モリシャス・イール・テンペルドの企み
千文字制限悪役令嬢もののおまけ短編!
本日上げた活動報告のコメントで良いネタをもらってしまったので、カッとなって書いた。今は反省している。
即興で書いた物ですが、出来はなかなかお気に入り。よろしければお楽しみください。
それはお兄様とのお茶会で、ふとヴィオの話が出たのが始まりだった。
「へぇ、ヴィオ先輩がそんな事を……」
「不器用な奴だ。悪役を演じていじめを無くす、だなんてな」
お兄様の呟きに、私は考え込む。
確かにあの騒動以降、平民と貴族の軋轢は減っているように見える。
正確には少しの間、貴族の無茶な仕打ちへの抵抗で、小競り合いは増えた。
しかしそれ以降、抵抗に驚いてか貴族の狼藉は減った。
その結果、学園の空気は少し変わったのだ。
「となれば、この流れを逃す手は無いわね」
「モリシャス?」
ヴィオの策は有効だ。しかしそれでは彼は悪役のまま。もしウィニーと交際となった時、その評判は枷になる。
「お兄様、お願いがありますの」
「何だモリシャス、久々だなその悪い顔」
あら酷い。お兄様も同じ顔をしている癖に。
「あ、あの、モリシャス様? これは……」
「言った通りよ。お料理を教えてって」
「でも、あの、こんな大勢の前で……」
「しかも俺様までとはどういう事だ?」
騒動があった食堂を借りての、ウィニーのお料理勉強会。お兄様に頼んでヴィオも隣に。
「さあ、学園の平和の為に作るのよウィニー!」
「訳が分かりませーん!」
と言いながらも料理を始めるウィニー。可愛い。
「さ、ヴィオ先輩も」
「どうやるんだ?」
「ま、まずは鶏肉に小さな穴を沢山開けて……」
生徒達が見守る中、料理は進む。
「……空気が変わって来たな」
「えぇ」
熊の様なヴィオが、可愛いウィニーに教わりながら料理をする、その姿は微笑ましく、恐る恐る見ていた生徒達の空気がほぐれていく。
「これで完成です!」
「ふぅ、なかなか面白かったぜ!」
「……ヴィオ、お前随分作ったな」
「さぁ、皆で頂きましょう!」
ヴィオが張り切ったとは言え、二人で作った料理はお味見程度しか行き渡らなかった。しかし、
「美味しい!」
「私も作ってみようかしら」
そこここで喜びの声が上がる。
「エンス様、器用なんですね!」
「女子には教わりづらいから、エンス様、教えてください!」
「お、おう」
それはヴィオの周りにも。
「借り、作っちまったな」
「何の事ですか?」
片付けながらの小声に、私も小声でとぼける。
「何かの折に必ず返すさ」
「ヴィオ先輩にそう思って頂けたのなら、心強いですわ」
「悪い顔だ」
ヴィオが愉快そうに笑った。
「……あの鶏を作ったそうだね。何故私を呼んでくれなかったのだい……?」
悲しげなハンスの頼みで、二回目の開催が決定した。ごめんねウィニー。
読了ありがとうございました。
文句を言いつつ従うヴィオ先輩素敵!
ウィニー可愛いはもはや定型句(笑)。
モリシャスとネスティの悪い掛け合い結構好き。
王子様、オチ要員お疲れ様です(笑)!
またネタが思い付いたら投稿するかもですが、過大な期待はせず、他の作品をお楽しみください。