させている。その末には世界において霊術と言えばウツワの提唱した規格を指し示すこととなった。
ただし、規格はあくまで規格。自分の言葉ではなく、他人の言葉。意思を他人の決めた型に流し込んでいるに過ぎないのだ。これによる弊害もいくつかあったのだが、それはまたとする。
つまり、適性と意思さえあればどんな言葉でも霊術は成立するのだ。そして、ハトの適性などわかり切っていた。それは、全てを再生する炎である。ならば、後はそこに操る意思さえあればいい。
「それなら……『炎よ』!」
意思がなくともある程度は操ることのできる神獣の炎に意思が伴い、その威力は絶大なものとなる。たった一言の言葉で、ウツワの放った霊術が一瞬にして再生され、消え失せる。
「ッ!?水がこんな一瞬で蒸発するとは……やはり世界樹の側には置いておけないな。さっさと立ち去るが良い。『三式・土槍・十段』」
「な!?大きすぎる!?」
「三式を十段!?化け物がすぎるのだ!」
先程までウツワの放っていた霊術は低威力で大きさも小さい五式に分類されるものだった。その代わり空気抵抗が小さくなることから速度は比較的速いが、適性があれば誰にでも使用可能な戦闘における最低レベルの霊術だ。その下には六式といって生活に使える程度の威力も速度もないものがあり、これが適正に関係なく誰もが使える霊術だ。
そして、五式より上の四式ともなると適性を持つ人物が訓練を重ねて使用できるようになるレベルであり、それ以降も三式、二式、一式とレベルが上がり、それに伴って威力と大きさも上昇するが、同時に才能と豊富な霊力が求められるようになる。
このように、一般的に普及している霊術は規格が定められているが、三式以上を扱える者は稀である。そして、ウツワはその全てを高水準で扱えるのだった。
そのウツワの放つ霊術は五式で二十五個を同時に放ったといえども決して弱くはない。それを一瞬で蒸発(正確には再生であるが)されたことでウツワは警戒レベルを上げた。
直後、放たれたのは三式。それも、同時に十段。土で構成された柱のような太さもある槍が二人を襲う。
ハトは自身の炎で土の槍を再生しても土の塊が飛んでくるとだけと考えて、慌てながらも辛くも避けた。幸いにも面でなく点での攻撃だったことで避けれたのだ。
「ショウ、この後はどうするの!」
「もっと、もっと炎を使うのだ!さっきの土にも使うべきだったのだ!」
「え!?でも、土は再生しても土だよ!意味ないよ!」
ショウの指摘にハトは思わず反論する。何か理由があるのかもしれないが理解しきれないが故の疑問だ。
「いや、霊術ならば……」
何かを言いかけたショウだったが、それを聞くことは叶わなかった。
「やぁ。そろそろ出て行く気になったかね?『ニ式・風砲・二段』」
突如、二人の側にウツワが現れる。両手を前に伸ばして放たれるのは二式。
「ッ!?ハト、炎を……」
「ほの……うあぁぁぁぁぁ!!!!!?」
「うぐぅぅ!!!?」
ショウは咄嗟に炎を出すように指示するが、至近距離で放たれたことで間に合わず二人はまとめて吹き飛びながら地面へと落下していった。
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