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最強の魔術師と騎士の嫁  作者: ネオンアホウドリ
3/4

驚きの展開

 

「俺と婚約しろ」


 突然の言葉に那音が呆気に取られる。


「俺はニッポン旅行へここに来ている。だから8月末まではこの国に滞在する予定だ。お前が俺に食事と寝る所と観光の案内を提供する代わりに、俺はお前に魔術の基本知識や、ある程度の技術を教えよう。もちろん資金の援助もするぞ?そしてその後、魔術教会の直属の魔術学校へ共に行こう。魔術学校は上流階級の魔術師か、教会からの勧誘でないと入れない。俺の婚約者で魔術師の素養があるならば、教会もお前を受け入れてくれるだろう」


 誇らしげに話すクロードに那音はろくに返事も出来ずに置いてけぼりを食らっている。


「最も、俺がお前に加護魔法をかけて、家に結界でも張ればお前は魔物に狙われる事はないが、そんな風に大人しく籠の鳥になるような、従順な女ではない上に、自ら運命に立向かう人間だという事は昨日の時点で重々理解している。そこで、お前の能力をもっと有効活用出来るように学校へ共に行き訓練を受けた方がいいと考えている。そして行く行くは俺の伴侶となり、魔術師としては勿論本物の上流階級へと上り詰める事が出来る!そしたらお前をサポートしたいと言うパトロンはいくらでも現れるだろう!そう!何故ならば俺の妻なのだ、強く美しく、そして気高い志、最高ではないか!」


 その雄弁な唇から全て言い切った後に、どうだ?と優雅な笑みで言うクロードに那音はたじろいだ。

 突然の提案と考えてすらなかった男性からの求婚に頬が熱くなるのが分かった。


「い、いきなり言われても、私はまだ未成年だし…それに急にそんなことなっても学校の手続きとか、あ、あとあなたにメリットでもあるの?」

「大アリだ!俺は観光したいんだ!その為には通訳が必要だ、丁度いい人材がここに居るではないか!」

「確かに私は通訳は出来るけど、そこまで飛躍した事をしなくても…」

「入学手続きは気にするな、俺が今からでも掛け合えば向こうも納得はするだろ、お前にはちゃんとしっかり魔術師の素養があり、学ぶ資格があるんだからな」


 まだ決心がつかない那音にクロードは真剣な表情になった。


「正直、お前は前例がなかった五大元素にも第六、第七にも属していない無元素の能力者だ。その上に魔物を引き寄せる特異体質は本当危険なんだ。お前のその特異体質を治すか、対策をとるために力の制御方法を学ぶためにも本来ならば魔術学校へ行き、魔術を学び、そして訓練を受けなければならない。俺が教える範囲はまだ魔術の端くれに過ぎやしない。そうなると、いずれ技術の限界が来てお前は魔物に襲われる。そうでなくてもお前の特異体質は良い研究材料になりかねない。そうなると研究好きの魔術師からも命を狙われる可能性だってあるんだぞ?それでもいいのか?」

「それは、分かってる。いずれはちゃんと向き合わなきゃって思ってるけど…」


 那音は言いよどみクロードを上目遣いで見つめる。

 不思議に思ったクロードが軽く首を傾げた。

 それを見た那音はバツが悪そうに視線を外す。


「魔法を習うのはお前にも理にかなっていると思うが?」

「もちろん!この力を制御できるなら、是非習いたいんだけど…迷惑なんじゃ…」

「全くそんな事はない!むしろ俺がそうしたいと思っているんだ」

「どういうこと?」


 意味が分からないと首を傾げる那音にクロードは眉間に皺を寄せて、腕を組み椅子の背もたれに背を預けた。


「正直、俺もシルヴェストルの次期後継者としてそろそろ婚約者を決めなくてはならない年齢だ、権力争いのゴタゴタに身を置くのは嫌だったんだが…」


 クロードはそこまで言って組んでいた腕を解き、那音に指さした。


「お前が現れた」

「私?」

「そうだ、教会が保護すべき特殊能力持ちの人間がひとり、土砂降りの中魔物に追われている。次期シルヴェストル家当主としては看過できな事態だからな」


 つまりは那音自身を保護する目的で婚約をしろということなのだろうか?クロード本人は権力争いのゴタゴタが面倒だと言っていたから自分と婚約すれば、クロードの露払いができるということなのだろうか?

