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創世神話

よろしくお願いします!

 ショウはハトのお願いを受けて、この世界の成り立ちを説明し始めた。


 とあるところに女神がいた。その女神の名前はマネ。女神マネの言葉は神の奇跡を起こし、他の神々からは言霊と呼ばれた。


 女神マネはその言霊によって、まず世界を創造した。その世界は様々な力の源となる霊力が満ちていた。


 次に、生物が創造された。


 初めに創造された生物は四体の獣だった。それらは神獣としてあらゆる生物に崇められた。


 その後、様々な種類の生物が創造され、独自の進化を遂げるものなどが現れた。しかし、世界で最も繁栄したのは神を模して創造された人類だった。


 人類は神を模していることから霊力を消費して小規模ながらも言霊を放ち、術とすることができた。これを人類は霊術と呼び、武器や生活の利器として利用することで大いに繁栄した。


 その結果、人類は愚かにも戦争を始めた。それは神獣をも巻き込む大きなものだった。人類の戦争は種族間だけでなく、同じ種族でも繰り広げられた。この結果、人類の数や国、生活圏は減少した。また、他国間での交流は減り、技術などが衰退していった。


 そんな時に突如、世界に異常が発生した。


 世界中で異常な現象が起こったり、霊術を使う獣や、霊力だけで実体化した存在が出現したりしたのだ。霊術を使う獣を魔獣と、霊力だけで実体化した存在は妖魔と、そして、それらが使う霊術は魔術と呼ばれるようになった。


 これだけであれば人類は、ギリギリではあるがその生活圏を保ち、その数を大きく減らすことはなかった。しかし、現在はそうなってしまっている。


 それは、魔王と呼ばれる存在によるものだった。その実態は詳しく明らかになっていないが、散々暴れた後はその姿を消すことから、異常なほどに霊力を持った妖魔であるとされる。


 初めは神獣が動き、事態は解決の一途を辿ると考えられたが、なぜか神獣と魔王は互いに干渉できなかった。このため、人類をはじめとする生物は魔王により蹂躙された。


 この事態を重く見た女神マネは、一計を案じた。女神はその強大な力故に制約を課されており、直接手を下すことができない。よって、別の者に対処してもらうこととしたのだ。


 その者とは、勇者。魔王が確認されると、別の世界から召喚され、魔王と相対する使命を与えられるのだ。既に、過去に何度も勇者が召喚されて何度も魔王の消滅が確認されている。



「と……まぁ、これがこの世界の成り立ちと大まかな歴史なのだ」


「え、やばいじゃん」


「うむ、やばいのだ」


「……」


「……」



 あまりの世界の現状の酷さに、ハトは思わず軽い口調で小並な感想を呟く。その感想にショウも軽く同意して、二人は無言で見つめあった。



「はっ……!じゃあ、魔王は今どこにいるの!?」



 自分が大変な場所にいると知って真っ白になった頭が動きを取り戻し、ハトは重大なことに気づいた。



「それなのだ。実は現在、少し事情が変わっているのだ。というのも、本来五年周期くらいで発生していた魔王が、ここ百数十年の間に一度も確認されていないのだ。たしか……もう少しで二百年近くなるはずなのだ」


「なーんだ、それを先に言ってよ。それならさ、もう魔王の問題は解決してるんじゃない?」



 しかし、ショウは現在魔王が確認されていないどころか、何十年という単位で出現していないと言う。その言葉にハトはホッとすると共に、それだけ長い期間が空けばもう解決しているんじゃないかと誰もが考えるようなことを聞いた。これに対してショウは、



「かもしれないのだ。だが、魔王とほぼ同時期に発生した霊力災害と魔獣、妖魔の被害は拡大しているのだ。それこそ、魔王の代わりと言わんばかりに被害は依然として多いままなのだ。だから断定はできないのだ」



と、否定はしないが、それ以外の問題はもっと悪化しており、魔王が何らかの要因である可能性を疑っていた。ハトは魔王がいなくても被害が魔王のいる時と変わらないと聞いて驚愕した。そして、自分が直接見聞きしたわけでもないにも関わらず、どこか腹の奥がキリキリとするような焦りを感じていた。



「そんな……何とかできないの?」


「何とかしたくても原因が明らかになっていないうえに、女神マネからの御告げもないことから打つ手がないとされてるのだ」



 ショウはハトの質問に愚痴を吐き捨てるように答えた。その様子は苛立ちを通り越して憎んでいるとまでに感じられるほどだった。ハトは藪蛇をつつかないように気を使いながら今の会話の疑問点を口に出した。



