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真意

よろしくお願いします!

「ハト、飛ぶのだ!」


「え、う、うん!」


「『五式・風砲・二段』!!」



 ショウがウツワに対して片手から風の霊術を放ち、その隙にハトはショウの合図にあわせて勢いよく空へと飛んだ。そして、ショウはもう片手からも風の霊術を放って、それを推進力にして空へと吹き飛んで高く打ち上がった。ハトは咄嗟にショウのそばへ寄ってその背に乗せてからそのまま高く飛び上がる。この間、ウツワはショウの攻撃を避けつつ笑みを浮かべたまま、こちらを眺めていた。



「ほう……風の霊術に適性があるのか。それに、いい精度、そして練度だ。どれ、『五式・水球・二五段』」


「っ!?ハト!!」


「わかってる、けど!?」



 急激に迫ってくるいくつもの水の塊を避けようとするが、数が多い上にその速度はハトが、不死鳥が辛うじて目で追えるほどで、これより速ければ反応すらできなかっただろう。そして、目で追えても、体までは追いつかず、数発掠ってしまう。



「いづっ!?」


「ほほう!五式の速度ですら躱されてしまうのか!さすがは神獣といったところ。さて、逃げるのなら追うが、何をしているのやら」



 高く飛び上がった二人を見てウツワは、何度か追撃をしながら出方を伺っていた。しかし、二人は一向に逃げる様子は見せず、ただ上空を飛びながらウツワの放つ霊術を避け続けていた。


 その一方で、ハトとショウは二人してウツワの様子を伺いつつ、追撃の手を緩めないものの苛烈にならないことにに疑問を浮かべながらも二人の考えを共にするために言葉を交わす。



「ショウ?あのウツワって人、誰なの!?」


「あれは奴自身が言った通り、世界樹を守っている者なのだ!世界樹を守るためなら手段を選ばず、容赦がないのだ!」



 まず初めに、ハトがウツワの詳細をたずねる。突然に現れて、突然襲ってきたのだからその流れは至極当然だった。これに対してショウは、焦りながらも端的に使命に従順なヤバい奴だと伝える。もちろん、それだけでハトは理解しきれないが、少なくとも自分らを敵視していることは理解した。ただ、容赦がないと言われてもピンとこないが、次のショウの言葉で少なくともその言葉に見合うだけの実力があると納得せざるを得なかった。



「そして、世界中で使われている霊術の規格を定め、その全てを使える者でもあるのだ!」



 それは、自分たちが相対しているウツワという人物が、霊術の第一人者であり、少なくとも世界においてトップクラスの霊術使いであることを示していたからだ。実際、トップクラスどころではなく、神獣を除けばトップであり、そしてその神獣相手にも使える霊術の多彩さから引けを取らないと言われる程であった。



「ッ!?それって、つまり、霊術のスペシャリスト、達人ってこと!?」


「うむ、そうなのだ!」



 驚きのあまり、ハトはその事実を受け入れられずに言葉にして問い返すが、あっさりとショウに肯定されてしまう。



「ちょっと待って!?なんでそんな人に喧嘩売ったのさ!?場を濁してこっそり行動することだってできたかもしれないじゃん!!」



 であれば、なぜと思うのは当然の帰結だ。あの状況を誰が見てもショウがウツワに対して喧嘩を売っていたように見えるだろう。


 ハトの指摘にショウは言葉を止める。ハトは器用に振り向き、ショウのことをじっと見つめ、返答を待つ。次々と水球や土槍がとんできている中、二人は互いの目を見つめ合う。……はっ!そう声を出して、目と口を大きくかっぴろげ、両手を上に上げて、ショウは驚きを全身で表現した。



「え、嘘でしょ!?本当にただ嫌いだから喧嘩売ってたの!?」



 ショウの反応にまさかそんなわけないだろう!?と疑いながらも、こんな時に冗談など言わないはずと考えて、信じたくはないがハトの中においてショウがつい喧嘩を売ってしまっただけということが確信に変わりつつあった。



「いや、流石に冗談なのだ」


「本当かな!?もう少し、交渉の余地があったように思えるんだけども!」



 その確信はショウの口から冗談と告げられても最早、信用ならないほどのものであり、ハトはショウに対して疑いと非難の目を向ける。


 ショウはハトの様子を見て、ハトがあまりにも余裕のないことを悟った。それも、普段ならば確信を持って受け入れたであろうと考えられる冗談すら受け入れられないほどに。それも無理もない話であり、ショウと言えども現状に全く焦っていないわけではない。ただ、



「……ハト、聞くのだ」


「え?」


「我はこの森に来る以上、遅かれ早かれ、ウツワが動き出すことはわかっていたのだ」


「……そうなの?」



と、ショウがウツワのことを考慮していないはずがなく、未だ辛うじてではあるが想定の範囲内であった。



「うむ。以前に不死鳥がこの森に現れた時もその姿を見せたと聞いていたのだ。故にそれなりの対策を講じていたのだが……」


「それが、あの人を煽るような言葉?」


「うむ。奴も変わり者なのだ。事前に得た情報から奴の興味を引く話題を用いて、なんとか交渉までに持ち込んだのだが……おそらく、奴に我々の目的は見透かされていたのだろうな。最初から最後まで手のひらの上で弄ばれてしまったのだ。すまなかったのだ」



 ショウがウツワを煽って苛立たせていたのは、ウツワの興味を惹くためであった。ウツワは自他共に認めるほどの変わり者であり、かつ、長い間生きていることからちょっとしたことでその心はなびかない。また、その姿を人に見せていた頃はその名を知らない者はいないほどの有名な人物で、今では伝説の偉人として語り継がれている。


 そんな相手に対して興味を惹かせるのは至難の業であり、ショウは失敗しこそしたがかなり善戦したと言っていい結果だった。


 先ほどの冗談の時とは異なり、今のショウの話には真剣味があったと、少なくともハトは感じていた。例え、この発言の内容が一番の理由でなくとも決して嘘ではないとハトは確信する。



「……そこまで考えてたんなら、気にしないでよ。僕には何もできなかったんだから」



 ハトはそもそも、自分にそこまで責める権利はないと言って棘を引っ込める。考えなしにただ嫌いだからという理由で敵に回してはいけない相手を敵に回したのでなければ怒る理由もないのだ。



「むぅ?それならよかったのだ!」



 ショウはハトの答えを聞くと先ほどまでの真剣な雰囲気を嘘だったかのように霧散させてにたりとした笑みを浮かべていた。



「……あれ?」


「この機会を逃せば、二度とこの森に入ることができなくなるのだ!なにより……お主、あそこまで馬鹿にされて悔しくないのだ!?我には我慢ならないのだ!ハト、今回はお主の力も借りるのだ!手段を選んでいる余裕はないのだ!!」



 そのおかしな様子にハトは判断を間違えた気がしたが、そう考えるには遅すぎた。なるほど、ショウの言葉に嘘はなかったのだろう。しかし、それはウツワに対して放った言葉も例外ではなかった。それだけのことだった。



「ねえ!?やっぱりウツワが嫌いなのは本当なんでしょ!?うわぁぁ〜ん!?まだ修行終わってないんだよ!?普通に痛みを感じるのにどう戦えって言うんだよぉ!!?」


「なぁに、我に秘策があるのだ!我に任せるのだ!!」


「あー、もう!!信じるからね!!?いいんだよね!!?」



 ハトはもう後には引けず、やけくそながらショウのことを信じる以外に道はなかったのだった。

ありがとうございました!

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