 お互いに理にかなってはいるが、いきなりのことに那音はやはり踏みとどまってしまう。

 煮え切らない那音の反応にクロードは首を傾げた。


「どうした、何か都合でも悪いのか?」

「えっと…その…」


 言い淀む那音をクロードが見つめる。見つめられすぎて穴が飽きそうな気がしてついに耐えられないと両手で顔を覆った。

 顔から火が出るんじゃないか言わんばかりに熱くなっている。


「婚約って…クロードはそんな簡単に決めていいの?」

「ん?」


 やっと絞り出した声が上手く相手の耳に届いたか分からないが、覆っていた手を離し、口元をまだ手で覆った状態でクロードに問いかける。


「私と婚約して、それで未来の事まで考えてくれてるのはありがたいけど…クロードは上流階級の人でしょ?そんな簡単に相手を決めていいの?昨日会ったばかりの人と婚約してそれでいいの?」

「……アッハッハッハッハッ!」


 恥ずかしい思いを何とか抑えて投げかけた問いに、クロードは一旦きょとんとした顔をしてから、豪快に笑い始めた。

 いきなり笑いだした男に今度は那音がきょとんとする。


「まだ言ってなかったな、すまん、結論を先に言ってしまった。そうか、俺の気持ちか」

「??」


 未だにくつくつと笑っているクロードに那音は先の答えを待った。

 クロードは立ち上がり那音が座っている椅子の横へ来て片膝を付く。那音もそれに習いクロードの方へ体を向けるとクロードは那音の左手を取り手の甲に唇を落とした。


「改めて言おう。お前に惚れた。婚約してくれ」

「っ!!」


 真剣な眼差しで見上げる。

 那音の頬がまだかぁっと熱くなった。

 この男は答えを聞くまで引き下がらないだろう。

 誰もが見惚れる美貌の持ち主のこの男に求婚されるなんて夢のような展開。こんな事を望んでいるの世の中の女性達はごまんといるなのになぜ自分なのか?

 自分はまだ未成年だ、厄介な能力と体質を持っている、絶対に迷惑をかけてしまう。断るしかない、でも力の制御や対処法はどうしても習いたい…


「お…」

「お?」

「お友達で…お願いします…」


 30秒間たっぷりつかって散々頭の中で考えた挙句、漸く出た言葉はこれだ。

 暫く沈黙が続く。目を合わせられずに反応があるまでずっと顔を伏せていた。

 やがて那音の手を握っていたクロードの手がきゅっと力が入った。


「……ほぉ?」

「っ!!?」


 間を置いてそう言い突然立ち上がったクロードに那音の肩がびくつく。

 お、怒らせた?


「いい!実にいい!!お前は最高の女だ!那音!!」

「え?な、なに?」


 クロードがいきなり那音の両肩を掴む。

 那音はどういう事か全然理解出来ずにいると、クロードは満足そうな笑みで続けた。


「流石、俺の惚れた女だ!俺の美貌を持ってしても揺らがない!絆されない!流されない!ますます気に入った!」

「えー…」

「よぉし!決めた!俺は今日から毎日お前を口説く。お前がYESと言うまで何度でも口説き続ける!この俺に気に入られたんだ、光栄に思え!そして覚悟しろよ?」

「え、うそ…でしょ?」


 クロードの発言に一瞬、目眩がした。これから毎日?いくらなんでも酷ってもんでしょ…


「もちろん、お前に魔術は教える。安心しろ」

「えぇ…」


 ドヤ顔で言ってくるクロード。

 前途多難な予感がして仕方ない那音は密かに息を吐くのだった。

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