「……女神の御告げ?」



 そうするとショウは少しだけ落ち着きを見せて自分を落ち着けるようにゆっくりと質問に答えてくれた。



「ふぅ……女神マネは、強大すぎる力を持つが故に、世界への干渉が制限されているのだ。女神の御告げは数少ない世界への干渉方法とされているのだ」



 ハトは女神のこの世界での在り方を知った。それはハトを困惑させるものであり、実際に頭がふらふらとなるほどだった。



「え、えぇ……?だからこんな大変なことになっているんじゃ……?絶対、創作ミスじゃん……なのに修正不可なの?その上でその女神の御告げすらないとか、本当にどうしようもなくない……?」



 ハトが聞いた限りでは、現状のこの世界には致命的な欠陥があり、それを直せるはずの女神は制約によって干渉できないうえに、対処の方法すら教えてくれないというものだ。最早、この世界は見捨てられているのではないかとすら考えられた。


 あまりにあんまりな状況だ。未だに存続している人類には敬意すら感じられる。


 ハトは自分の頭を整理するために現在、知っている世界の情報を口に出す。しかし、困惑のあまりにショウを気にする余裕などなく、その言葉はショウの怒りを再爆発させた。



「全く、ふざけるなって話なのだ。……なんか、自分で話しててイライラしてきたのだ!そうなのだ!できることがあるにも関わらず何もしないのは、創ってその後はほったらかしてるのと同じなのだ!育児放棄なのだ!!」


「あはは……」


「笑い事じゃぁ!……ないのだ……」



 最もすぎるショウの怒りの言葉にハトは思わず乾いた笑いが口から漏れる。ショウはそれを聞いて一瞬声を荒げたが、すぐに疲れた様子で肩を落とした。



「あ……ごめん」


「いや……こちらこそすまんのだ。熱くなり過ぎてしまったのだ。ハトは……何も悪いことはないのだ。もう何度も思い返した話で、もう怒っても意味なんてないはずなのだがな……」



 ショウはバツが悪そうに顔を背けながら、何か自分に言い聞かせるようにそう言った。


 ハトが少し気まずく感じていると、ショウが空気を変えるために口を開いた。



「……とまぁ、この事情に加えて疲弊した人類ではこの世界をどうしようもないというのが我の結論なのだ。だから、何かのきっかけとなり得る霊力の多い存在は無視できないのだ」


「なるほど……もし魔王だったらすぐにでも勇者を呼ばないといけないもんねって……あれ?ということはもしかして、ショウは僕のことを魔王かどうか確認しにきたの?さっき、霊力がたくさんとか言ってたし……まさか、ねぇ?」



 ハトは気づいてはいけないことに気づいてしまったかのような表情をしながら、首を錆びた機械のようにギギギと動かしてショウの顔を伺う。その言葉にはショウにそうでないと言ってほしいという願望が含まれていた。


 しかし、その願望は無慈悲にも切って捨てられる。



「まぁ……そんなところなのだ」



 そう言って含むところはあるものの否定をしなかったショウに、ハトは気を動転させた。



「え、ほんとに!?うそ、僕、魔王じゃないよね!!?」



 自身が魔王である可能性を仄めかせられ、ハトは世界が敵になることを考えた。それは、希望が一筋の光すら見えない真っ暗な未来で、待っているのは絶望しかない。そんな想像をするも、それはショウによって早々に打ち切られた。



「それは大丈夫なのだ。通常の魔王であれば、理性を失って暴れ回っているはずなのだ」



 というのも、魔王には特徴があり、もれなく理性を失って衝動のままに暴れ回っているはずらしい。ここ最近は現れていないため、実際に見たことはないが記録ではそうなっているとのことだ。



「そっかぁ、よかったぁ……けど、魔王は理性がないのかぁ。それは怖いね……」



 ハトはショウの話を聞き、自分の早とちりだと知って安心していた。それと同時に理性を失って見境なく暴れる魔王のことを想像して、話し合いすらできない存在に恐怖した。



「……暴れたくて暴れているわけじゃないかもしれないのだがな」


「えっ?今、なんて言ったの?」



 ハトの言葉を聞いてショウは何かをボソッと呟く。ショウは先程までのことを反省して、考え事を声に出すにしてもその声量をかなり抑えたようだ。そのため、ハトはうまく聞き取ることができなかった。



「いや、何でもないのだ。それよりも他に聞きたいことはないのだ?」



 ショウはハトに何と言ったかたずねられるも、何でもないと言って誤魔化した。その上、話題を逸らし、これ以上そのことを口にすることはなかった。

ありがとうございました!

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