伝説への第一歩
よろしくお願いします!
「で、どうやって降りようか?ショウの来たルートを戻る?」
ショウがハトを落としかけたことにハトが散々怒ったあと、二人は降りる方法について話し合っていた。ハトは木の下に行くのであればそのまま木を降りる方が手っ取り早いのではと考えてそう発言した。
「いや、さすがにそれは面倒なのだ。ハト、この木の根元まで我を乗っけて飛べるのだ?」
しかし、それはショウによって面倒だと切り捨てられる。実際、ハトは空を飛んで登るのでさえ一苦労だったのだから、これをよじ登るなど正気の沙汰ではないように思える。それをこなしたショウの世界への想いはどれほどに至るのか、窺い知ることは難しい。とにかく強い想いであることだけはハトにも理解することができた。
「できると思うよ。……ショウはさ、この木を登るのにどれくらいかかったの?」
「むぅ?我は体が小さいから人一倍かかったのだが、それでも二十日ほどなのだ。最初は魔物や妖魔も多かったのだが、高くなるにつれて減ったからそんなに大変ではなかったのだ。木登りが得意なのもあったのだ!」
ハトはつい気になって聞いてしまうが、ショウはそれをこともなげにさらっと言って述べた。百年以上生きてきたショウにとって二十日とは短いのだろうかと、ハトはその感覚に驚愕する。
そうして固まっているハトをよそに、ショウは、
「それでも、面倒であることには違いないのだ。だから木から降りるのはハトに頼むのだ!」
と、話を先へと進めた。自分の名前を呼ばれたことでハトは再起動し、
「う、うん!任せてよ!僕、頑張るよ!!」
と、気合十分な声をあげた。
「うむ、頼もしい限りなのだ!おねがいするのだ!では失礼して……」
ショウはハトの了承を得て早速、その背に乗り始めた。ショウにとってハトの体は少し大きく、ハトが屈むことでやっと乗ることができた。
「どう?乗り心地は保証できないけど……とりあえず、落っこちたりしなさそう?」
ハトの体はその全身が白い火に包まれているが、羽だとか爪だとかの区別は可能である。そのため、ショウはハトの背の羽を掴むことができていた。
「ふむ。これなら、速く飛ばない限り大丈夫そうなのだ。そしたら……」
ショウはハトの乗り心地を確認し終えて、大丈夫だという旨を伝える。そして、試しに飛んでみてとお願いしようとしたその矢先、
「おっけー!それじゃ、行くよ!!」
と言ってやる気満々なハトは木のてっぺんから飛び降りた。
「えっ、ちょっ、待つのだ!?」
ショウの静止の声など届かぬまま、二人は重力に身を任せて落ち始めた。
「ぬわぁぁぁあああー!!!!?落ち、落ちるのだぁぁぁー!!?」
ショウは鳥の背中という乗り慣れない場所から落ちないように必死にしがみつく。一度でも離してしまえばそれこそ必死である。元人間の鳥に成り立てのハトには空中でショウをキャッチすることなど不可能であるからだ。
「え、なぁにー?あ、そろそろ地表だよ!!少し角度が変わるからしっかり捕まって!!!」
ショウの叫ぶ声は風の音によってかき消されてハトの耳にはその一切も届かない。そのせいでショウが声を届けたい相手であるハトは、呑気にもそろそろ地表だから角度を変えるなどとのたまう始末だ。
「待て待て待て待つのだぁー!!?ぬぅおぉおおー!!!?……あ」
ハトが多少斜めに落ちていたとは言え、地表近くまで行き、いきなりその体を地面と水平にすれば乗っているショウに変な力が加わる。そのことでショウは前のめりになり足が前に投げ出される。その勢いで捕まっていた手はハトの羽を一本引き抜きながら離れてしまう。
「え!?」
流石のハトも自分の羽が引き抜かれれば、その痛みからショウに何かあったことに気づく。しかし、既に時遅し。ショウはハトを置いて、ハトが目印にちょうど良いという理由から目指していたコブと因縁のある湖へと勢いよく吹っ飛んでいった。そして、角度が良かったのだろうか、水切りをするように水面を二回ほど跳ねたのちに、ブクブクと泡をたてながら沈んでいった。
「ぶくぶくぶく……」
レッサーパンダがぬわー!と叫びながら吹っ飛ぶ様は少しシュールで、ハトはついショウが水の中に沈むまで眺めてしまった。
「……はっ!ショ、ショーーーーウ!!?」
その後、悪戦苦闘しながらもハトはショウを救出することに成功した。幸い、水に沈む前に意識が飛んでいたらしく、ショウはほとんど水を飲まずに済んでいた。ハトはガブ飲み!
「ぶべぁぁ!!じ、死ぬがど思っだのだ……」
「げほっごほっがふっ……ご、ごべん!ほんどーに、ごべん!!」
湖岸へとたどり着いた二人はそう言った後、しばらくの間、呼吸を整えるために時間をつかった。二人の間に言葉はなく、ただ荒い呼吸音がその場を支配する。その呼吸音がゆっくり、ゆっくりと静かなものに変わり、二人の間にやっと静寂が訪れる。そして、先に口を開き、その静寂を破ったのはハトだった。
「……そんなに速かったかな?」
ハトは目をショウから逸らしながらずっと気になっていたんだとばかりにそう訪ねる。つまり、ハトはショウが落ちたことに罪悪感はあれど、納得がいっていないのだ。
これにはショウもやっとの思いで落ち着いた呼吸を荒げて叫ぶ。
「落ちてるのも速いのもあったのだが……急ブレーキが過ぎるのだ!?それと!この手で!どこに!つかまると言うのだ!!?」
ショウの体はレッサーパンダに酷似しており、その手はあまり器用に動かすことに向かない。木登りは得意なことからしがみつくこともできるように思えるが、それさ爪をたてた場合であり、まさかハトにたてるわけにはいかなかった。故に、なんとかして指の隙間に羽を挟むことでしがみついていたのだ。
「……あ」
ハトはショウにその可愛いお手てを向けられて初めてそのことに気づいた。
「え?」
そんなハトの反応から、ショウはまさか……?と、とある考えが頭によぎった。そして、そのまさかである。
「つ……つい、人間の方の手を想定しちゃった♡」
唖然。呆然。愕然。ねぇねぇ、どれが良いと思う?……ショウはその全てが当てはまるような筆舌にし難い表情をしていた。
「バ、バカなのだ!?いや、お主はバカなのだ!!」
「あ!またバカって言った!?これでも、真下は乗ってるショウが大変だと思ったから、少し斜めに降りたのに!!」
「それはありがとうなのだ!!」
それから、少しの間、ギャーギャーとやかましい声が響き渡るのだった。
はじめのいーっぽ。(水没)
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